「株式会社まんだらけ」の女性向け同人事業部部長 針谷千春さん
掲載日:2008.03.01
マニア・オタク向け中古商品取扱最大手 株式会社まんだらけ
マンガナビスタッフが気になっている企業をご紹介する「企業インタビュー」。
記念すべき第1回は、全く衰える気配をみせずまだまだ伸び続ける同人誌業界から、同人グッズは勿論あらゆるジャンルのマニア・オタク向け中古商品を取り扱う最大手、「株式会社まんだらけ」の女性向け同人事業部部長 針谷千春さんにお話を伺いました。
プロフィール
女性向け同人事業部部長
針谷千春
渋谷店副店長・渋谷店女性向同人誌責任者を務めた後、2005年に女性同人事業部に配属。現在、部長を務める。
【FINAL FANTASY 7】 をこよなく愛するゲーム好き。
取扱点数は同人誌が約150万、全商品合わせると約600万点
――「まんだらけ」は古本、特にプレミアムグッズの買取、販売がメインというイメージを持っていたのですが、同人事業はいつ頃からどのような形でスタートしたのでしょうか?
針谷千春さん(以下 針谷):同人誌の新本事業は5年程前からですね。
――比較的最近なんですね。
針谷:あっ、でも中古で取り扱い始めたのはもっともっと前からなんですよ。でも、同人誌始めるぞ!っという風に始まったものではなくて、お客さんが欲しがったり持ってきたり・・・といった自然の流れから始まりました。ハッキリと何年に事業として始めたというわけではなく、そういったニーズがあるものを古川(まんだらけ社長)が感じ取って(買取の幅を)広げていった感じですね。
――現在の取扱店舗数と作品数を教えて下さい。
針谷:同人誌ですと、約150万点ですね。オモチャや漫画を合わせますと600万点ぐらいになります。毎年600万点を棚卸ししています。中には何百万もする商品もありますよ。
――他の同人誌を取り扱う店舗に比べ、「まんだらけ」ならではの特徴を教えて下さい。
針谷:中古で言えば、他の企業さんは新しい物、最も流行に乗っている物を高く取扱を広げているかと思うのですが、まんだらけの場合は、もともと中野にしかなくて、その頃から通っていただいてるお客様がいらっしゃって、10年前とか15年前のジャンルも未だに探されてる方がいます。ですので、新しい客様も大事にしつつも古いお客様も大切に、昔のジャンル、他の書店さんで扱わないような古いジャンルとかもタイトルまで挙げて、それぞれのスタッフが勉強して価値をつけているところですかね。
――新しいものと古いものの割合って・・・どのくらいでしょうか?
針谷:やはり、新しいものが多いすね。イベントとかの規模をみてもそうなんですけど、昔に比べて現在は、毎週のようにイベントも開かれていますし、都内だけでなく地方でも開かれているので最近の方が出版数が多いですね。
古いものになりますと、やっぱりシミとかで痛んでたりしますので、捨てられる方も結構います。新しいものが量としては圧倒的に多いですね。古いものは集めるのが大変ですね。
最近は親子で同人誌を買いに来る方が増えてますね
――出版不況は、同人には無関係のように感じられますが実際にはどうでしょうか?
針谷:関係ないですね。オタクには不況関係ないです(笑
どんどん規模が大きくなってきてるから、それに合わせてどんどん増えています。たぶんネットの普及とかがあって、コミックとかってネットでみれるじゃないですか。わざわざお金を払ってまでというのが、もうなくなってきてるんですけど、逆に情報が結構もらえることによって、一般人という言い方はアレですけど誰でも同人誌がつくれるようになってきてるんですよ。そういう時代になってきいてるので、出す数は増えてますね。
――出すための障害が、年々なくなってきてるのですね。
針谷:本を作るのは、もの凄いことのように思えるじゃないですか。でもそんなことないんですよ。
――同人部門の客層(年齢層、男女比)を教えて下さい?
針谷:男性ですと、20代後半から30代後半ですね。女性はもうちょっと若いかな。女性は10代~30代が主ですけど、40代の方もいます。中心層は比較的お金を自由に使える方ですね。
――女性の方が、結構層が広いのですね。
針谷:たぶん、好きな人は10年20年と好きなので、ほんとウチに通い始めた頃に学生さんだった人が、今度お母さんになってお子さんと一緒に、というのが、最近は凄く多くなりましたね。ちょうど、同人というのがきた時にハマっていた人たちが、親になってく世代といいますか。
――子ども連れですか・・・
針谷:来ますね。昔では信じられなかったのです。「子供にこんなもん買わせて!」と怒鳴り込んでくる親もいましたので。
たぶんお母さんが結婚して・・・昔は結婚する時に、「そういう(オタク)人生は切るわ」というのがあったんですけど、今はもう世間的にオタクが市民権を得たというか、隠さなくなってる人も多いし、自分が好きだったものだから娘にも、みたいな感じで。親子で楽しまれてる方が凄く増えていますね。
――親子で同人活動されてる方とかもいるのですかね?
針谷:お母さんがやってるのを娘さんが手伝ってる、というのはよく見ますね。
海外との流行りの時差はほぼないです
――ここ数年、女性向けやBLと呼ばれるジャンルに勢いを感じますが、実際に客層に変化はあったでしょうか?
針谷:増えてますね。一般書店で普通に売ってるじゃないですか! 10年前は、本当に小さかったスペースが、普通にコーナーができるくらいになっていますよ。でも流行としては、もう最高潮にたっしてるんじゃないでしょうか。最近はもうBLじゃなくて、男女の方にいく女性が結構多くなっていますね、同人誌でも。
――中野、秋葉原、渋谷、地方都市も含め、個性の違う街に出展されていますが、地域によって売れ筋や客層に違いはあるのでしょうか?
針谷:地域によって売れ筋は全然違います。
小倉店、池袋店 宇都宮店は若いお客さん、特に学生さんが多いです。若い方向けの商品が売れますね。中野、梅田とかは昔から来てくれてるお客さんが多くて古い物も売れますね。
あと、九州とかは、アニメ放映時期の違いによって盛り上がりが違いますね。都内の方が早くて、九州では半年遅れてってのがありますね。
関西はゲーム系が凄く人気があります。何でなのかは良くわからないですけど(笑)関西の人はゲームをよくやるのかなぁと。
――ウェブサイトで海外での通販について教えて下さい
針谷:少し前までは、韓国だけでしたが、現在は英語圏、イタリア語圏、フランス語圏で扱っています。個人で買われる方もいますし、バイヤーっぽい方もいます。注文を1か月分ためて、月末に支払ってまとめて送って欲しいと言う方などもいます。
委託するサークルさんによっては、委託を預かる時に「海外からも問合せがあるので海外通販にも載せてください」とお願いされたり、予め中国語のルビを用意しているサークルもいますね。
あと、韓国は女性が熱いらしいですよ!先日も韓国から池袋店(BL専門店)に取材が来ました。韓国は近いし、イベントごとに結構日本に来ている方がいるみたいです。ツアーとかもやってるみたいですよ。
――ちなみに一番注文がある国はどこですか?
針谷:今、韓国が熱い話をしましたが、実際は気軽にこれない所とかですね、アメリカとか、英語圏が多いです。
――海外での流行りの時差とかってありますか?
針谷:ほぼないですね。インターネットがありますので。日本人は、情報があふれてますので敏感ではあるのですが、貪欲ではないですね。海外のファンの方が貪欲に情報を集めている感じがしますね。
スタッフにもフランス人の者がいるのですが、下手な日本人よりも異様に愛があったり情報を知ってるんですね。
まんだらけに来ること自体がイベントにしたい
――取り扱われている中で一番高額な商品を教えていただけますか?
針谷:男性向けは、「みつみ美里」さんの本で15万円しますね。美少女ゲームの原画をされてる方です。女性向けは、作家さんのお名前はちょっと伏せさせてもらいたいのですが、「ベルサイユのバラ」の同人誌で今10万の値がついてます。めったに入ってこないんですけど、それでも売れますね。いずれも定価は1,000円もしないと思います。
――針谷さんオススメのマンガを教えて下さい。
針谷:各国を擬人化した漫画の「へたりあん」が気になりますね。
――「まんだらけ」の今後の展開を教えて下さい
針谷:社長の古川がよく言っていることなんですが、「ウチ(まんだらけ)に来ること自体がイベントにしたい」です。一般のお客さんでいうと、ディズニーランドに行くときワクワクして楽しめるじゃないですか。それをまんだらけも、こういった業界での、まぁエンターテイメント企業にしたいと思っています。
――個人的な目標も教えていただけますか?
針谷:これからも楽しんで仕事をしたいですね。自分が楽しければ、お客さんに楽しさを与えられると思います。まわりにも働いててよかったと思って欲しいし、お客さんにもやっぱりイヤイヤ仕事をしている店員さんのお店に行きたくないじゃないですか。
もちろんお客さんありきですけど、自分達も楽しんで仕事をしたいですね。これは入社時からずっと思っています。
――ありがとうございました。
■まんだらけ本店(中野ブロードウェイ3階)
本店では少年少女漫画、青年コミックス・BL系(コミック・小説・CD)を取扱。
■同人誌を取り扱っているDEEP館(中野ブロードウェイ2階)
男性向新館&中古同人誌・同人関連ソフト&グッズを取扱。
■まんだらけ公式サイト
https://www.mandarake.co.jp/
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