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顔を描く時はどのパーツから?「もしもピアノを弾きながら目で口ほどに物が言えたなら」

掲載日:2008.10.25

「もしもピアノを弾きながら目で口ほどに物が言えたなら」の巻

先日マンガナビの人に呼び出されてこのページもっとなんとかしろ!とハッパをかけられたので仕返しに居酒屋で普段注文する勇気の無い刺身の盛り合わせをおごらせ帰りにもらった割引券さえも押収した羽生生です。

マンガナビユーザーのニーズにニッチもサッチもちっともフィットしてないこのコーナーですが、せっかく始めたんだから止めさせられるまでやりますよ!と死ぬまで生きるみたいな当たり前のことを書きつつ、要はこのコーナーがあまりにもあさっての方を向いているのでもうちょっと何とかしてくれ、という話をマンガナビの人にされたので、「だったらあなた達がオモシロ企画を考えてきてくれればなんでもやってやる!」と黒ウーロンハイ片手に嫌がらせしたのですが、もしかしたら来月から「有名漫画家に聞く・これがホントの漫画の描き方!」みたいなコーナーが始まるかもしれません。はじめから私など存在しなかったかのように...。

...自分の中で上に書いたことの現実味が刻一刻と増しておっかなくなってきたので急いで質問にいきます!

【たったけ】

はじめまして。
いきなりの質問なのですが、羽生生先生は顔を描く時はどのパーツから描かれてるのでしょうか?
自分は、目→鼻→口→輪郭→髪の順で描いているのですが、いつも目が大きくなってしまってる気がします。
ぜひプロのご意見をいただければと思います。よろしくお願いします。

今回は読む人のことを気にして、屁理屈に付き合いたい人用と簡単に答えを聞きたい人用に分けて書きたいと思いますよ!ほら!ちゃんと気を配ってますよ!気配りのススメですよ!(マンガナビへ向けて)

●ここから屁理屈

絵の中でも特に漫画の絵というのはほとんどの場合、白い面に黒い線で描かれたものです。つまり白い面<空間>に黒い線で<境界>をつくることによって、そこに「何かがある」ような気持ちにさせるのです。
要はコマで切り取られた空間の中に何があり、どんなことが起こっているのかを読む人に認識させることが漫画の絵の役割なのです。

それは言い換えると「そこに何をどのように描きたいのか?」ということです。
ということは、理想を言えば描く人が最終的にそこに何を描きたいかがわかっていれば何をどこから描いてもまったく問題無いわけです。

で質問の「顔」ですが、まず漫画で顔を描く時、それは「物語を表現するためにコマの中で何かを表す線」のうちのひとつでしかないのです。つまり背景や効果線やフキダシと同じ「黒い線」です(トーンも黒い点の集合だから同じ)。

と書くと「じゃあ全部同じなら良いのか」と思われるかもしれませんが、逆に同じ線で表現するしかないからこそ、そこに何が描かれているかを伝えるために「線の太さ」や「強弱」、それらを総合して感じさせる「絵柄」などでしっかりと「差」をつけなければなりません。

顔を描く場合でもイラスト、特に背景を想定しない人物だけのイラストであれば、枠(紙の大きさとか)内に収まればどんな大きさで描いても「その大きさの絵」ですが、それが「漫画」になったとたん、コマに人物しか描かれていなくてもその「顔」は漫画内の物語におけるなんらかの意味を表すことになるのです。

コマの中に小さい顔が描いてあれば現代の漫画のルールに慣れた読者は無意識に「遠くにいる」と感じ、本のページいっぱいに目しか入らないような顔があれば「超ドアップ」と感じるはずです。
またそこに背景が描かれていれば物理的な距離を、集中線やベタだったりすると心理的な距離を表したりします。

このように顔の大きさというのは漫画にとってとても意味深い問題なのです。

思い出してみると私が顔を描く場合は、前髪から描いたりもみ上げから描いたり鼻から描いたり眉毛から描いたり目から描いたり頬のラインから描いたり、とバラバラです。
それは何故かというと今まで書いた通り漫画のコマ内でどんな場面を描くかによって描き方も変わるからです。

でも強いて言えば、その顔の「気持ち」を表すのに一番わかりやすい部分から描いている気がします。

それは「眉毛」です。

例えば「目」だけで表情をつけろ、といわれた場合、表現できるのは瞑った状態から見開いた状態までの差だけです。
そこに「眉毛(眉毛が無い場合は眉毛の部分にあたる筋肉と骨)」の動きが加わって初めて「気持ち」を表すのです。

そこで私はその顔の気持ちを表す一番の指標である眉毛を決め、それに沿って描いているような気がします。
そういえば口も大きな指標ですが、口から描くのはめんどくさいので簡単な眉毛から描いてるような気がします。

しかし、それは時と場合で表したいコマ内の状況によってその都度変わります(まるで自分はちゃんと描けてるような書きっぷりですが、実情はちゃんと絵を習っていないので適当に描いてヘロヘロになったり思うように描けなかったりで描き直しの繰り返しです)。

もし目から描いてどうしても目が大きくなってしまうなら、まずコマ内で遠くにいる人を描いてみてください。その場合はきっと目から描くのがとても難しいはずです。

漫画をある程度描いた経験がある人ならきっと顔をどのパーツの順番で描くかは実は時と場合によって変わっているはずなのです。

実は「自分はこういう順番で描く」という事を意識すること自体、漫画にとってあまり意味は無いのです。

いつも同じ方向を向いた同じような顔のキャラクターを何人も描かねばならない、というジャンルの人にはきっと量産性などを考慮して明確な法則があった方が良いのでしょうが、私の漫画は話の内容や慣れやその日の体調によって描き方や顔つきも変わってしまうような描き方なので問題ありません。というか無理矢理成立させようとしています。

大切なのは自分が白い面をどういう風に黒い線で分けたいのか、最終的にどんな絵でどのような物語を表現したいのかを(意識的にせよ結果的にせよ)描くことが出来るか、だと思います。

でもそんなに大袈裟なものでもなく、自分が「神様」な自分の漫画ですから自分が「良し」といえばそれでOKです(でも以前から描いてきたように「誰に見せるか」によってその「良し」の幅も変わってきますが)。

以上の事を考え、そしてそれを全部忘れ、気の済むまで思うがままにたくさん描く、というのがとりあえずの進行方向ではないでしょうか。

●簡単な答え

いっぱい出てる「漫画の描き方」を読んで丸に十字を描いてからやるときっとうまくいくよ!

...どうですか?ちゃんとくばってたでしょ?気!
ですから、ええ、ちゃんと、これそ、はいこれからはアレしますんで、そこらへんをちょっとアレしてもらって...へへ...
..............................
(ものすごくいろんな意味を含んだ目配せ)


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羽生生 純(ハニュニュウ ジュン)
漫画家 1970年生まれ 1992年デビュー

代表作
『アワヤケ』 『青 -オールー-』 『恋の門』
『1ページでわかるゲーム業界』 『ワガランナァー』
『サブリーズ』 『強者大劇場』


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