羽生生純の「漫画について答えよう」

漫画のテーマを誰が決めるの?「テーマはテーマがテーマです」

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「テーマはテーマがテーマです」の巻

1月10日しりあがり寿さん主催の素敵イベント「さるハゲロックフェスティバル2010」が怒濤の盛り上がりのうちに終わりようやく2010年があけましたのでおめでとうございます!

2007年から年々オオゴトになりつつ開催される「さるフェス」ですが、私もジンベイザメに張り付くコバンザメのごとくおもしろいことに首を突っ込みたいとこのイベントに参加させてもらっているわけですが、今年は昨年分の仕事に片が付いたのがイベント当日の昼12時過ぎあたりで、今年は「ご当地アイドル!キンジョリーナ・セピア」というユニットで出演だったのですがそこから初練習を1時間くらいやり、その足で新宿LOFTに向かって5時に出番、という無謀というか失礼な感じで出演してしまったのですが、なんとかお漏らしをすることなく出番を終えることができました。

そんなスリリングな展開の後ですごい取り合わせの豪華メンバーのステージを見られて感動もひとしおでした。

ここ的なネタだとなんといっても安彦良和さんのトークショーなのですが、おそらく正式な媒体では出されないだろう直球コメントを、しかもアニメ・漫画ファン中心じゃなくていろんな人がいる場所で聞くというなんとも贅沢な状況でした。

しかも楽屋でようやく安彦さんとご挨拶でき、拙作『俺は生ガンダム』を読んでもらってたとご本人から聞けて「ああミソッカスでも最後まで『生ガンダム』やりきって良かった」と思えたのでした。

なにしろ一日で谷川俊太郎さんの「お●●こ」と安彦良和さんのトークと松尾スズキさんの「ヴィーナス」とサエキけんぞうさんの「レーダーマン」と明和電機さんのオタマトーンとそのほかすごいメンツのステージが見られるイベントなんて他ではあり得ませんよ!

なので今はもうすっかり一年分の行事が終わった気分です。

良いお年を!

【寅田小虎】

明けましておめでとうございます。
いつも羽生生先生の面白回答楽しみにしています。
いつもは他の人の質問を読んでいるだけですが、新年ということで心機一転、私も質問を送ってみたいと思います。
それでは...
羽生生先生が商業誌で漫画を発表するときは、自分からテーマを持ち込みますか?それとも編集部から与えられたテーマを膨らます感じでしょうか。
プロ漫画家の作品がスタートするときはどんな感じなのでしょうか。(もちろん、色々なパターンがあるかと思いますが)
また、死ぬまでにコレだけは描きたいというテーマなどはあるのでしょうか?
お答えいただけると嬉しいです!お願いします!

作品の成立には様々な要素が関係しています。

まず描く側(漫画家)の「描く」という意志があって成立するのはもちろんですが、そこに至るまでは「描きたい気持ち」だったり「描かねばならない事情」だったりそれぞれの要因があり、載せる側(雑誌(の編集者))にも「どういう作品を描かせるのか」「誰に描かせるのか」という動機があって、それが色々な条件のもと重なりあって作品が生まれるのです。

で、漫画家側から先に言いだした場合に「持ち込み」という形になります。

私は漫画だけでメシを食うようになってから一応15年目(たぶんそのくらいだと思いますがいつも曖昧なのでだいたい)くらいになるのですが、こちらから直接企画を持ち込んだことはありません。

私のメインの発表場所は『コミックビーム』なのですが、ありがたいことに前作が終わるごとに次回作の打ち合わせに入りなんとか作品を発表することができ、その間徐々に他誌での発表の機会も出来てきて、現在まで大きく途切れることなく仕事を続けることが出来ました。

作家には描きたいものが明確に定まっている「がっつりテーマ」タイプと描きながら(考えながら)描きたいものが定まっていく「ゆったりテーマ」タイプ(というか性質)があって、ひとりの作家さんでもそれが入れ替わる場合もあります(ここでもちろん一番重要なのは「描きたい」という意志なのは変わりませんが)。

私が続けて来られたのは考えながらテーマが決まっていくタイプで、雑誌側がそのやり方を許容してくれたからだと思います。
もし描きたいテーマががっつり決まってる場合は、いくら付き合いがある雑誌だからといってそれをゴリ押ししてもいい結果にならない場合もあるので、その自分が思っている作品を実現できそうな(載せてくれそうな)雑誌を選んで持ち込むほうが有効だと思います。

「がっつり」タイプでも「ゆったり」タイプでも漫画家にとって商業誌での作品の成立には編集者さんの存在が欠かせませんが、載せる側にも「がっつり」タイプと「ぼんやり」タイプがあり、それぞれの場合で事情は異なってきます。

編集者として「がっつり」とやってみたい、というか「この漫画家にこれを描かせたい」という(個人的もしくは会社的な)意志がある場合もありますし、まず「(個人的もしくは会社的に)この漫画家に描かせたい」という意志があり「何を描くか」は作家の意志にゆだねる、という場合もあります。

『コミックビーム』の場合の私に対するスタンスはかなり「ゆったり」タイプでした。
「ゆったり」×「ゆったり」の場合はとにかく話し合ってやりたいこと、やったら面白そうなこと、しかもやったらそれなりの勝算があるもの、を決めていくという感じです。

ですがこれは雑誌ごと違うわけで、(なんとなくの印象ですが)大手雑誌はあきらかに「がっつり」タイプが多いと思います。

大手の場合は「商業的なヒット」が至上命題だと思うので、明らかに勝てる(と思える)テーマを出し、漫画家も勝てる作品を描く事が出来る人が集まっているでしょうから、両者で「がっつり」なタイプが多いような気がします。

一方その他の雑誌は大手がカバーしない部分で勝負することが多いので、雑誌側からがっつり決め込んでいくよりも、漫画家側から思ってもみないようなものが出てくるのを許してくれることが多いと思います(もちろん売れるに越した事は無いのですが)。

これらの組み合わせで

 漫画家    雑誌
a「がっつり」×「がっつり」
b「がっつり」×「ゆったり」
c「ゆったり」×「がっつり」
d「ゆったり」×「ゆったり」

というパターンが出来ます。
a~cが大手に多く、b~dがその他に多いような気がします。
今気付きましたがジャンル漫画というか専門誌は前提からして「セックスありき」だったり「麻雀ありき」「パチンコありき」だったりあらかじめ共通のテーマがあり、存在意義が「がっつり」×「がっつり」なのか...
でもそうすると現在は漫画のジャンル化というか細分化が進んでるから全体的にはaとcが多いってことかな...

そうだ!まず「テーマ」って何かを書かなきゃだった!

今ウイッキーペディアで調べたら「テーマ(主題)」というのは「陳述される中心的対象」ということらしいです。

そう考えると、さっきからダラダラ書いたパターンに照らすと、そういうのが最初っから「がっつり」決まってる人は少ないような気がします。

「テーマ」というのはざっくりした、たとえば「愛」とか「友情」とか「おっぱいがいっぱい描きたい」とか「爆発の絵を描きたい」「色男しか描きたくない」みたいな大まかなもので、雑誌側はおっぱい好きな漫画家におっぱい禁止の作品を描かせるわけも意味も無く、おっぱい好きがものすごいおっぱいを描いてくれるだろうと期待して作品を依頼するわけで、多分おっぱい漫画家がノーおっぱいな歴史漫画とかを描きたいといったらその雑誌側はそれが商売になるかどうか「営業テーマ」に基づいて計算し、「行ける」と思えば載せてくれるし「要らん」と思った場合もっと確実に売れるように「作品内テーマ」について意見を出しておっぱいを描かせるよう誘導するかもしれないし、歴史漫画を載っけてくれそうなところを紹介してくれるかもしれないし、もし紹介してくれなければその漫画家はその作品を載っけてくれそうな雑誌に持ち込むことになる......

「テーマ」についてまとめると

A 漫画家側
1「自分内テーマ」
2「作品内テーマ」

B 雑誌側
1「営業テーマ」
2「作品内テーマ」

このお互いの2が合致して初めて作品が成立する、ということなのだと思います。

私の場合、自分内テーマは

「漫画を描く」

です。

これは今の作品の媒体が漫画だからで、もし他の媒体であればその媒体についてのことになると思います。

それから作品内テーマを考えるのですが、「ゆったり」×「ゆったり」タイプの仕事がほとんどなので作品ごとに何をやりたいのかを自分の中に探しに行くことになります。
するとやっぱり根本には自分内テーマが存在しているのでどうしてもそこを覗き込むことになる...

で、そう考えるとおそらく質問の「テーマ」というのは2のことで、たとえば『生ガンダム』という作品だったら「もしガンダム好きな人がこじらせて現実に自分がガンダムになろうとしたらどうなるか」ということだと思うのですが、「漫画を描く」というのは1の部分というかふつうその作品を描く「動機」であり、私はきっとそこらへんを勘違いしているのだと思います。


そうか...

もしかしたら自分が自分内テーマの「漫画を描く」という事と作品内テーマとして「漫画を描く」を混同してるからこそ、そこから敷衍して自分の作品には「漫画を描く人」=「何かを作る人」が出てくるいうことなのかもしれない!

いずれにせよいちばん重要なのは

「描きたいことがある」

という点で、いくら「ゆったり」だとして、雑誌側から「おもしろいもの描いて」とゆったりした依頼されたは良いが何もテーマが浮かばないとしても、お釜にこびりついた米粒をこそげとるように「描く」ことで初めて作品が成立するわけで、本当になんにも描くことが無いのであれば「描かない」という選択肢が出てくるのです。

どんな漫画家もひねり出せば自分内テーマは出てくるでしょうし、それが日々メシ食ってクソして寝る為にお金を稼ぐ手段として漫画家という職業を選んだ人はその上でみんな苦しみ/楽しみながら作品内テーマを出し、それが雑誌側の希望する作品内テーマと合致するか、もしくは自分の作品内テーマを納得してもらうように説得し、営業テーマを満たすことが出来るかびくびくしながら過ごし、それなりの結果が出れば次の仕事につながり、出なければ次の手を考えるのです。

えーと約15年目にしてようやく自分の作品のテーマがなんとなくわかってきました。

ありがとうございました!


羽生生 純(ハニュニュウ ジュン)
漫画家 1970年生まれ 1992年デビュー

代表作
『アワヤケ』 『青 -オールー-』 『恋の門』
『1ページでわかるゲーム業界』 『ワガランナァー』
『サブリーズ』 『強者大劇場』



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