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マンガを何処の雑誌に持っていくか?「持ちコンドルは飛んで逝く」

掲載日:2009.04.25

「持ちコンドルは飛んで逝く」の巻

緊急事態発生!緊急事態発生!!
恐れていたことが現実となってしまいました。
とうとうこの「漫画についてを漫画家希望のヤングにアドバイスする振りをして夢のない現実を突きつけてやる気を無くさせ少しでも自分の居場所を取られぬように画策する駄文」こと「絵答え」が2年目に突入してしまいました!!

これまでいろんなことがありました。

度重なる励ましのメール。
応援の花束。
友人知人の賞賛。
あたたかい家族の支え。

そしてそれが全部自分の思い過ごしだったこと。

そんな無反応の海に自分から波風を立てようとして振りあげたボートのオールがすっぽ抜けて海の底に沈んでいくような空気の中お送りしているわけです...
すこしひとりにさせてください...

【ピイタンさん】

はじめまして。
私はこの三月に大学を卒業するマンガ家志望のものです。
一応去年某誌の月刊新人賞の末席に加えてもらえることができました。
しかしその某週刊青年誌が廃刊し、担当も別な雑誌に持込に行ってくれと見放されまして。
それ以来マンガを新しく描いては色々出版社に持ち込みに行っているのですが。
そこで私がいつも迷うことがありまして。
自分の描くマンガが何処の雑誌に持っていくべきなのかよくわからないのです。
私は女性誌男性誌関係なく読むので、好きな作家がいる雑誌に持って行くのですが、うちのカラーじゃないと言われることもあったりなかったり...。
賞のことも考えて、やはり目指すべき雑誌を想定してそこに向けたマンガを描いたほうが近道なのでしょうか?
とりあえず自分は今までどうり、描いては色々持っていこうと思ってます。
何かございましたらお答え頂ければ幸いです。

追伸
私は羽生生純先生の大ファンでコミックスもファミ通のアレ三巻以外は全部持ってます。
お体に気をつけて末永くマンガを描いていってください。応援してます。

決して拙著をほとんど持ってくれてるから選んだわけでは、決して、決してありませんが、今回はこの質問にお答えしようと思います。
決して「先生」とか持ち上げてくれたからでは決して、そのあの決して。

そういえば『アレ(仮題)』でご一緒させていただきこの仕事へのとば口を作っていただいた竹熊健太郎さんが4月から京都精華大学マンガ学部の教授になられたそうで、もう完全に本物の先生になられたということで私程度の者が「先生」と呼ばれることの恥ずかしさをひしひしと感ずる春の日です。
やっぱ漫画家さんて「先生」がつく職業なんでしょうかね?
人にモノを教える職業でもないのに...という気持ちが常にあり個人的には非常に違和感があるので事あるごとに「先生なんてそんな」と訂正してまわりたいのですが相手がふつうに「先生」と使ってるところにいちいちクチバシを突っ込むのも逆に細かいことにこだわってる感じがして恥ずかしいし、漫画家さんにも「先生」と呼ばれて当然だと思ってて当然な実績を残されてる方もいるだろうし...

こんなどうでもいいことをチマチマ気にしてる時点で「先生」と呼ばれる器では無いことは明らかです...
探さないでください...。

で持ち込みの話ですが、私は1、2回くらいしかやったことがありません。
それは運良く仕事が続いたということももちろんですが、持ち込みで簡単にヘコまされて逃げ帰ったからです。

(以下の話は私の記憶だけをもとに書いてますので諸々勝手に作ってる部分があるかもしれませんがあしからず)
十数年前、アスキーの(今は無き)『ログイン』というコンピュータ雑誌の漫画賞の端っこに引っかかった私は編集者から『ヤングマガジン』に持ち込みをするようアドバイスを受けたのです。
どうやらその編集さんが担当してた他の作家さんが『ヤングマガジン』の編集さんの知り合い、とかいうつながりだったようです。
当時アスキーは漫画雑誌を持っておらず、おそらく私のような珍味系をどう漫画家として育てれば良いのかという考えの中の一つの道として『ヤングマガジン』を紹介してくださったのだと思います。

もともとモジモジな性格な私にとっていきなりアポイントを自分から取って持ち込みに行く心理的圧迫を回避して紹介してもらえるという安心感で、日頃の自分には見られない平常心で編集部に向かいました。

そのとき応対してくれたのが当時の副編集長で、アスキーで見かけた身軽な感じの編集者と明らかに違う、「ザ・漫画編集者」という気迫みたいなものを勝手に感じて私のなけなしの平常心は一気に残高0。

別に威圧されたわけでもないのに勝手に萎縮する中軽い会話を交わした後、生活のために風俗勤めを決めた主婦が品定めされるような心持ちで自作が読まれていくのを待つ...

「おもしろくないね」

「頭でっかち」

本当はもっと普通のトーンで言われたはずなのですが、その時の自分には「いきなりホメられるわけ無いじゃん」という心理的防壁を張っていてもなおそれをあっさり打ち破って突き刺さる言葉の数々に完全に戦意喪失。
どこがどうダメなのか説明してくれる言葉もほとんど耳に入らず頭の中は「ダメダメダメダメ...」の羅列で充満。

するとその編集さんが「いいもの見せてあげる」と戸棚から原稿用紙を取り出したのです。

ジワーンと痺れた頭を持ち上げ目をやるとそこには大友克洋さんの『AKIRA』の生原稿!!

その精密な筆致と圧倒的な存在感に完膚無きまでに打ちのめされた私は、部屋に帰ると早速『AKIRA』の単行本を持ち出し今日目撃した生原稿のページを眺めながら「持ち込みするの止めよう...」と心の中でつぶやいたのでした。

今考えるとプロの原稿を見せて衝撃を与えやる気のある奴とそうでない奴をふるいにかける、というのは編集者にとって持ち込み対応時の定番テクニックなのでしょうが、私はそこで「よし『ヤングマガジン』に絶対描く!!」という方向にいかずまんまと討ち死にしたわけですが、そこでもし粘って『ヤングマガジン』に持ち込みを続けていても恐らく芽は出なかったと思います。

私は田舎高校時代あの分厚い単行本を数冊わざわざ電車で片道45分の通学に携えて読んでいたほど『AKIRA』好きだったのですが、でも私が描きたかったのは『AKIRA』では無かったのです(もちろん逆立ちしたって描けないのですが)。
だから『ヤングマガジン』にこだわるという考えは無く、その後リベンジする事もなく流れのまま過ごしていたところ、運良く竹熊さんとご一緒できるというチャンスをいただけたわけです。

...と、酔っぱらうと自慢げに話すような酒飲み話を図々しく書き連ねて文字数を稼いだわけですが、なにが言いたいかというと誰からも賞賛されるような実力のある人ならともかく、私のような中産階級漫画家は「つながり」を持つことが仕事への道だった、ということです。
いろんなところへ持ち込みをすると精神的に疲れたり(『コミック○ーム』のように)立ち直れないほどの指摘をされる事もあるでしょうが、ここで重要なのは「自分の作品を批評された」という事ではなく、「自分の作品を作り手に見せた」「自分という作家を編集者に認識させた」という点なのです。
そこで「つながり」が出来れば、その雑誌でうまくつながらなくても他の雑誌につながるかもしれない「きっかけ」ができます。
もし「批評されるのうぜえ!俺がおもしろいと思ってんだから誰にも文句いわせねえ!」と思って持ち込みをしないのなら、そういう人は自分に向けて自分のための作品を描き続ければよいのです。

でも「つながり」が出来ればなにがどう転ぶかなんか誰にもわかりません。
もしかしたら忘れかけていたつながりから仕事に発展する場合だってあるのです。

今年の2月で終わったWEB雑誌『デジコミ新潮 com2』でやっていた『陋巷に在り―顔回伝奇―』も、実は十数年前、仕事以外の場所で知り合った編集者さんが「いつかなんか仕事やりたいね」と話してから十数年経ってなんとか漫画の世界にしがみついていられたからこそようやく実った仕事だったのです。

ここで重要なのは「やり続ける」ことなのはいうまでもありません。
急いで結果を出したい即売れ即抜きを希望する人は一度の持ち込みに命を賭けるのも良いでしょうが、底辺をはいつくばって身内やいろんな人に迷惑をかけつつも「やり続けたい」という思いでいれば「つながる」場合だってあるのです(決して保証なんか絶対金輪際しませんが)。

もちろん児童向け漫画誌に極太エロ漫画を持ち込んでも無理なのは当然なので、何となく合った雰囲気のところに持ち込んだ方が良いでしょうが、たぶんそこで良い編集者さんに巡り会うことができれば他につながる可能性も増えると思います!

結局「運まかせ」という毎度の芸のない結論に逃げたところでもう一つ緊急事態発生!

今マンガナビから入った情報によると1月にプレゼント告知した「絵馬」ですが、当選者が決まりメールで連絡を何回も入れたのですが全く返信が無く、どうやら受け取りを拒否された模様です...

...なのでリセットして再抽選します......

...泣いてもいいですか...
...海は死にますか...
...山は死にますか...v

...もういいですか...


お願いだから今度こそプレゼントさせてください絵馬。


羽生生先生による世界で一つだけの絵馬をプレゼントします。
ご応募は質問投稿フォームからお願い致します。

※質問項目欄に「絵馬希望」と忘れずにご記入ください。
※もちろん、質問もあわせてご記入ください。

なお、賞品の送付先(住所等)につきましては、当選者が決まり次第マンガナビ編集部より確認のメールをお送りいたします。
そして、メールが届いたら返信をいただけると幸いです。

質問はコチラまで

真面目に答えてもらいたかったり、答えてもらえなくてもよかったりな質問がある方は質問投稿フォームから質問を投稿してください。
お寄せいただいた質問はマンガナビ編集部が選別したうえで、羽生生先生にお渡しします。

羽生生 純(ハニュニュウ ジュン)
漫画家 1970年生まれ 1992年デビュー

代表作
『アワヤケ』 『青 -オールー-』 『恋の門』
『1ページでわかるゲーム業界』 『ワガランナァー』
『サブリーズ』 『強者大劇場』


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