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ケータイコミックのお仕事-出版社のデジタルサポート-DGモバイル取締役ゼネラル・マネージャー杉建一

掲載日:2007.08.06

DGモバイル取締役ゼネラル・マネージャー 杉建一

第3回 ケータイコミックのお仕事

学生や社会人が電車の中でケータイコミックを読む風景がふつうになってきた今、3G携帯電話の普及にともない飛躍的な伸びをみせるケータイコミック市場が熱く注目されています。
マンガのお仕事インタビュー第2回は「ケータイコミックのお仕事」紹介というテーマでケータイコミック市場黎明期から現在まで、一貫して出版社のケータイサイト運営や技術支援・コンサルティングなどモバイル分野での情報提供や新サービス提供を手がける(株)DGモバイルの取締役ゼネラル・マネージャーの杉建一さんにお話を伺いました。

DGモバイル取締役ゼネラル・マネージャー杉建一
大学卒業後に海外留学後、三井物産(株)入社。
情報産業本部にてソリューション営業、ベンチャー企業立ち上げに従事した後、平成14年11月(株)デジタルガレージに入社し、一貫して新規ネットビジネスの立ち上げに関わるコンサルティング・営業を行う。
平成15年2月、(株)DGモバイル立ち上げの為、プロジェクト・マネージャーに就任。
平成18年8月、(株)当社取締役 ゼネラル・マネージャーに就任(現任)。

「ケータイコミック」のお仕事に携わるようになったきっかけ

――「ケータイコミック」のお仕事に携わるようになったきっかけや経緯を教えてください。

私はもともとベンチャー企業や商社での経験を通じて、さまざまな事業の立ち上げのような仕事をやっていたのですが、以前からエンターテイメントというものにも興味があったんですね。このエンターテイメントを支えているオタクマーケットという大きなマーケットは無視できないし、その中核にあるのはやはりマンガだろうと。
デジタルガレージというインターネット系のIT企業で働いていたときに、これからの携帯電話は第3世代携帯(3G携帯)が普及していくだろうということで、2004年にモバイルビジネス専門の会社を子会社として立ち上げることになりました。
今後は、第3世代携帯向けのコンテンツを開発していこうと思いまして。
この会社で、最初は動画コンテンツなどを手がけていたのですが、セルシスさんという携帯コミックビューワの技術をもつ会社さんと提携して、コミック専用ビューワー「コミックサーフィン」の販売代理店をするようになったんですね。
それで、マンガを作っている出版社さんにこれを使って携帯電話上でマンガが読めるサイトを作りませんか?とコミックサーフィンの営業活動をしていました。そこで私もデジタルガレージからこっちの会社に出向しましてね。当時はわずか3名ぐらいのちっちゃな会社でしたよ。

――2004年当時、「ケータイコミック」が登場したとき、周囲の反応はどうでしたか?

当時はケータイでコミックを出す出版社もサイトを運営する会社もなかったので、新しいコミック専用のビューワーで実際にマンガがどう見えるのか、ということを出版社さんに一から説明するところからはじめました。ただ、最初は「デジタルで読む」という行為自体が普及していませんでしたし、マンガを携帯で読むようなユーザーが果たしているのか?という疑問の声ももちろんあったりして理解を得るのはなかなか難しかったですよね。
それでもなんとか、「携帯でマンガが読める時代になったんだね」というところまでもっていきましたけど、なかなか実際にマンガが携帯に配信されるところまでいかなくて。

――出版という世界で新しいサービスの理解を得るのは難しいですよね。

ええ。それじゃぁ、出すところから運営・配信するところまでの全てを担うソリューション企業になろう、ということで書き下ろしのオリジナルマンガを自社で募って配信したりといったことも当初は行う必要がありました。
そうこうしてるうちに、「うちのマンガを出しましょう」とおっしゃっていただける出版社さんが出てきまして、紙のマンガを携帯用にスキャンしてオーサリングするところから、コミックサイトを運営するお手伝いまでするようになりましたね。その後、幻冬舎さんとか白泉社さんとか石ノ森プロダクションさんなどにご協力いただいてコミックサイトを次々と立ち上げていきました。
また、マンガジャパンさんやデジタルマンガ協会、日本マンガ家協会にも賛助会員にならせていただくことでマンガ文化についてもいろいろ勉強しましたね。

――いまはすっかりケータイでマンガを読むという行為も普及しましたね。

そうですね。サイトもずいぶん増えました。弊社でもこれまで合計40(公式サイト35、非公式サイト5)のケータイコミックサイト運営に携わりましたね。

※編集部注:既存のコミック市場が低迷する中、21世紀生まれの市場であるケータイコミック市場の売上は、2006年度に約23億円を突破。
サイト数も100を超え、ここ数年で飛躍的な伸びを示している。
出典:電子コミックビジネス調査報告書2006

――今、ケータイコミックではどんなマンガのニーズが高いんですか?

ひとつ言えるのは、一般の書店ではなかなか買いづらいマンガが売れるということでしょうか。ボーイズラブとかオトナの恋愛系、ハーレクインコミックなどが代表的ですね。いま、どこのサイトでもすごく売れてるのは「M-エム-」という作品です。
あとは、一般の書店ではもう置いていないような過去の名作もニーズが高いと思います。

――過去の名作は爆発的に売れるわけではないですが、固定客がいて着実なニーズがありますよね。

ええ。じつは、今まで10代~20代中心に若者しか読まないと思われていたケータイコミックですが、40代の読者が増えてきたというようなデータもあるんですよ。若者の動きにその上の世代がやっと追いついた感があります。

――WEBコミックでは、若年層よりもむしろ30代~40代の男性が古い名作やジャンプ黄金時代の作品を読むというニーズが高いのでケータイもどんどん近づいていくというか親しむ世代が広がっていくのかもしれませんね。そんな中で、今後はどのような方向を目指しているんですか?

電子書籍市場が大きくなるにつれて、携帯でいかにマンガを読ませるかというビジネスから次第に、配信プラットフォームを開発して提供するというビジネスに事業内容も変わってきました。
最近は、培ったノウハウを統合してモブリーフという新しいケータイコミックプラットフォームを開発し、出版社さんがサイト立ち上げをスムーズにはじめられるよう支援をしています。ケータイコミックの編集・売上管理・広告媒体管理を一貫してできるプラットフォームですね。そして新しいプラットフォームが開発されるとユーザーの集客も進んでいくので新しいニーズも生まれてくるんですよ。例えば、まずは立ち読みだけしたいというニーズや、作品が増えてきたので、どこのサイトでなにを読めるのか知りたいという検索ニーズとか。
市場の伸びにともなって弊社も今後は、出版社さんのブランディング支援とコンサルティングに力を入れていく方向になりつつあります。いまはナイショですがマンガ読者の方に新しい、自由な空間を提供できるようなサービスの準備もしています。

ケータイコミックで力を入れて読者に届けていきたい作品

――将来的にケータイコミックで力を入れて読者に届けていきたい作品はどういったものですか?

う~ん。どの作品とかどのジャンルというのはないですが、作家さんが描きたいものが売れるのが一番ですよね。個人的にはストーリー性のある名作を届けていきたいですね。歴史物で「三国志」とか「水滸伝」とか。
最近はどんどん街の本屋が少なくなってきて、CVSでもマンガがそんなに置いていなかったりするとマンガと読者の出会い、接点がどんどん少なくなってきてますよね。じゃぁ、パソコンがどうかというと10代のPC離れもおきつつあります。

――ケータイの巨大SNS「モバゲータウン」のユーザーの8割近くがパソコンをやっていないそうですしね。

そうですね。若者の既存メディア離れの傾向がどんどんと強まっていきそうですが、そんな状況の中でケータイという新しいメディアがマンガと読者との新しい接点になればいいなと思います。

――最後に、むかし好きだったマンガをお聞きします。

学生時代にちょっと柔道をかじっていたので『YAWARA!』ですかね。スポ根モノというかヒューマンな成長物語が好きでした。あとは「沈黙の艦隊」とか「課長島耕作」とか。
そういえば、うちの会社にも他国籍のスタッフや海外の会社の方が出入りしているんですが、
最初は日本のサラリーマンライフがうまく理解できないらしいです。「なんだって日本のサラリーマンはいつも会社の中にいるんだ?」って(笑)。

――まぁ、それがふつうですよね。読み手や描き手だけではなく、売り手というかサービスの作り手の世界でも国際化が進んでますしね。

そんなときは「課長島耕作」を読んでもらえれば1発ですよ。これを読めば、日本のサラリーマンライフがよくわかると思います。とにかく、日本のことを深く知ってもらうには、映画とかアニメよりマンガが一番ですね。

DGモバイル会社概要 https://www.dgmobile.co.jp/index.html
ブロードバンド関連事業や電子商取引事業などを展開する(株)デジタル・ガレージが、第三世代(3G)携帯電話向け事業を推進するための戦略子会社として2004年に設立。急成長する携帯向け電子書籍・コミック配信サービスのタイトルを広くカバーする「モバイル・コンテンツ事業」を開始する。
現在は、コンテンツ提供プラットフォームの企画開発から提供、 コンテンツ企画開発、制作編集、コーディネートまで、ケータイコミックをはじめとするモバイルコンテンツ市場を拡大させるためのトータルな仕組みを出版社などのコンテンツホルダーに提供している。

編集後記

ケータイコミック市場の黎明期から現在までをみてきた「ケータイコミック」の先駆けともいえる杉さん。元大手商社マンだった杉さんが世界の大きなフィールドからケータイコミックの小さな画面へとフィールドを移した当時、取引先もビジネスマン相手から出版界・マンガ界に変わるなどいろんな意味でカルチャーショックがあったそうです。
島耕作は家電ビジネスでもまれる中で課長から取締役になりましたが、杉さんもケータイコミックビジネスにおける島耕作のような存在といえるかもしれません。


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