羽生生純の「漫画について答えよう」

キャラクターの名前が決められない!?「名は鯛を釣るツール」

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「名は鯛を釣るツール」の巻

えーCQCQ、こちら去る3月1日若者のおしゃれ発信基地・下北沢で行われた漫画家三本美治さん主催の素敵イベント「紙-1フェスタ」においてコッテリと赤っ恥をかき散らしてきた羽生生ですがみなさんは恥の多い人生を送ってきましたか?

いま無線のことをろくに知りもせずそれっぽい「CQCQ」などという用語の誤用を惜しげもなく開陳したわけですが、私はよく知りもしないのにその単語を聞いたことがあるというだけで「ああ、はいはいアレねー」などと理解してる振りをして実際は相手の言ってることがほとんどわかっておらず、いざという時に「なんも言えねえ、つうかなんも出来ねえ、つうかなんもわかんねえ」などと無理矢理若者っぽく中途半端な流行語を使って恥を上塗る、いうことが日常茶飯事なのでございます。

私は小さい頃から赤面症で、クラスで発言する時に口ごもっちゃってパニックになることがしょっちゅうでした。

言葉が止まっちゃったとき、いったん自分が「恥かき中」になると途端に自分が恥をかいてる様が浮遊霊の視点から頭の中に広がって恥ずかしさを加速させ、顔がみるみる紅潮し平時でさえしどろもどろな口調が酩酊状態の様相を呈し、またその様子をよせばいいのに浮遊霊が逐一フィードバックしてくれるので血中恥濃度は一気に高まり気分は断崖絶壁東尋坊、ギリギリと音を立てて軋む脳味噌がとっとと機能停止し指令塔に放置された体は大混乱、そんな時クラスメイトの冷たい視線とともに繰り出される「なんで黙ってんの?」「早くしてくださーい」の言葉に反応し体が出した結論は...

泣く。

...要はクラスにひとりくらいいる「あれ?涙ぐんでんじゃねーの?まさか泣いてんの?泣けホラ泣けよ」といわれるだけで泣き出すようなタイプの人間だったのです。

と、聞かれてもいないような聞きたくもないことを勝手に話すという恥テクニックを披露したところで質問行きまチュ(恥)。

【ごうださん】

僕は漫画を描いているとき、いつもキャラクターの名前が決められず悩んでいます。
しかも悩んでも全然思いつかないので、結局その時テレビに映っている人の名前を使ったりしています。
羽生生先生は登場人物の名前をつけるとき、何かこだわりとかもっているのでしょうか。
ぜひとも参考にしたいので教えていただけないでしょうか?
よろしくお願いします。

名前というのは、その人なりモノなりがこの世界に存在することを始めてから一番最初に自分に設定される「目印」です。
それが決まることによって初めてその世界で自分の場所を規定できる、ハードディスクでいえばパーティションを切って自分の領域を確保するという大切な作業です(名前が無いものももちろんありますがそれさえ「名無し」と名付けられ区分されることには変わりありません)。

そう考えると、「名前をつける」という行為は実は「世界を切り分ける」くらいの大仕事とも言えるわけです。

そんな時だいたい人は「人とは違う」であったり「目立つ」であったり、何かしら意味のあるもの、効力のあるものにしようとするはずです。そうここで重要なのは「効力」の問題なのです。

たとえば私のペンネームは「羽生生 純」ですが、ペンネームを「mfszgasngzkzk:njjk3bgr:ra:bfnbzkjeejjlznl:nllfnzgl:kgkgh]ernwgw/gmbjjkkh」にすることもできるわけです。しかし「効力」で考えれば単に「訳わからん」という効き目しかありませんし、メリットよりデメリットの方が多いのは明らかです。

なので私がまず考えたのは「目立つ」「人とかぶらない」という点でした。

その結果「ハニュニュウ」などという恥ずかしいペンネームにしたおかげで未だに仕事の電話で「ハニュニュウと申します」「え?もう一度お願いします」「ハニュ・・ゲホゲホ・・です」などと誤魔化すような羽目に陥っているわけですが、このデメリットを考慮に入れてもなおメリットの方が勝っていたと考えます。

まず字面で人とかぶらず、読み方がわからんという点で意識の端に引っかかりやすく、語感がバカバカしくて作品のバカバカしさとマッチしてる、など。
もっとも作品の内容は自分のバカバカしいペンネームから派生したような気もして、もし「山田太郎」みたいなトラディショナルな名前だったら今頃まじめな野球漫画とか描いていたかもしれません。

ここでネーミングに関して重要な要素が現れました。
私がなぜ「野球漫画」を連想したのか?
それは私が知ってる範囲で「山田太郎」とまず聞いて思い浮かべるのは「ドカベン」だと思うからです。

このようにネーミングで「連想」というのはかなりの「効力」をもった要素です。

詳しくは知りませんがたしか「何かに関連づけて覚えると記憶しやすい」という記憶法があったと思いますが、脳は初めて知ったものをすでに知っているものと参照し記憶するという機能をもっていて、すでに知っているものが分かりやすければなおさら覚えやすいようです。

昔からあるテクニックだと思いますが私が気づいたのは『ドラゴンボール』で、思いっきり「孫悟空」という既存の名前を使い、しかも作品世界は別物で、キャラのネーミングも中国関連から舞台が広がるにつれ野菜や果物を容易に連想させるネーミングで覚えやすくしているのに気づいてから、他でもいろんな種類のものに関連づけた名前をつけることによってゆるやかな「統一感」みたいなものを読者に感じさせる作品が目についてきたように思います。

卑近な例だと拙著『アワヤケ』はそもそもネーミングありきで発生した作品で、「淡谷」という名前でこの世界(作品世界)に存在することになったキャラがどういう人生を送るのかを考えることによって作品が成立しています。
父の「淡谷大惨事」は「大惨事」などというフザケた名前を付けられたせいでその後の人生の大部分が方向付けられるのです(どう方向付けられているかは『アワヤケ』全4巻(エンターブレイン)を読んでみよう!(宣伝恥))。

などとクドクド書かれても「名前が決められなくて悩んでいる」問題には全く答えられていないのですが、では実際どうすればいいかというと、一番簡単なのが「自分ルールをつくる」というものです。

作品世界にマッチしている場合と全く関係ない場合がありますが、いずれも「何々しばり」なネーミングというのは認知されやすいと思われます。

でもその場合「他とかぶらない」という点で危険な面もあり、自作のライバルキャラを「ベジート」などとつけたあかつきには宇宙規模の格闘バトルを延々と描かなければならない羽目に陥ります。

なのでこのやり方はいかにかぶらない「しばり」を見つけられるかが鍵となるでしょう。

私の場合は「語感がおかしいしばり」を使うことが多いです。これは口に出してみて違和感を抱く名前を付けるというもので、「口に出すと恥ずかしい」名前が効を奏すことが多いです。
その一見無関係な恥ずかしい名前がもし作品のテーマにうまくリンクしたりすると、体を表す名で鯛を釣るかのごとくその名前はとたんに「効力」を発揮し物語の展開すら左右するような重要な要素となるのです。

もしテレビで見た名前を付けてしまいがちであれば思いっきり「テレビしばり」で名前を付けていくとよろしいでしょう。

「ごくふつうの女子高生「十勝花子」がある日突然超能力に目覚め、親友でホントは男性の「深田恭子」とともに学園を乗っ取ろうとする「ケロンパ」に戦いを挑むが実は「ケロンパ」は「十勝花子」が片思い中の「村上龍」の実の姉だった...」

という物語の場合、だれかが良いことや悪いことで有名になれば自然と作品も関連づけられて記憶にのぼるし、もし本当に十勝花子と村上龍にスキャンダルが浮上すればしめたものです。

これであなたの作品はその有名人がメディアに露出するたび思い出されるのです(作品のおもしろさや売れ行きは別にして)!

ただ自作全部に同じ「しばり」は大変なので、様子を見てうまいこと塩梅してナニしてください。

というわけで、未だに「紙-1」で自作紙芝居を読んでる時緊張して「ド、ドドド...」などと口が回らなかった様を思いだしては赤面している昨今なのですが、しかし、しかしですよみなさん、もしこの世に「恥」がなかったら、人間文化はここまで発展しなかったのではありますますまいか?

何も知らず何も気にしないという獣人状態から「恥」を知ったために文明が発達し文化が芽吹きサブカルチャーが発展し私のような辺境漫画家が駄文で恥を披露して日銭を稼ぐことができるわけですよ!

恥万歳!
人間万歳!
夕食バンザイ!
フられて乾杯!
就職問題!

...蛇足で完敗!!


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お寄せいただいた質問はマンガナビ編集部が選別したうえで、羽生生先生にお渡しします。

羽生生 純(ハニュニュウ ジュン)
漫画家 1970年生まれ 1992年デビュー

代表作
『アワヤケ』 『青 -オールー-』 『恋の門』
『1ページでわかるゲーム業界』 『ワガランナァー』
『サブリーズ』 『強者大劇場』



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