羽生生純の「漫画について答えよう」

吹き出しの文字が多い漫画はダメ?「アイラビュウアイノウ」

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「アイラビュウアイノウ」の巻

選挙に行ったひとー

(ハーイ)

投票用紙にリアルなウンコの絵を書いて投票箱に入れたひとー

(ハーイ)

それを毎回やってるひとー

(ハーイ)

というわけで選挙権の行使を怠らない市民感覚満点のわたくしがお送りしていますが、そのうち国会に本物のウンコを送り込みますので楽しみにしていてください!
これがホントのウン国政選挙、てか!

そんなカックラキンな純ばあちゃんの縁側日記ですが、ではここでトンチなぞなぞー!

私の今年の8月は90日くらいありました。なーんでか?

答えはこの読み物の一番最後に書くので堺すすむの顔マネをしながら読み進めてくださいね!

【ツナ缶】

マンガ家を目指す専門学生です。
羽生生先生に質問です。
先生が吹き出しの文字は出来る限り少なくしないと面白い漫画にならないって言うんですが、どういうコトでしょうか?
吹き出しにたくさん文章がつまっているマンガだっていっぱいあると思います。
私は、吹き出しに文章がつまったマンガの方が好きなのでかいてるんですが...。
もしかしたら、吹き出しの文章が多いと編集者さんに嫌われてしまうのでしょうか。
教えてください。

フキダシというのはコマ割りと並んで漫画特有の表現方法でして、どんなに素敵なオモシロ物語を描いてもコマとフキダシが全く無ければそれは「絵物語」もしくは「挿し絵が異常に多い小説」です。逆をいえばどんなにクソつまらない全く意味不明な戯言しか描かれていなくても、コマとフキダシがあれば立派な「漫画」と名乗れるのです。

コマ割りというのは映像の表現を担い、フキダシは音声情報を伝えるための手段です。これを映画に当てはめるとフキダシはトーキー映画(もしくは吹き替え映画)にとっての音声であり、サイレント映画や字幕版の映画にとっては字幕であって、映像だけで物語を表現している作品以外では作ってる人の言いたいことを伝える重要な要素です。

以上をふまえて質問について考えると、フキダシが短いということはなにを表しているのでしょうか?

前の回のどっかで書いたような気がしますが、漫画にとって「時間をコントロールする」というのは気を配るべき大きなポイントで、その中でもフキダシ内の文章(ネーム)は読者がその漫画を読むときの速度に直接関わってきます。
単純に一行のセリフより十行のセリフの方が読むのに時間がかかるのは確実です。

ということは、その先生が「フキダシをできるだけ短くしろ」と言ったのはすなわち「読む速度を速めろ」という意味合いがあります。

ですが、これはあくまでも「テンポの早い物語」を描く場合のテクニックである、ということで、あらゆる物語がテンポを良くする事で面白くなる、ということでは決してありません。

どんな物語にもテンポはありますが、その物語に適した、もしくは予想外の面白さを引き出すテンポというのは千差万別です。
しかも一つの物語内でもじっくり読ませる部分とテンポよく読める部分を共存させねばならない物語もあります(というかほとんどの物語は様々なテンポ(=時間)のコントロールが必要なのです)。

たとえば週刊少年漫画のような、読み手も描き手もあらかじめ共通の認識を持って作られるような漫画で、テンポを必要とするアクションシーンに一つのフキダシ内でどんなにすばらしい言葉を百行紡いでもそれは単に「テンポの悪い」漫画になるだけで、そういう場合は先生の言うように短い文章のほうが効果的です。
しかし状況を説明したり登場人物の心情を表すようなシーンでは必然的に情報量を増やさなければ説明しきれません。

また、実際に読む速度以外にももちろん作品内での時間経過もかかわってきます。
フキダシの文章量が多いということは映画でいうと長回しのシーンと同じ意味なのです。動きのある映画では長回しのアクションシーンは成立しますが、漫画の長回しではアクションシーンは成立しません。なので結果的に長セリフのシーンはアクションとは反対の状態を表現することになるのです。

今気づきましたが、週刊少年漫画の巻数が膨大になる理由の一つがここにあります。
たとえば野球もので1イニングにに一巻分必要だったりするような作品は、テンポを維持するためにフキダシ内の文章が必然的に減り(これはそのシーンをどのようなコマ割りにするかにも関わってきます)、しかも状況をきちんと説明するための文章量を確保するためにページ数が増え、その結果巻数が増える、ということになるのです(その代わり必要ない試合は結果を一行で書くだけという時間のコントロールもきちんと行われています)。

これに対しアメコミはフキダシ内のセリフがとても多く、日本の漫画を読みなれた人には読みづらく感じる部分もあるかもしれませんが、はるかに短いページ数で読者にきちんと言いたいことを語りインパクトを与えることができます。

ここで注意しなければいけないのは、文章の長短に関わらず「文を練る」という作業が必要だという点です。

「スターウォーズ」でレイア姫がハン・ソロに自分の気持ちを告白するシーンがありますが

レイア「I love you.」

ハン・ソロ「I know.」

この「知ってる」というぶっきらぼうな言い方のなかに今までのレイアへの気持ちや自分の思いが込められていると思います。

ここで「実は俺も元々何となく気になってはいたんだけど俺はこういう性格だしすんなり自分の気持ちを表すのは苦手で、でもお前の気持ちはずっと気づいていたんだぜ」などとくどくど喋らせるのは明らかに演出意図に対して失敗だというのは一目瞭然です。

ですが、これはそれまでのシーンの積み重ねの上でこのような短い文章で心情を表すのが効果的だ、ということで、上記の長ったらしい文も例えば

勝ち気な女の子が突っ張ってるけど奥手な男の子に告白するシーンで

女の子「好きだよ」

男の子「じ...実は俺も元々何となく気になってはいたんだけどさ...まあ俺はこういう性格だしすんなり自分の気持ちを表すのは苦手だし...でもお前の気持ちはずっと気づいてたつーか...」

女の子、言葉をふさぐように男の子にキス。

みたいな感じであれば(古くさいシーンですが)、女の子が先導して思いを遂げるという場面になります。

ですが

男の子「知ってる」

と言ってしまうと、女の子は喜びとともに軽いショックを受けて自分からキスするというチャンスを失うか、もしその時男の子が黙って何もしなければこのシーンでは恋愛が進展する事はなく以下次号、となり、必然的に物語を語るのに必要なページ数が増えます(もちろんこの言葉の直後に「死ねー!」と言って男の子を惨殺したりする事も可能ですが、それは自分がどんな物語を作りたいのかによります)。

言ってみれば当たり前の事ですが、セリフによってそのキャラの性格や物語の流れが変わってくるので、物語のコントロールにはセリフのコントロールが重要なポイントなのです。

ですが何でもかんでも練ればいいのかというとそうでもなくて、練ることにより意味が純化し短い文章で複雑な意味合いを伝えることができますが、様式化しすぎると生々しい会話や時間を感じさせる言葉を表現するのが難しくなるという点もあります。

ヒーローものや時代ものなどは様式化されたセリフが決まることでそれが「決めゼリフ」となり、作品を覚えてもらうための引っかかりになります(「北斗の拳」の「お前はもう死んでいる」みたいなやつ)が、万引きGメンに捕まった時のようなシーンでは

「え...あ...はい?...何ですか?何がですか?やめてください...いやちょ...え?...これはそのアレしてて...レジのアレが...イヤす...すいません」

みたいな方がオロオロっぷりや間抜けっぷりが表現できると思いますし、このセリフをいちいち短いフキダシで描くと単にダラダラ長いだけのシーンになってしまいます。

なのでフキダシ内文章量はその作品のそのシーンに必要な量を常に意識し、長ゼリフにしたい場合はなぜそのシーンにこの長ゼリフが必要なのかを考えることによって、作品にあった(もしくは自分の好みにあった)コマ割りができると思います。

...なんか中途半端に真面目に書いたら冒頭のオチャラケのりで出したクイズの答えを発表するのにすごく違和感をおぼえます...でも...いや...まあ...答えは単にいつもより締め切りが三倍くらいあったからそう感じたってだけの事なんですけど...ああやっぱアレかな...やんなきゃよかったな...でもちょ...んー...

ひでぶ!


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真面目に答えてもらいたかったり、答えてもらえなくてもよかったりな質問がある方は質問投稿フォームから質問を投稿してください。
お寄せいただいた質問はマンガナビ編集部が選別したうえで、羽生生先生にお渡しします。

羽生生 純(ハニュニュウ ジュン)
漫画家 1970年生まれ 1992年デビュー

代表作
『アワヤケ』 『青 -オールー-』 『恋の門』
『1ページでわかるゲーム業界』 『ワガランナァー』
『サブリーズ』 『強者大劇場』



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