羽生生純の「漫画について答えよう」

漫画家にとって原作付きと原作無しのアレ「人類総原作者計画」

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「人類総原作者計画」の巻

今この原稿を書いてるのは実はライブハウスの楽屋でして、なんでかというと心神喪失でさまよいこんだ、のではなく今日(10月11日)新宿レッドクロスでおこなわれる「漫画家バンド大戦'09」に出演するのでその楽屋で忙しいふりをしてこれを書いてるのです!
これは以前「紙ー1」でお世話になった漫画家三本美治さん主催の素敵イベントで、ある一部の漫画ファンには大ご馳走な作家さんが自前バンドでにぎやかに、といった感じなのですが、今回私は「アーバンギャルズ」という河井克夫さんの素敵ユニットの特別編成バージョン「アーバンギャルズカルテット」で、うるしと漫画のオーソリティ堀道広さんと参加させていただくことになったのです。しかもゲストボーカルはしまおまほさん!
明らかに異物感満載の私ですが、アーバンギャルズの基本楽器が「マイクロコルグ」というシンセサイザーで、昔それを見て羨ましくなって出来もせんのに衝動買いしておいたおかげで今回マイクロコルグ持ちの漫画家として声をかけてもらえたのです。衝動買いってしとくもんですね。もんですよ!家の人!

と書いてる間にリハーサル中の楽屋が徐々に混んできて、明らかに邪魔な感じなので近所のマクドナルドに引っ越してきました。
出演するといっても私はほとんど何もせず座ってボケーとしてるだけなのですが、ほかの漫画家さん方はスゴいですよ!なんか何もできない自分がただの阿呆に思えてきます。でも踊る阿呆の方が総合的な損失が少ないのでこの機に乗じて踊っとこうと思いますよ。

【満々太郎】

『陋巷に在り-顔回伝奇』買いました。
羽生生先生は『ファミ通のアレ(仮題)』以降原作付きのマンガを描いていないと思うのですが(間違っていたらゴメンナサイ)原作付きのマンガを描くときと原作付きでない(全て自分で考えて)マンガを描くときに気持ちの違いなどはあるのでしょうか?
原作付きだと気をつかうよなぁ...とか、話を考えなくても良くて楽チンだなぁとか、あるのでしょうか?
原作付きでないと好きに描けるぜ!とか、話が思いつかなくて辛いぃぃぃとかあるのでしょうか?

早速あからさまな偏向の結果選ばれた質問にお答えするわけですが、確かに原作付きは『アレ』以来で、しかもストーリーものの原作付きは初めてです(御買上頂感謝!)。
で、私の体験をふまえると「原作付き」と言っても実は結構いろんなパターンがありまして、そのパターンによって意味合いも微妙に違ってくるのです。

たとえば、上記のようにストーリーものとギャグものでは原作の領分が違います。

『アレ』という作品は竹熊健太郎さんという絵も描け話しも作れてなんなら編集作業だってやるよ、というオールマイティーな方と一緒にやらせてもらったのですが、竹熊さんの原作スタイル、というか漫画を考えていくスタイルは『サルでも描けるマンガ教室』で相原コージさんとの作業の中で構築されていったものだそうです。
『アレ』の場合、週一回竹熊さんの家に編集者と3人で集まり、直接内容と関係ないような話をしながら原作者がネームまで切っていき、大体2、3時間で完成したネームを持ち帰り私が下描きして2人にチェックしてもらい、OKが出たら作画に入る、という段取りでした。

このやり方の利点というのはもちろん3人で内容を把握しながら作っていくので余計なチェックの手間が省けるということです。ギャグは特にそうですが原作付きの場合その場で「面白い」を共有して作業した方が編集者や漫画家も自分の意見を出しやすく、きっちり作り込んだ原作を後から絵にしていくよりはるかに「活きのいい」ものが作れると思います。

もちろんこのやり方は竹熊さんが漫画のことを熟知していて絵も描けコマ割りまでできるという利点に則ったものなのですが、もし原作者が「一字一句原作を変えてはならん」的な人の場合は最悪な結果になります。
ですが幸い竹熊さんはド新人の私が下書きの段階で(大筋に影響を与えない範囲で)勝手に小ネタを入れ込んでも、コマ割りを修正しても結果的に問題無ければ通してくれたので、私としては創作欲も満足させてもらいつつとても勉強になりました。

一方で『陋巷に在り-顔回伝奇』はまた違ったやり方だったのですが、この場合は私は原作の酒見賢一さんとはまだ一度もお会いしたことが無く、編集者が酒見さんに原作を使用する許諾を得て、私は小説を読んで全二十四話の決まった枠組みの中にエピソードを落とし込んでいきました。

この場合も私は恵まれていて、酒見さんは1、2の注意点をアドバイスしてくださった以外全く内容には口出しありませんでした。

これは作品自体がもう完結していて、漫画化の方向も週刊で全エピソードを網羅、みたいな漫画化ではなく変則的なものだったので実現できた企画で、もし「一字一句」式の原作者で何段階ものチェックを経てみたいな方法だったら私はやらなかったと思われ、そういう意味でも幸運な成り立ちでした。

また逆の立場で、自作を原作に映画化してもらったという経験もあるのですが、この場合は「一切口を出さない」というのが私の決めた立ち位置でした。
それは松尾スズキさんという強烈に作家としての「顔」が見えている方が作る、という段階ですべてをお任せすることにしていたからです。
もちろん脚本の段階でチェックさせてもらったりしましたが、(映画と漫画という媒体の違いもあり)最初から全く別物と考えていたので、こっちは何にも考えずに他人事のように見ていました。

このように、私の少ない原作経験は相手に恵まれた、というかやりやすく楽しいものでした。
もちろん実際に原作をいじったり「外れない」ような絵を描くという大変さは常にあります。
でもこれは見方を変えるとふつうの漫画制作と全く変わらないわけで、

自漫画=自分原作付き

と考えればやってることは全く同じただの漫画描きです。
しかも商業誌の場合は編集者や編集部、出版社の意向やら表現のガイドライン(はっきり形になってない場合がほとんどですが)など、常に誰かからの意見があり、大手になるほど「こういう話にしてほしい」とか「そっちには進まないでほしい」のような力が加わるので、こういうものも「原作」のようなものと捉えれば、原作付きを描くのも自分ひとりで描くのも基本的には何にも違いありません。

ただそこで原作者(この場合は自分や編集者なども含む)に問題があり、とても厳しくてチェックが大変、という前向きなものから、ものすごく締め切りにルーズだとかすぐ逃げたくなるとか内容の向上と関係なく単にやたら口出すとか最初から小馬鹿にしてるなどの漫画以前の問題まで、何らかの軋轢があらわれる場合ももちろんあるのですが、漫画以前の問題の場合は単に人間関係の問題なのでどんな業種でも経験するふつうの「イヤなこと」です。

もちろんこういう問題がありつつも面白くて大ヒット、という漫画は星の数ほどあるでしょうからあまり気にする必要はないというか、単に「運」なのでどうしようもないことです。

だからどうしようもないことをいくら気にしてもどうしようもないので、それなら絵をいっぱい描くとか小説を読むとか映画を観るとか誰彼かまわず告白するとか自己責任でぼったくりバーにはいるとか自己責任で密入国するとか他にやることがたくさんあるので原作付きとか深く考えずにとりあえず描きましょう。

とか書いてる今は16日でもうバンド大戦は終わってるのですがイヤーみなさんすばらしかった!
なんとシークレットゲストはいましろたかしさん率いる「いましろバンド」ですよ!ものすげーかっこよかった!
三本さんと花くまゆうさくさんの「余剰人員」も古泉智弘さんの「フィーバーズ」も花くまさんとしまおまほさんの「トカレフズ」も逆柱いみりさんの「漏電銀座」も「ペーソス」もすばらしかった!
「アーバンギャルズカルテット」もダラダラですばらしかった!
合間の川崎タカオさん大橋裕之さん小田原ドラゴンさん堀さん三本さんの紙芝居もすばらしかった!
その他にもたくさんおもしろポイントあったけどこんだけ漫画家さんの名前入れとけばヒット数あがるだろうという目論見を果たしたのでここらで遅れに遅れている原作者(自分)をリンチにかけてしっかり原作を書かせて漫画家(自分)に原作を渡して漫画を(自分で)描きまーす...

今ふと思ったけど他人のバンドに参加して人の曲を歌って気楽に楽しむのも原作付きみたいなもんだな...

そういやなにをするにも原作がついてるのとおなじだよな...

自原作の自人生...

か...

咳をしても一人(尾崎放哉原作(じゃなくて只の引用))


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羽生生 純(ハニュニュウ ジュン)
漫画家 1970年生まれ 1992年デビュー

代表作
『アワヤケ』 『青 -オールー-』 『恋の門』
『1ページでわかるゲーム業界』 『ワガランナァー』
『サブリーズ』 『強者大劇場』



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