「これは世界がまだ4つに分かれていた時の物語」『天の祈りと大地の願い』アルファポリスよりリリースの樹月千春さん今回の出版にいたるまでのお話
掲載日:2009.12.09
『天の祈りと大地の願い』発売記念
樹月千春さんインタビュー
「これは世界がまだ、4つに分かれていた時の物語...」
ウェブコミックとして、絶大な支持を集めていたファンタジックストーリー『天の祈りと大地の願い』が、ついにアルファポリスからコミックとして出版されました!
「マンガナビ」では「マンガ読もっ!」にもご登録いただいている、作者の樹月千春さんに、この作品の創作の原点から、今回の出版にいたるまでのお話などをお聞きしました。
ラフスケッチなど、貴重な画像もどーんと公開します!!
樹月千春
ウェブ漫画『天の祈りと大地の願い』
漫画SNS「マンガ読もっ!」樹月千春さんのページ
作品紹介『天の祈りと大地の願い』
天の祈りと大地の願い
著者:樹月 千春
出版社:アルファポリス
地に堕とされた天使と
お人よしの魔王、
そしてその子供たち。
――これは世界がまだ、
4つに分かれていた時の物語。
ウェブで発表を始めたのは2001年です
―― まず、今回コミックスが発売となった『天の祈りと大地の願い』についてお聞きしたいのですが、この作品を描き始めたのはいつ頃になるのでしょうか?
ウェブで発表を始めたのは2001年です。改訂版を描き始めたのは2008年の2月でした。今回コミックスに収録された4話~7話は2009年の6月~7月15日で描き上げました。
全部で200Pになるように...ということで先に全部のネームをしようと思っていたら話が上手くまとまらず最後は追い込まれました(笑)。
―― ご自身にとっては何作目の作品になるんでしょうか?
読み切りも入れると10作品目くらいになる気がします。
―― 最初はどういう形で発表していったのでしょうか?
CGサイトをやっていたので、そのオマケみたいなスタンスでした。その後、漫画を描く方が楽しいので漫画サイトとして独立しました。
―― 当初から、長編を想定していたのでしょうか?
CGサイトの看板娘としてコトコを作って、看板娘で何か漫画を描きたいなぁと思ったのがキッカケでした。ほのぼのの読み切りを想定していました。
―― 主要なキャラクターが天使と魔王...と聞くと、争いのあるストーリーを想像しがちなんですが、読んでみるとその正反対で、やわらかく、あたたかい作品であることによい意味で裏切られます。
登場人物を天使、魔王、神父とした狙いはどこにあったのでしょうか?
コトコを考える前に神父と魔王の友情物語を考えていました。この話が最終的にベースになりました。非日常的な人達が日常を過ごすことで、日常がより深みのあるものになると思いました。
―― 天使と魔王、人間の関係性や、彼らの生活する土地など、世界観がしっかりと作りこまれている印象を受けるのですが、これらの設定を事前に作ってから執筆されたのですか?
細かく作ってた部分もありますし、後で付け足した部分もありますね(笑)。
―― 一番最初に生まれたキャラクターは誰でしょうか?
ローゼンです。最初に考えたときは「変態設定」は全く無く純粋で魔王の心を癒せる人間というスタンスでした。キャッチフレーズはマタイ福音書より「心の清きものは幸いなり。神が見える」でした。どうしてあんな変態になったのか私にも分かりません...。
―― 一番描きやすいキャラクター、苦戦させられるキャラクターは誰ですか?
描きやすいのはローゼンです。描きにくいのはコトコです。首が無いから描きにくいんです(笑)。
―― 実在の人物がモデルになっているキャラクターはいますか?
特に居ないのですが、姪が今4歳なので子供らしさのモデルとしてその言動が面白く観察しています(笑)。それは今後の作品に生きてくるかもしれません。
―― それぞれのキャラクターが着ている服装にこだわりを感じるのですが、何か参考にしているものはありますか?
コトコはエプロンドレスが多いです。一般人はあまりファンタジーになり過ぎないようにと思っています。聖職者や天使は神聖さを感じるものを...と思います。
頑張って描いたものを「形」として残したい
―― ウェブでは知る人ぞ知る人気作品であったわけですが、今回、出版に至るまでの過程を教えていただけますか?
ちょっと長くなりますが...。
2008年の2月、改訂版を描き始める目的が「本にすること」でした。同人誌でもいいから本にしたいと思っていました。
ウェブでは更新を優先させるために急いで描いていたので、それよりも、頑張って描いたものを「形」として残したいと思ったんです。
その直後、アルファポリスさんの漫画大賞が5月にあることを知り挑戦することにしました。
その後、ポイント最上位ということで改訂前の作品が読者賞を受賞し「出版化の道を探っていきたい」ということでした。私も改訂前の作品は稚拙な点が多く、このままでは、とても商業作品として耐えられるとは思っていませんでした。
それからしばらくは表だった動きが無かったのですが、2009年の2月頃に本格的なお話をいただきました。
その時点で改訂版は2話までしか完成されておらず、残り160ページほど...、一体どうなるのだろうかと思いました(笑)。
―― もともとプロのマンガ家を志望されていたんでしょうか?
投稿や持ち込みをやっていました。担当さんがついたこともあったのですが、その方とあまり上手くいかず、当時は「指示されたもの」が描けない自分にはプロは無理だろうと思っていました。
今は与えられた条件の中で、「最大限面白くすること」が楽しいと感じています。
―― 出版の話を聞いたとき、まずどう思いましたか?
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお?!
言葉になりませんでした(笑)。
―― 以前からこの作品を読まれているファンの方々の反応はいかがですか?
「嬉しい」「楽しみ」との声をいただきました。
ただ、自分には伝わっていないだけで「ウェブで発表される、この作品だから好き」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。
―― コミック(単行本)を読んで最初に感じたのは、ウェブ版と結構違うんだなということだったのですが、加筆や改訂はどれくらい行われているんですか?
2001年から描き続けている作品と比べると100%加筆改訂ということになるのかな。一部、話は被っていますが...。
2008年から描き始めた改訂版の1話~3話はしばらくウェブで読めましたが(現在は2話まで読めます)こちらも書籍に収録される際に数ページ加筆したり、描きなおしたり、あと95%ほどグレー塗りをトーン処理に修正しました。
―― 改訂が必要だった理由はなんでしょうか?
ウェブ版は8年前に始めているので、それなりの荒さがあったり、謎を追うあまり話が重くなってしまっていたり、ページ数にキリが無いので無駄に長くなっている話があります。
それよりも、もっと短く読みやすく、日常に沿った漫画を描きたいと思いました。
ただ私が考える良い漫画と、読者さんが好きな漫画は違うわけで...「ウェブ版の方が好き」というお声もいただきますが(笑)。
そういった感想には、あの当時の私にしか描けない世界があったのだと自分では考えています。
―― ウェブ版とコミック版は、全く同じ世界の同じ人たちの話と考えていいのでしょうか?また、ご自身の中では、ウェブ版とコミック版、それぞれはどういう位置づけなのでしょうか?
完全な別作品だと思っています。が、ウェブ版とコミック版、両方を読んでいただけるとより楽しめると思います。
―― 今回のコミックは第一巻とは書いていなくて、でも色々と気になる部分を解決しないままに終わってしまうわけですが(笑)、続編の予定は?
コミックスの売れ行き次第で続刊が出ます(笑)!
ただ続編をウェブで公開して良いと許可をいただいたので、しばらくはウェブで描いていこうと思っています。
8話(単行本の続き)は「王女と宝石」というお話を予定しています。
―― ウェブの方では、第一部8話に続き、第二部の2話までが発表されているのですが、全体の構成は既に決まっているのですか?決まっている場合、完結はいつごろになりますか?
コンスタントに描ければ、完結はそう遠くないはすです。第二部で終了予定です。
第一部では1600Pほど描いていますが、第二部はその半分程度の長さになると予想しています。
やれることは全部やってみようと一生懸命作りました
―― この作品のSNSが開設されていますよね。ひとつの作品をテーマとしたSNSは非常に珍しいと思うのですが、開設した狙いはなんだったのでしょうか?
良い漫画を描かないと、読者さんは離れていくので、より良い漫画を描くために自分を追い込もうと思ったのがキッカケでした。(サイトと違ってSNSはそういう人の動きが見えやすいと思いました)始めた当初は10人登録してくれる人がいれば、びっくり、だと思っていました。
最初は私からの招待制だったので相当面倒だったと思います。現在はもうすぐ1000人が見えてきました。
実際動かしてみると、当初のキッカケはどこへやら...大部分の読者さんはそんな難しいことを考えなくても楽しんでくれていることが分かりました。
今は漫画の中にあるような安心して過ごせる場所を作りたいとも考えています。
―― SNSではどんなことが行われているんでしょうか?コミックで初めてこの作品を知った人に向けてご紹介いただけますか?
SNSと言えば、日記を書いてコミュニケーションを取るというのが一般的なスタンスですが、日記を書いたりせずにただ見てるだけでも楽しめるように作っているつもりです。また、漫画に関係しない日常的な日記でも気軽に書いてください。
参加されてる皆さんは優しいのでアウェーではなく「ホームグランド」のつもりで大丈夫です♪例えるなら温泉です。保養地です(笑)。
私が作り出したものではなく、参加されてる皆さんが作りだしている雰囲気だと思っています。
あとキャラクターが日記を書いたり、コメントに現れたりします。キャラの日記と皆さんのツッコミから迷言や伝説が生まれたりします(笑)。
現在レディアートは漫画の中では海に落ちましたが、その後カニカマボコになった...という伝説が今のところあったりします(笑)。プロフ写真もカニカマボコになっています。
―― ずっと描かれてきた作品が、出版され、書店に並んだ感想はいかがですか?
書店に並んでるのを見たときはあまり何も感じなかったのですが(というより積まれてるのを見たときは、ちゃんと売れるんだろうかと不安が...)、その後減ってるのを見たときはすごく感動しました。
―― 今後はプロの作家として、出版を前提に作品を発表していくのでしょうか?それともウェブを中心とした作品発表を続けられるのでしょうか?
お話があれば出版前提でも描きたいですし、出来る限りウェブでも描き続けていきたいです。
―― 「天の祈り~」以外でもよいのですが、今後の活動予定はありますか?
お話をいただいても、うまく形にならないことが多いこの世界(笑)ですので多くは語らずで...。
個人的には以前も一緒に描いてた友人との共同名義で漫画をまた描こうと相談中です。(マンガ読もっ!さんで公開中の「星の海辺~」を一緒に描いた友人です)あと超個人的にですと、絵本を描きたいです♪
―― まだ作品を読んでいない人に向けて、是非ひとこと宣伝してください!
やさしく切なくあたたかい、ファンタジック・ストーリーと帯に書かれています(笑)。読者さんにも「優しい」「温かい」「切ない」と三原則のようにいただく言葉です。そういうお話に興味がある方は是非読んでみて下さいませ。
私自身は魔族や天使、人間といった色々な生き物の相互理解とそれぞれが頑張る漫画...のつもりで描きました。
最初で最後かもしれないと(笑)やれることは全部やってみようと一生懸命作りました。2010年1月30日までは全プレでドラマCDや番外編小冊子、ウェブ版の単行本等もやってます。未熟な面も多々あると思いますが、どうぞよろしくお願い致します!
―― ありがとうございました!
アルファポリス・担当編集者、城間さんよりひとこと!
舞台は人間界――そこで人と共に、地に堕とされた天使とお人よしの魔王が暮らしています。
彼らは人間たちの生活をひっかきまわすのではなく、穏やかに和やかに、笑ったり悲しんだり怒ったりしながら、ある意味人間たちより人間らしく日々を過ごしています。
好きな人がいて、愛する家族がいて、迷える魂があって......。
すべての人に、モノに向けられるあたたかな"愛"が描かれているのが、この『天の祈りと大地の願い』です。
ネットで大人気だった本作が、弊社主催のWebコンテンツ大賞「漫画大賞」で読者からの圧倒的な支持により"読者賞"に決まったのが2008年6月のことです。そこから、著者の樹月さんが書籍化に向けてストーリーを描き直し、出版となったのが2009年11月。装丁のカラーイラストやおまけの4コマ漫画、カバーをはずした表紙にも趣向をこらし、樹月さんには隅々まで気合を込めてもらいました。
パソコンを起動せずともいつでもすぐに読める、それが紙書籍の魅力です。手元において愛でていただきたい、心あたたまるファンタジックストーリー漫画『天の祈りと大地の願い』、ぜひお手にとって楽しんでいただければと思います!
アルファポリス編集部 城間順子
ラフスケッチ、作業机、ネームを大公開!
貴重な画像をど~んと公開!!
表紙デザインのラフ3パターン
最終的に第1案が採用されています。
4話~7話のスケジュール管理用紙
同人誌とは異なり「落ちました...」では済まされない商業誌のシビアな一面を感じることができます。
単行本の続編となる8話のメインキャラのデザインをしている様子
6話と7話のビフォア(ネーム)&アフター(仕上がった原稿)
樹月さんの作品は見開きページの評判が良いそうです
天の祈りと大地の願い
著者:樹月 千春
出版社:アルファポリス
地に堕とされた天使と
お人よしの魔王、
そしてその子供たち。
――これは世界がまだ、
4つに分かれていた時の物語。
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