羽生生純の「漫画について答えよう」

羽生生先生の考える"萌え"とは?「萌える昆虫軍団」

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「萌える昆虫軍団」の巻

ナウなヤングの流行り言葉で「テンション」というのが耳につくようになってきました。
「テンション上げる」とか「テンション下がった」とかいう感じで、その時の自分の気持ちの盛り上がりっぷりを表すときに使う言葉のようです。
自分が知ってる限りではたしかテレビでお笑い芸人の方たちがよく使っていたような気がするのですが、職業柄いつもオーバーに喜怒哀楽を表さねばならぬ場面で起伏に乏しかったり無反応だったりする人に「テンション低い」と突っ込んだりしていましたと思います。

で言葉の意味がわからんかったので辞書で調べたら「緊張。不安。」と書いてあり、本来は「テンションが低い」というのは「緊張感が少ない」つまり「油断してる」という意味のようです。

これは別に若者の言葉の誤用で乱れる日本語とかいう眠たい話をしたいのではなく、その意味のすり替わりっぷりが興味深いなあと思ったわけです。

ナウなヤングが楽しいことを前に「テンション上がってきた」とか嫌なことや落ち込むことに対し「テンション下がる」のように使うということは【 楽しい=緊張 】【 つまらない=弛緩 】ということになります。

つまり楽しいことをするためには緊張せねばならぬわけです。
これは不必要に硬直して暮らしていて【 緊張=不安 】としか感じたことが無い自分にとって驚くべき事実で、なぜ自分が放っておくとボソボソと起伏の乏しい態度になるかが理解できたのです。

言い換えればテンションを上げて緊張し続けないと楽しい関係が築けないナウヤングのガンバリストっぷりや大変さが感じられ気の毒な気分になります。

でも緊張せねば楽しいことを起こすことすら出来ないのもまた事実なわけで、【 テンション↑=楽∴楽しい 】ではなく【 テンション↑=緊張∴楽しい 】(∴て「故に」という意味らしい)というポイントを忘れぬようにせねばならぬなあと思った次第です。

キィェェェェェェエエ!!

といったわけでこんな駄文を読んでいただくためにはハイテンションでお送りしていくしか無いわけですよ!
ヤバいハイテンションですよ!!
大黒麻希ですよ!!!

【イチケー】

いつも楽しく拝見させていただいてます。
文章も楽しみですが、なんといっても頁末のイラストで笑わさせてもらってます。
そこでお願いですが、羽生生先生の考える究極の"萌え"イラストを是非描いてもらえませんでしょうか。
そして羽生生先生の考える"萌え"とはどんなものなのか教えて下さい!
宜しくお願いします。

来ました「萌え」!
これは00年代のサブカルチャーに関する事柄の中で非常に大きく、関係無関係含めてなにかしらのリアクションを求められる事象であると思いますが、対極チームのワタクシですらその例外ではありません。
数年前「萌えパンデミック」が隆盛を極めていたころ、自分なりの「萌え」を考えた作品を描こうとしたことがあったからです。
その作品はネームが通らず没になったのですが、今考えるとあの時点では扱いきれてなかったということだったのだと納得しています。

萌え最前線を知らない自分には漠然とした印象しか語ることは出来ないという断りの上で進めていきますが、一般的には「萌え」≒「可愛い」で、具体的にはアニメっぽい絵とかゲームやライトノベルの表紙みたいなイラスト、という印象だと思われます。

そういう絵はだいたい柔らかで几帳面な曲線に囲まれて優しい色合いのきめ細かいグラデーションが施され、題材となるのは概ね少女~若い女性です。

ですがそれだけではなく、「萌え」≒「好き」という感情を抱かせる物事であるといった要素もあり、それは個々の趣向や性癖によって千差万別であり、「フェティシズム」ともゆるく結びついており「萌え」という言葉を括るのを難しくさせています。

例え見た目がハードコアでも、そこに可愛らしさと好印象が加わっていると感じられれば人によっては「もえー」という言葉を使い得ます。

そこでポイントだと私が思っているのは「ニアイコール」の部分であり、それは「なんとなく」というニュアンスです。

人が「好き」という時、それは「濃い」言葉として使われている(はず)ですが、「萌え」はそれに比べて明らかに「薄い」のです。

「好き」>「萌え」で、じゃあ「好き」より濃い言葉があるかといえば「愛してる」だと思っていたのですが、今書いていて気づきました。
「好き」という言葉はその時点でわき起こった瞬間的な感情を表しているが、「愛してる」というのは瞬間ではなく持続している状態なのではないか。そしてそれこそが「愛してる」が「好き」より濃く感じる所以なのではないか、と。

ということは「萌え」というのは「好き」と同じ瞬間的な、しかもそれより薄い感情であるということが出来ます。
試しにその感情が持続した状態を表そうとすると「ずっと好き」「好きでい続ける」みたいにぎこちない表現になるのと同じように「ずっと萌え」「萌えている」もかなりぎくしゃくした表現になります。

他に「惚れる」という状態があります。これは「好き」よりさらに瞬間的ですが濃い表現なので「惚れる」>「好き」>「萌え」となります。

以上から考えると、「萌え」というのは「愛してる」や「惚れる」「好き」よりも薄くて瞬間的な、でも性的なニュアンスも少なからず含まれる、そこはかとない微妙な感情、といえるのではないでしょうか。

そこで現在一般的に「こうだ」と思われている(と私が思ってる)「萌え絵」とか「萌えアニメ」とか「萌え漫画」みたいなものはかなり限定的に使われているのではないかと思い、「そうじゃないものにも萌え得る」と考えてそれを表現しようとしたのが没になった作品なのですが、どうもすっきりしないというか掴みきれていない感じがしていました。

そして今質問に答えるふりをしながらいつものように近所の喫茶店でpomeraをペカペカ打ちながらこの原稿を書いていると、近くの席で幼児兄妹2人が大声で騒いでいるのを祖父母がたしなめていました。
怒ってはいるのですが全く気を抜いた目尻下がりっぱなしのその叱り方を見ていてふと気づきました。

親は子を育てねばならぬという責任を負っています。なので親は子を「愛し」ながら濃い感情を抱きつつ育てるのですが、それは言い換えると「親は子に萌えない」ということです。もしも親が子に「萌える」という言葉を使うならそれは非常に薄い感情、ということです。
一方祖父母にとって孫は血縁ですが直接育てる責任は無く、薄く愛することが出来る、つまり「萌える」ことが出来るのです。

そこに差として現れるのは「責任」の有無です。

責任が強ければ強いほど、気持ちが濃ければ濃いほど、関係性が深まれば深まるほど「萌え」からは遠ざかり、逆に責任が無ければそれだけ一方的に感情を投げつけることが出来ます。

これを近い言葉で言い換えれば「愛でる」になるのかもしれません。

上の条件に付け加えると「萌え」というのは「愛してる」や「惚れる」「好き」よりも薄くて瞬間的な、でも観察者の嗜好によっては性的なニュアンスも含まれる、そして責任を含まず、そこはかとな微妙で限りなく「愛でる」に近い感情、といえるのではないでしょうか。

だから「萌え」という言葉がもてはやされる状況を見ていると、ナウなヤングはテンションを上げ続けながら刹那的で責任を伴わない感情を楽しむということなのかなあ、となんか判ったようなことを書いてきましたが結局それって「若い」ってことで昔っから若者の特質だなあ、なんか自分には昔っから欠けてる要素ばっかだなあ、かといって自分はテンションをコントロール出来てたわけじゃないし無責任な性分は変わらないし、それはきっとうまく「楽しむ」ことが出来ないってことなのかなあ、とやっぱりローテンションな愚痴に陥ってしまうのでした。

そんな自分が今思いつく萌え絵は、先日ロフトプラスワンで観て衝撃を受けたこの方の様子です。


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お寄せいただいた質問はマンガナビ編集部が選別したうえで、羽生生先生にお渡しします。

羽生生 純(ハニュニュウ ジュン)
漫画家 1970年生まれ 1992年デビュー

代表作
『アワヤケ』 『青 -オールー-』 『恋の門』
『1ページでわかるゲーム業界』 『ワガランナァー』
『サブリーズ』 『強者大劇場』



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