漫画を描いてきて良かったなぁと思う瞬間は？「漫後はまだ終わってはいないのだ...」

「漫後はまだ終わってはいないのだ...」の巻

ツヨシ！しっかりしなさい！！

え？俺タモツっすけど。

というわけでたった２行で終戦６５年目の日本の状況および若者の閉塞感とコミュニケーション不能状態を見事に要約して始まった今回の「絵答え」ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。

私は今日、田舎であった高校の同窓会に出席せずにこの原稿を書こうと思った瞬間に襲ってきた睡魔にあらがえず一日中寝てました。そんな「過去には興味無いぜ」的な無頼風味の演出をしつつ単に昔からろくにしゃべったことの無い同窓生に年取ったからって急にフランキーに話しかけるのも恥ずかしいし、「俺って東京でかっこいい漫画家やってるんですけど」的な（かなりの欺瞞情報が混じった）一番恥ずかしい意識が無意識に会話に現れたりしたらきっと猛烈にへこむと思ったので行かなかった私がお答えする質問はこちら！

【ねね】

羽生生先生こんにちは。
とてもありきたりな質問なのですが、先生にどうしても訊いてみたいことがあります。
先生が漫画を描いてきて良かったなぁ...と思う瞬間を教えてください。
暑い日が続いておりますが、お体ご自愛くださいませ。

実はこれを書きながら流し見してた『ホットファズ』が面白くてつい本気見しちゃって全くはかどらず、しかも途中まで書いたのをよく見たら以前答えた質問とかぶってたことに気付き、くやしくなって酒飲んで寝ちゃいましたので今は翌日です。

それはともかく「ご自愛ください」って聞くとつい「ちょっと部屋で一人にさせてください」と答えたくなる私ですが、漫画を描いてきてよかったことを改めて考えると...

今までオマンマを食べてこれたこと。

なんと言っても私にとって「漫画家」というのは「職業」なので、これを続けてこられた事によって日々の糧を得られたという点で他の職業と変わらぬありがたみを感じます。

それに上乗せしてですが、ありきたりな意見として

やりたかった仕事ができた

珍しがられることの優越感

有名人に会える

通勤ラッシュと無縁

あとどっかで書いたかもしれませんが

人生全てがネタ

漫画を描く＝何かを表現するということは、たとえ自分の脳内だけにある架空の世界の物語だとしてもその物語が入ってる脳味噌を載っけてるのが現実世界で生きてる体にある以上現実の自分の行動がなんらかの形で必ず関わってきます。
だから現実で見たこと、聞いたこと、感じたこと全てがなんらかの形で作品に影響を与えてるという事で、結果的に暮らしの全てが必要経費、という理屈が本来なら成り立つ訳ですよ税務署の方から来たみなさん！（もちろん現実はそんなにうまくいきませんが）

とまあ良い事もいろいろありますが、それだけでは終わらないのが世の常でして、辛い面もそれなりにあるのです。

それなりのオマンマしか食べられない

これは単純に自分の作品が売れれば問題ないことですが、そうは現実の問屋さんが許しません。
一般会社員のような福利厚生は全くありませんし、おおまかに言えばその日ぐらしのアリエール・イオンパワージェル使いです。

それに上乗せするかたちで

やりたい事しかしていないので容易に追いつめられる

頭を切り替えて趣味でリフレッシュ出来てる作家さんももちろんたくさんいるでしょうが、できない作家は簡単に追いつめられます。

少数派ゆえの疎外感

将来の計画も立ちませんし休日もバラバラで多くの家庭と生活パターンや環境が違うので社会的に孤立しがちです。

有名人に会える意味が無い

有名人と同じくらい有名で社交的な作家さんなら交友関係を持ったり出来るのでしょうが、そもそも人付き合いが苦手だから個人営業の仕事を選んだのであって、いくら仕事で有名人に会っても「会った」という事実だけで、そんなの普通にイベントとかに通ってる人だったら同じくらい会う機会があるわけで、中途半端に「会った」という事実だけが残ってそれが他者への優越感となり単に自慢するだけのイヤなやつに成り下がるのです。

常に家にいる・家にしかいない

自分のせいでビッチリ仕事が詰まってしまうとどこにも行けません。もう逃げ場はどこにもない！

しまいには

人生の切り売り

売れるためなら身内も売るよ！せっぱ詰まって身内や自分の醜態をさらし、ネタで描いた事も事実と思い込まれ、ちょっとネット社会の住人の気に障るような事を描けばあること無いこと電子便所落書きとして噂をばらまかれる！

......こんなことばっかり普段考えてるから同窓会なんて場所には行けないわけですよ！！

こんな有様になっても漫画家になりたいと思った人はなってもかまわないけどこんなのヤダと思った人は漫画家になんかなるのやめて普通の会社に入って趣味で漫画描いてください！
これ以上才能を持ち込んで私の少ないパイを食べ尽くさないで！
お願いします！
けんかをやめて！ふたりをとめて！
わたし勝った方のお嫁さんになるから！
そしてもうテレビで大家族の番組を放送しないで！
あとはじめてのおつかいも！
誰か私がなにを言ってるか教えて！！！

「お答えしよう」

「え？あなたは？」

「とんでもないわたしゃ神様だよ」

「うるさい！とっとと教えて！」

「...おまえが言いたかったのは『"羽生生純・夏の３冊同時パン祭り"と今勝手に名づけてエンターブレイン「コミックビーム」で連載していた『千九人童子ノ件』、小学館「月刊！スピリッツ」で連載中の『ピペドン』、角川書店「ガンダムエース」で連載していた『俺は生ガンダム』が８月の２５くらいから３０くらいのあたりで同時にモヤーンと発売される』ということじゃないのか？」

「そうですその通りです！」

「しかも『８月２５日にいろんな漫画家さんがやってるバンドの曲を集めたコンピレーションアルバム『漫画家バンド大戦』というＣＤに「キンジョリーナ・セピア」というバンドの「恋するラブ・ジュテーム」という曲で参加してる』ということも言おうとしてたのじゃなかったかね？」

「ああ他人が言ってくれると恥ずかしさが半減するなあ」

「きっとマンガナビの中の人がそれぞれのアマゾンとかのリンクを張ってくれるだろうから安心せよ」

「ですって！」

...この寂しさと恥ずかしさ...

ということで"羽生生純・夏の３冊同時パン祭り"だそうです

千九人童子ノ件
2010/8/25発売予定
『恋の門』の異才が放つ、衝撃の変調伝奇ロマン！
小学館・角川書店・エンターブレイン合同、異能の傑物・羽生生純祭り、開催！
夢に破れて都落ちした漫画家が、故郷で出逢った「もの」とは...。これは「ホラー」か、それとも「私漫画」か？異才が挑む、新境地にして、圧倒的本領！驚愕と衝撃の変調伝奇ロマン！（Amazon.co.jpより）

ピペドン (1)
2010/8/30発売予定

俺は生ガンダム
2010/8/26発売予定
ジ・オリジン安彦良和爆笑！羽生生純が描く異色ガンダムギャグマンガ（Amazon.co.jpより）

漫画家バンド大戦
2010/8/25発売予定
有名漫画家達のバンドによる傑作！
推薦文 杉作Ｊ太郎
漫画家が音楽やっちゃいけねえって誰が決めたんだ。俺たちは生まれたときから漫画家だったわけじゃねえ。食うために漫画家になったのさ。
そりゃあ最初のうちは描きたいこともあったさ。好きで飛び込んだ世界だからと無我夢中、がむしゃらだった。だが気付いたらペンを持つ手の感触が、なんか、なんか違うん だ。言葉でうまく言えりゃ世話ねえよ。恥ずかしい話、いい漫画描けるならってなんもかも犠牲にしたさ。人間関係はズタボロ、ろくな死に方もできそうにねえ。正直、もうこの世に未練も糞もねえよ。
そんなとき、ペンを楽器に、マイクに持ちかえてみたら、こんな俺でもまだなにかやれるんじゃないかって思っち まったんだ。こんな俺でもまだなにかを伝えようと、つながっていようとしてるんだって。間違ってるのかもしれねえ。いや、間違っててもいい。こうしていればまだ俺も生きていけるなって。ただそれだけのことなんだよ。（Amazon.co.jpより）

羽生生 純（ハニュニュウ ジュン）
漫画家　１９７０年生まれ　１９９２年デビュー

代表作
『アワヤケ』　『青 －オールー－』　『恋の門』
『１ページでわかるゲーム業界』　『ワガランナァー』
『サブリーズ』　『強者大劇場』

本コンテンツは引用部分を除きマンガナビが独自に制作しています。出版関係・他の事業者(広告主)がコンテンツ内容・ランキングの決定に関与することはありません。。スポンサー等の依頼による広告にはプロモーションを表記します。また本コンテンツはEC・ASPサイト等から送客手数料を受領しています。詳細はマンガナビについて-制作・運営ポリシーを御覧ください。

<<　羽生生純の「漫画について答えよう」<<　一覧へ戻る