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スランプってありますか?「描けないスランプ」と「面白くないスランプ」「『漫画家』とかけまして『スランプ』と解かないッ!!

掲載日:2010.06.26

「『漫画家』とかけまして『スランプ』と解かないッ!!」の巻

ニッポン!サッカー!イヤーすごかったですねー本田のゴール!そして山田のレシーブ!おっと鮎原のスパイク!ここで千木良のソックス!サイドからブブゼラのキャミソール!一気にオバマのノッチ!そのままアナクシマンドロスのセンターオブジアース!

というわけで数年に一度のにわか似非一夜漬けなりすましサッカーファンとしてアクセス数アップのためのワールドカップがらめオープニングからはじまった「絵答え」ですがみなさまいかがマスコミに踊らされていらっしゃいますでしょうか。マンデーナイトフットボール!(「レポマン」より)

【ピノ】

スポーツ選手や芸術家の方によくあるかと思うのですが、羽生生先生はスランプに陥ったことはありますか?
もしありましたら、その時はどうやって克服されたのでしょうか。
是非お聞かせいただければと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

「スランプ」と聞いて最初に思い浮かべる言葉は「Dr.」?それとも「爆風」?どちらを選ぶかによってその人のスランプ度がわかる、というのは今私が作った心理ゲームですが回答は差し控えさせていただきます。

スランプ、おおまかに言えば不調ということになると思いますが、漫画家にとってスランプは2種類あります。

「描けないスランプ」と「面白くないスランプ」

ああどちらもなんというおぞましい言葉!マイボールたちがオウンゴールしそうですよ!(ワールドカップ)

「描けないスランプ」というのは字面通り作品を完成させることが出来なくなる状態ですが、その原因は物理的から精神的、身体的、果ては他人には全く理解できない理由まで様々なものがあります。

「面白くないスランプ」というのはいくら作品を描いても受けない、売れない、理解されない、共感されないという恐ろしい状態です。

そしてもっと恐ろしいことに、この2つはどちらか一方ではなく多くの場合複合的に発病するのです!あんまり恐ろしいので自分のボールにハンドですよ!(ワールドカップ)

(a)「描けるし面白い」
(b)「描けないけど面白い」
(c)「描けるけど面白くない」
(d)「描けないし面白くない」

ごらんの通り(a)から(d)にしたがって発病者が増えていきます。
(a)というのは言い換えれば「スランプではない」どころか「売れてる」ということで、まさに漫画家ヒエラルキーの頂点にいて全国民が名前を知っているような一部の特権階級です。なので気にする必要はありません。

(b)は少数ですが必ずいます。みんなから次の作品を期待されているのに(もしくはだからこそ)描けない、というのはきっと心苦しいものなのでしょうが、他人から見れば残念度が倍増するので辛さもひとしおです。

(c)は言ってみれば漫画家の普通の状態、といいますか、多くの漫画家さんは描くたびに「また最高傑作出来ちゃった!なにこの天才っぷり」などと思わず「がんばって描いたけどまだなんとか出来たかもしれない」と考えながら締め切りに間に合わせようと作品を描いているのだと思います。

(d)ですがこれはもう論外、というかほぼ漫画家ではありません。なのでこれが一番恐ろしい状態といえるでしょう。

でも実は(b)と(d)はどちらも「描けない」つまり作品を現前させられていないという点で同じ状態で、じゃあ何が違うかというと(b)は「以前面白い作品を描いたことはあるが今は描けない」ということですが(d)は「一度も面白い作品を描いたことがない」ということなのです。そして(b)は過去に面白い作品を描いたというアドバンテージというか執行猶予がついてるために作品を描けなくてもある程度の時間的余裕がありますが、(d)の場合は一刻も早く作品を描かないと漫画家じゃなくなってしまうのですああ恐ろしい。(ワールドカップ)

つまりほとんどの人は漫画家として(a)を目指しつつ(c)の状態を脱したいと考えながら作品を描いているが、たまに面白い作品が描けたと思ってもあっと言う間に(b)の状態に陥り、その作品の評価や儲かった金額によって決められる猶予期間のうちに次の漫画を描いて首をつなげるか、いくらやっても(d)を脱することが出来ずあきらめる、という流れになり、あ、ということはそもそも漫画を描こうとしてる人は全員(c)~(d)のどれかに当てはまることになり、ということは......

漫画家はほとんどいつもスランプ!

ああなんという恐ろしい答えにたどり着いてしまったのでしょうか!

...でもちょっと待ってください、じゃあいつもスランプだっていうことは言い換えるとスランプから脱する必要が無い、ということなのではありますまいか?

(a)にいく無限へのパスポートがあるならこっちが売場を教えてほしいくらいで、そんな無茶なことを考えても時間の無駄なので、普通の人間が出来ることといえば「描けない」状態を何とか避けてせめて「面白くない」けど「描ける」状態にもっていく事しかないのです。

だからその「描けない」つうのをなんとか出来ないからスランプなんだろがいや!という声が聞こえてきますが、これは

「描く」

しか答えはありません。

ここで結局毎回言ってることですが、とにかく凡人は描かないと次に続くことは出来ません。そして「次に続けて描く」という事こそが、商業誌に作品を売っておまんまをいただく漫画家という仕事のほぼ全てなのです。
もちろん描けば何でもいいというわけではありません(これもここで何回も書いてることです)が、描きさえすればそれはふつうのスランプ状態なのですからそんなに気にしなくてもみんな同じだから大丈夫です。

いくら宝くじを当てるすばらしい理論を考えついても、宝くじを買わなければ一生当たらないのです。

......

そう、これが(c)のスランプ状態です。

全く答えになって無い上に同じ結論の使い回しです。

でも面白くなくても書(描)いた事だけは確かなのできっちり原稿料はいただきますよ!
そして次に続く!

......(カップ)


羽生生 純(ハニュニュウ ジュン)
漫画家 1970年生まれ 1992年デビュー

代表作
『アワヤケ』 『青 -オールー-』 『恋の門』
『1ページでわかるゲーム業界』 『ワガランナァー』
『サブリーズ』 『強者大劇場』


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