羽生生純の「漫画について答えよう」

キャラクターの年齢の違いの描き方が苦手「セクシーランジェリーは電子漫画の夢を見るか?」

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「セクシーランジェリーは電子漫画の夢を見るか?」の巻

いやー買っちゃいましたよiPad!
実は発表当時から「露出度の高い服装をしているヤング女性の方を実際は指差し確認したいほどの気持ちを抑えて全く興味ない風を装いつつチラ見する」気分で狙っていたのですが、「あの娘好みのタイプじゃなかったらどうしよう」とか「若すぎてコミュニケーション不能だったらどうしよう」とか「実は男だったらどうしよう」とか「でも男でも好みのタイプだったらどうしよう」とか色々な感情が沸き起こってきて、でも結局意気地なしなんです俺。
欲望の発露に伴う責任を負うのが怖かっただけなんです。
声をかけさえすればお付き合いすることが出来たかもしれないのに。
あのひとことが言いたくて...でも言えなくて、夏.................................
私は何を言っているんでしょうか。

そんなこんなで放置していたのですが、先日仕事関係の方が利用してるのを見て「あ大丈夫なんだ」「ぼったくりじゃないんだ」「ちょっと高級だけど美人ぞろいで良心的なお店なんだ」......と思い直し、ついに買ったわけです。
もちろんiPadを!

...で何をしてるかというと喜び勇んで無料エロiPadアプリを指差し確認しようと探しまくったけど検閲されてて全然見つからず、「Victoria's Secret」とかいうのを落としたらすんでのところでセクシーランジェリーを買わされそうになっただけです!!

【マナちゃん】

はじめまして。
羽生生先生にアドバイスいただければと思い、投稿しました。
私はキャラクターの年齢の違いの描き方が苦手でして、子供、青年、老人と描くのは問題ないのですが、例えば学生の先輩・後輩、会社での上司・部下など年齢の近い人の違いというのはどうやって表現すれば良いのでしょうか。
ぜひアドバイスをお願いいたします!

漫画のキャラクターの顔というのはちょっと考えると現実の人間の顔のように無限のバリエーションがあるような気がして「そんなの描き分けられるか!」と思ってしまいます。
そしてそれは正しい見解です。もちろん無限に描き分けられる人なんかいません。
そもそも漫画の顔は人間の模写ではありません。なので無限のバリエーションなんか描き分ける必要が無いのです。

では一番簡単な方法は何かというと、Wiiとかのゲームでよくある「何種類かのパーツの組み合わせでバリエーションを作る」というものです。

目・鼻・口・耳・輪郭・髪・装飾品...くらいの項目で自分の好きな絵(描ける絵)のパーツをそろえて組み合わせればすぐにいろんな人の出来上がりです。
その際それぞれのパーツが多ければ多いほど組み合わせが増えるのは当然です。
パーツを年齢ごと(子供・青年・大人・老人くらい)に分けておけば安心!あっという間にお描き分けェーッ!!

......

ですが。

ですが!

実はここから先がようやく「漫画」の話になるのです。

このやり方ならそれこそゲームのように自分や有名人に似てるキャラクターがいくらでも出来るでしょうが、肝心なのはそのキャラクターが物語の中で

「使えるか」

という点なのです。

もっと言うとそのキャラクターが「その世界観の中でどう動くのか」、それによって必要なキャラクターの顔も絞られてくるのです。

これは決まったパターンがあるようでいて実は流行によって流動的に変遷があったりして一概には言えないのですが、例えば主人公を考える場合

〇男・女・両性具有
〇年齢
〇身長
〇体重
〇へテロ・ホモ・バイセクシャル
〇身体欠損部分の有無
〇服の好み
〇癖
〇生い立ち
等......

いくつもの要素の項目から組み立てた「自分が語りたいお話」の主人公に合致する「顔」を選ぶわけです。
「眉毛が太ければ意志の強さが表せる」、というのはちょっと古臭い選択肢かも知れませんし、自分の好みで細い眉毛にしてしまいライバルの二枚目との区別がつかなくなっちゃった、という場合もありますが、どっちもスッキリしてたほうがマッチするお話もあります。
「立派な眉してるくせに情け無い性格、しかもセクシーランジェリー着用」というパターンも有り得ます(セクシーランジェリー言いたいだけ)。

もしそのキャラクターが金田一耕介みたいに「頭をかきむしる癖」の描写が必要なキャラクターだった場合、スキンヘッドより毛量の多いキャラクターの方が役に立ちます。
でももちろんこれが正解ということではなく、「スキンヘッドの頭をかきむしって血が滲む」というシーンが必要な場合はモジャモジャだとめんどくさかったりします。

要するに「「自分が語りたいお話」の「このシーン」に必要な条件を満たしたデザイン」というのが大切なのです。

もちろん脇役だったら必要とされる条件は絞られるのでもっと簡単だと思いますが、いずれにせよ大切なのは

「その作品世界内でかぶらない」

ということで、目の形が同じキャラクターでもほくろをつけるだけで区別できれば「その作品内では」別人として認識されます。

手塚治虫はひとつの作品のキャラクターのバリエーションはきちんと描き分けられていますが、ほかの作品には同じ顔のキャラクターが山ほど出ています。
でも読む人は「スターシステム」だ、役者が役を演じ分けるように同じキャラが違う役をやっているのだ、と認識して物語に入り込めるのです。

なので「その作品内」で描き分けられていれば問題ないのです。あなたが「ひとりの男の子に6721人の同級生女子が付きまとう」とかいうお話を描きたいのであればそれなりの覚悟が必要でしょうが、団塊ジュニアのおっさんが10人くらい(この数字も雰囲気で確証はありません)が出てくる程度であれば、パーツの組み合わせと内容に沿ったキャラクターの描き分けは出来る範囲だと思います。
というかそれが不可能(不必要)ならばキャラクターを減らして成立するお話を描けば良いだけです。

しかし全く逆のやり方もあって、自分の好きな絵をとにかく描いて、たとえそれが全員同じ顔にしか見えなくてもそこにお話を当てはめていく、という方法もありますが、これはよほど物語に自信がある人でなければ避けたほうが賢明です。

まあ逆に言えばちょっとでもキャラクターに物語的な特徴があれば似てても同じにしか見えなくても面白い漫画は描けるのです(実際そういう大ヒット漫画はたくさんありますし)。

ちなみに言ってる本人はここまでシステマティックに出来たためしは無くて、だいたいその都度考えながら描いています。

...と今まとめに入ろうと思ったらもうひとつ見逃せない質問が目に入っちゃいました!

【in IT】

デジタル環境でマンガを描いている羽生生先生に是非お聞きしたいことがあります。
「電子書籍元年」といった言葉が流行っており、電子書籍サービスが続々と生まれています。
また、同時にデジタル環境で作画されているマンガ家さんの中には出版社を通さず作品を配信・流通される方も現れてきています。
そんな昨今の電子書籍出版について羽生生先生は如何お考えでしょうか?
作品性であったり、商売的に何か影響があったりするのでしょうか?
非常に大味な質問ではありますが、忌憚のないご意見をお聞きできればと思います。

これはなんと「マンガナビ」の中の人からの質問です!
ここはiPadでセクシーランジェリーを買いそうになったマイコンジョッキーのこの私が答えねばなりますますまい!

デジタルは無限...「のように」一見感じられます。
デジタルで漫画を描きそのまま個人でネット配信して利益を上げる、という仕組みが出来る「可能性」を孕んではいます。

でも実はこれは「売る側」の問題であり、「描く側」にはあまり関係ないことなのです。

「紙」と「電子」...まるで二元論のように語られがちですが、私の考えでは単なる作品の発表「媒体」であり、(現時点では)選択肢の問題でしかありません。

iPad程度の性能があれば(いくつかの不満はあるものの)電子書籍として漫画を商品にすることは可能だと思いますし、実際もうその動きは沢山現われています。

一方、いくら雑誌の売り上げが右肩下がりであるとしても相変わらず何百万部も売れる漫画は(まだ少なくとも)あるわけですし、「紙媒体」があっという間に消えるということは無いと思います(もちろん永遠にあるとは思いませんが)。

でも漫画家にとってはどちらも単なる発表媒体なわけで、選択肢が増えただけであり、紙の原稿はスキャンすれば簡単でデジタル化できるしその逆もまたしかりで、描かれる内容には(ほとんど)影響はありません。
もちろんその媒体に適した描き方、というものはあると思いますが、それはGペンで描くかミリペンで描くか、右開きか左開きか、縦書きか横書きか、ケータイ用に再編集やエフェクトを加えるのかそのままか、という「描く方法」の問題なだけで、「内容」は単純に

「読んでもらえるかどうか」

しか無いのです。

売る方を考えた場合、デジタル化によって出版業界が更なる打撃を受けるかのような印象を持ってしまいがちですが、これは今までが「配給制」的なほぼひとつの販売方法しかなかった漫画が、漫画家が産地直送で消費者にお届けする田舎の野菜直売所のようなやりかたも出来るようになる、というだけのような気がします。

もちろんその中には佐藤秀峰さんのような「超有名個人直売所」のようなお店も出来るでしょうが、それは「紙媒体でミリオンセラーを出したための有名性」を利用した電子媒体での商売であり、誰でも真似できることではありません。

もし漫画家個人での商売がが可能だとしても、飛行機で世界へ旅に出るにはハブ空港があったほうが便利なように、電脳空間での効率的な情報流通にはハブ電脳が必要なように(『攻殻機動隊』の受け売り)、商売には「市場」が必要です。
漠然と道端で売ってもなかなか売れるもんではないので、いきおい多くの店が集まる「市場」で売ることが必要になります。

私は今後電子書籍の商売で出版社が、ひいては雑誌がその「市場」というか「商店街」とその「商工会」のような役割を果たしてくれれば良いのになあ、と思ったりしています。

あまり無法な市場ではそれ自体が廃れてしまうし、今までの「配給所」のような規制をかけていたら出店者からの反発があるでしょうから、理想としてはある程度大きな何本かの目抜き通りに有名店が並び、ちょっと路地裏を入るとバリエーション豊かで味のある飲み屋街があったりして、ちょっと車を飛ばせば観光地的なそこでしか買えないものがあって、もし変な奴がうろついてたり面倒な揉め事があったら昔ながらの地元のヤクザ的な人(あ警察でも同じか)がキュッと締めてくれたり...

ってまた脱線してしまいましたが、とにかく個人で売りたい人は売る、専門店に販売を任せたい人は任せる、という形が出来れば良いなあと思っているのですが、でもこれはあくまで「売る側」のインフラの問題で、「描く内容」は「描く側」の問題、なのだと思います。もちろんデバイスの普及率や利便性も重要ですがそれこそ漫画家がどうこうできるレベルの話ではありませんし、もし電子デバイスがこの世から消えたら次善の媒体で描くだけですし、紙が無くなったとしても同じことです。

ある作家さんが仰っていましたが、

「どんな場所でも描く人はいるし、描こうと思えばどこでも描ける」

のです。

...よーしこれでこっそり買ったiPadをしっかり仕事に利用したのでセクシー言い訳をせずに済むぞ!

じゃあ堂々と電子セクシー漫画を購入だーッ!!

...すいません見栄張ってました...本当はまだ読んでない『オールドボーイ』のまとめ買いです......


羽生生 純(ハニュニュウ ジュン)
漫画家 1970年生まれ 1992年デビュー

代表作
『アワヤケ』 『青 -オールー-』 『恋の門』
『1ページでわかるゲーム業界』 『ワガランナァー』
『サブリーズ』 『強者大劇場』



※漫画業界のリリースニュースお待ちしてます。こちらから


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