羽生生純の「漫画について答えよう」

キャラが先かストーリーが先か?「漫画描かせん奴は殺しゃげたる!」

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「漫画描かせん奴は殺しゃげたる!」の巻

みなさーん

散歩、してますか?
セコム、してますか?
漫画、読んでますか?

全部NO!!

なので今世界的ブームの漫画を取り入れ流行に乗り遅れないように読みました

「はだしのゲン」!

今まで未読だったのでせっかくだからと8月6日に読みはじめたのですが...

まだ第一部終わった段階ですが、もう大変です。想像してみてくださいよ部屋でひとりおっさんが「ヒィィィィー!」などと嗚咽と鼻水を漏らしながら漫画を読むさまを!

もともとすぐ泣く性質ですが、このところさらに締まりがなくなったのか疲れてるのかボロボロになりながら読んでヘトヘトになってしまいました。

子供の頃に読むのも大切ですが、この漫画はやはりいい歳をこいて色々受け止められるようになってからがっぷり四つで読んだ方が豊かな漫画体験が出来ると思います!

などと偉そうなことを書いてますが当の本人はこの話を人に説明するとき「はだしのゲン」をずっと「あしたのゲン」と言い続けて三時間後独りでいる時突然気づき恥ずかしさに身悶えする有様です。
しかも相手は言い間違いを確実に気付いているのに私が夢中になって話しているのを遮らずそのまま聞き流すという気遣いを見せてくれてたことが余計恥ずかしさを倍増させ、今度会って「この前間違ってました」とこちらから切り出して万が一むこうがそもそも全く気付いておらず「え?何のこと?」などと言われた日には火に恥油を注ぐことになるし、かといって相手に面と向かって「間違ってた」と言われるのも恥ずかしいし、話の流れで「はだしのゲン」と訂正されるのも恥ずかしいし一体どうすればよいのだァー!!

...38歳のおっさんが日がな一日こんなクソどうでもいいこと考えていられるというのはしあわせなことです。

【とれん堂さん】

はじめまして。
先生に質問です。
先生は新しいマンガをスタートさせるときにストーリーを考えてからそのストーリーに必要な登場人物を考えますか?
それとも、キャラクターを考えてから、そのキャラクターが活躍するストーリーを考えますか?
それとも、その辺はあまり気にせず両方合わせてマンガ全体を考えるのでしょうか?
私もオリジナルのマンガを描こうと思うのですが、ストーリーが続かなかったり、登場するキャラクターをどう動かしたら良いのか分からず描いている途中で挫折することが多いので...。
何か初心者がオリジナルマンガを描くコツがあったらアドバイスをもらえるとうれしいです。

もしかして前の回で同じことを言ってるかもしれませんが、もしダブっててもそれはものすごく何度も強調して言いたいということですよ!

キャラかストーリーか。
これは今までもちょこちょこ触れてきた非常に気になる問題です...

...ですが、果たしてこれって本当にそれほど気にすることなのでしょうか?

もちろんストーリーのない漫画を成立させるためには尋常では無いテクニックが必要ですし、キャラクター(人物造形、絵のタッチ含めて)に引かれるところがなければ読んでもらえないのも事実です。

でも上記の要素というのは実は「読者」にとって重要な条件であって、我々(このサイトで漫画を描こうとしてる人たち)「作者」にとって重要なのか?ということです。

ちょっとニュアンスを伝えるのが難しいので上手く書けるかわからんのですが、実際漫画を描く時、一番とっかかりで必要なのは

「漫画が描きたいのか?」

じゃないかと思うのです。

当たり前じゃねえかと思われるでしょうが、どんなにキャリアを積んだ作家さんでも、売れてても売れてなくても、まずここで「YES」と言わない人は描く必要が全くないわけです。売れた人は稼いだ金で投資でもすればよいでしょうし、売れてない人はとっととハローワークかコネを使って別の仕事を探すべきです。理由は「儲けたい」でも「モテたい」でも「あいつを見返してやる」でも「持病だから」でも全く問題ありません。他人にとってはどうでも良いことです。

でも、それでも「描きたい」と思う人は次に

「何を描きたいのか?」

ということになります。
この段階で初めて「キャラ」とか「ストーリー」とかが考慮の対象になるのです。

「はだしのゲン」でいえば、サブテキスト等調べた上で書いてるわけではないので推測でしかありませんが、中沢啓治さんは他人が経験したことの無い強烈な体験をし、それを他人にどうしても伝えたい、というゆるぎ無い「思い」があったからこそあの作品を描いたのであろうと思うのです(じゃあ事実をもとにすればおもしろい漫画になるのかというとそれは全く違います)。

で、その後の作業はあくまでも読者に言いたいことをどう伝えるか、という流れの中での、愛と憎が竜巻のように荒れ狂いながらも前へ進むことをやめない「ゲン」という「キャラ」と、原爆を中心にした(させられた)人たちの「ストーリー」なのであり、これはキャラかストーリーかという単純な二項対立でつくられるものではなく、「読者」として漫画に触れたときに初めて機能する仕組みなのです。

これを例えば「誰にでも喧嘩をふっかけるような乱暴者だけどそれはやさしさに裏打ちされたもので、困難にぶつかっても笑いを忘れることなく決してあきらめないような主人公が登場する漫画を描きたい!」と思ってからそのキャラが活きるような波瀾万丈のストーリーを想定する、という順序で描いたとしたらあれだけの「思い」がこもった作品にはならなかったのではないでしょうか。

なぜかというとその「思い」を受け取るのは「読者」でしか無いからです。
作者がいくらキャラやストーリーに思い入れを持ちそれにこだわったとしても、それはあくまでも「手段」であり、「結果」というのは「読者に言いたいことが伝わったか」が一番大きいのではないでしょうか。

もちろんその「手段」の上手さを楽しむのは漫画の醍醐味ですが、あくまで「作者」としてこの問題を考えた場合、やっぱり一番最初の描くときのとっかかりとしての「何が描きたいのか」が大きいと思うのです。

キャラやストーリーは時期ものですから、その時代時代での流行り廃りに左右されるし作者が「計算」で「売れ線」方向をねらうのかあくまでも「自己流」を貫くのか、色々作戦の立て方はあるでしょうが、現代の漫画市場は読み手も描き手も自由度が増しているので「あの売れ漫画みたいな漫画が描きたい!」と思ってそっくりな漫画を描いてもその「手段」が上手ければある程度許容してもらえるので、そこにそれほど重きを置いても(もちろん重きを置かねばならないのですがその上で)意味がない、というか最重要事項ではない、と思います。

上手い絵を描きたきゃ死ぬほど練習すれば良いだけだし面白いストーリーを描きたければ死ぬほど勉強すれば良いだけ、なのでしょうがそんなことは誰にでも出来るわけではないし、いつか来る栄光のためにいくら準備だけしてても人生は今の瞬間も刻一刻と終わりに向けて進んでるわけですから、どっかで区切りをつけて行動を起こさなければこの世に何の痕跡も残せないのです。

残したくない人はもちろんサラっと生きていけばいいのですが少なくとも「なんかしたい」という人はとりあえず「やる」しかないのです。

前も書いたかもしれませんが、上手く行くかどうかはとりあえずひとつでも作品を完成させなければ判断すら出来ないので、とにかくアホみたいに短くてつまらん作品でも作ってみて、それを元に

「まだぜんぜん言いたいことも言えない(以下略)ポイズン」

だったり

「もっとキャラクターを活かさねば」

とか

「ストーリーが物足りない!」

とか

「漫画描くのってカッタリー」

とか

「そもそも漫画なんか描くもんじゃなくて上手い人が描いたのを読んでるだけで幸せじゃね?」

などが認識できるわけで、その上で勉強なり不勉強なりすれば良いのではないでしょうか。

絵に描いた餅は絵でしか無いですが「絵」は確実にこの世に存在します。
でも描かなければ「絵」すら存在しないただの「無」なのです。

...なんか前もおんなじ事書いたような気がするなー...大丈夫かなー...でも確認するの面倒くさいしなー...「年取ると説教臭くなって一般論とか観念的なことばっかいうからヤだなー」なんて思ってたらまんまと自分がそうなっちゃった...でもそこを言わんと先に行けんのだし...

...38歳のおっさんが日がな一日こんなクソどうでもいいこと考えていられるというのは本当にしあわせなことです。

...でもそれだけじゃ我慢できんのですよ!!!


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羽生生 純(ハニュニュウ ジュン)
漫画家 1970年生まれ 1992年デビュー

代表作
『アワヤケ』 『青 -オールー-』 『恋の門』
『1ページでわかるゲーム業界』 『ワガランナァー』
『サブリーズ』 『強者大劇場』



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