マンガ大賞を主催するお仕事-スポーツマンガ好きのための情報サイト[スポマ]臼井英明代表
掲載日:2007.10.19
(株)スポマ 臼井英明代表
マンガ大賞を主催するお仕事
スポーツの秋ということで、全国各地のスポーツイベントやスポーツ関連ニュースの報道が増えてきた昨今ですが、今年の9月にスポーツを題材とした未発表のオリジナル作品を対象としたマンガ公募企画『日本スポーツ漫画大賞』が発表されました。
当大賞の主催とともに、スポーツマンガ好きのための情報サイトというユニークなサイトSPOMA.jpを運営されている(株)スポマの臼井代表にお話を伺いました。
臼井英明
1967年12月 東京生まれ。
1991年 3月 明治大学工学部卒業。
1991年 4月 泉証券株式会社(現SMBCフレンド証券)入社。
2000年 4月 株式会社アイシーピー入社。
2000年10月 株式会社アイサポート代表取締役社長就任
2001年 5月 株式会社ユーブック代表取締役社長就任
2007年 5月 株式会社スポマ設立 代表取締役就任。
同年、スポーツ漫画情報サイトSPOMA.jpを開始。
事業内容
■スポーツ漫画好きな人のためのサイト「SPOMA.jp」の運営
SPOMA.jp
■漫画家アシスタントさんの求職応援サイト「SPOMAマッチング」の制作
SPOMAマッチング
スポマ=世界共通語「スポーツ」×「マンガ」
――スポーツマンガ情報サイトおよび「日本スポーツ漫画大賞」というスポーツ専門の企画を始めた理由を教えてください。
まあ、スポーツも漫画も「好きだから」というのが大きな理由のひとつです(笑)。あと、それを世界中の人と共有していきたいと思っているんですよね。
スポーツというのは世界共通の言語ですよね。スポーツの世界はルールがひとつでとてもわかりやすいので人種・言語・世代を問わず楽しむことができる、人類共通の言語なのではないかと思っています。
また漫画は、国境や時代を越えて人々を楽しませ、感動を与え、時に勇気を与える、そうした力を持ったコンテンツですよね。このSPOMA.jpを通じて、世界中の人々が老若男女問わず、スポーツ×漫画の世界を共に楽しみ、語り合えるような環境づくりをしていきたいなと思ったんですね。
――世界共通の言語である「スポーツ」×「マンガ」ということで『スポマ』というサイト名になったということですね。
ええ。まずはこのスポーツマンガというジャンルに絞って情報サイトを立ち上げました。同時並行的にマンガ出版やマンガ制作支援に関わることについてもいろいろやっていきたいなと考えています。
ただ、私自身もマンガファンでありビジネスとして業界の研究は重ねてはいますが、マンガの制作現場のことは正直よく分からないんです。ですから、まずはマンガの描き手さんやマンガ業界の方々などいろんな方のご意見を聞いたりユーザーと対話を重ねたりしながらサイトを運営していきたいと思っています。日本スポーツ漫画大賞を設立しました理由の中に、まずは賞の応募者の方々を通じて業界を理解し、意見交換していきたいという想いもあるんですよ。
――「スポーツ漫画大賞」の主催もその一環だということですが、この賞に対するマンガ界や外部からの反応はいかがですか?
実は、立ち上げたばかりでスタッフの人数も少ないですから、このスポマサイト上での告知やチラシの配布以外のPRをほとんどやっていないんですね(笑)。
――きっとそうじゃないかな、と思って今回、マンガ公募ニュースの特集インタビューに伺いました(笑)。
応募対象の描き手の方の反応はどうですか?
先々月のコミケでチラシを配ったんですが、コミケに集まる描き手の中からは「ほんとに大賞出るの?」なんていう質問もありました。
――実際にメジャーな出版社では、賞金額を発表するだけで大賞を出さないところもけっこうあるみたいですよね。そういう意味では、スポーツ漫画大賞というWEBサイト主催の一企画としては賞金1,000万円という金額はほんとに出るのかな?と書き手は感じるのかもしれませんね。
1,000万円という金額は、賞の賞金としては大きい金額だと思いますが、多くの出版社さんは賞の賞金だけでなく、発掘活動、育成、編集、プロモーションなど様々な面で費用をかけ、努力されています。私たちの目には見えてこないトータルの費用としてはかなりの金額になると思うんですよね。そうした事情を考慮すると、1,000万円という賞金は高額すぎるということはなくて、妥当な金額なんじゃないかなと考えています。
それに「大賞」というからには、マンガ界のドラフト1位とかMVPみたいなものじゃないですか。そういう意味でも夢のある金額に設定して、プロ・アマ問わず応募していただき、力のある作品を輩出していきたいですよね。当社としては出来る限り大賞、優秀賞、準優秀賞といった賞の入賞者が出て欲しいと思っています。入賞者が出ること自体が当社の絶好のPRにもなると思いますし(笑)。
――「日本スポーツ漫画大賞」は、スポーツを題材とした未発表のオリジナル作品を公募しているそうですが、どのスポーツがメインターゲットというのはありますか?もしくは今後、サイト上で情報収集に力を入れていくスポーツ漫画のジャンルというのはありますか?
特に絞ってはいないですね。マスコミであまり取り上げられなかったり競技人口が少なかったりするスポーツでも平等に取り上げていきたいと考えています。
その昔、バスケ漫画は人気が取れないと言われていましたが、『スラムダンク』の大ヒットでそんなことは言われなくなりましたし、バスケの競技人口も広がりました。サッカー漫画もジャンルとしては取り上げにくいといわれていましたが、『キャプテン翼』のヒットで世界中に読者が広がりましたよね。
――『アイシールド21』のヒットで高校生のアメフト競技人口がか相当増えたという最近の例もありますね。
そうですよね。特に若いひとにとってはマンガの存在って大きいですよね。
私は中学生のころテニス部に所属していたんですが、『エースを狙え』などテニス漫画が大ヒットした影響で、テニス部への入部希望者が押し寄せて部員が男女合わせて120人に膨らんでしまったんですよ。当時、テニスコートが2面しかなくて困ってしまった記憶があります(笑)。
若年層の競技人口自体を増やした、時代を代表するスポーツマンガ
――それと、スポーツというジャンルは親しみやすいというか創作面でとっかかりやすいイメージがありますね。総合スポーツ雑誌「Number」で実施しているスポーツエッセイ公募のように、多くの描き手が応募するようなマンガ賞へと大きく広がればいいですね。
ええ。『江夏の21球』をはじめとする数々の名作エッセイが生まれた「Number」のような流れになればなぁと。該当スポーツに対する専門的な知識や取材が必要だったりして、しっかりした物語を創るのはかなりハードルが高い部分もありますが、今後に期待したいですね。当社は広くスポーツ人脈を持っていますので、賞に応募される方からリクエストがあれば、作品を描く前に取材面等のサポートもしていきます。
マンガの求職マッチングサービスへ
――スポマサイトに続いて、漫画家アシスタントさんの求人応援サイト「SPOMAマッチング」を開始されましたね。どうやって求人情報を集めているんですか?
出版社や漫画家さん一軒一軒に対し、訪問やメール・電話でのやりとりをして情報を集めています。これはかなり大変です(笑)。
――この求職サービスを始めてみてわかったことや気付いたことはありますか?
マンガの編集・制作の現場は、作業量やスケジュールなど含めすごく過酷な環境ですよね。
時間と闘う厳しい現場なので、ちょっとしたアシスタントさんの募集をかけても掲載されて応募が来るまで時間がかかったり、現場で実際求められているものと応募者のスキルややりたいことの方向性がかみあわなかったり。
――それは大学の各種マンガ関連学科の取材でも学校の先生方がおっしゃっていました。
あと、スキルがマッチングできても給料面で専業では食っていけないなどいろんな問題がありますよね。
ええ。スキルの問題や人的環境という大きく二つの問題がありますね。
ですから、募集者側・応募者側双方の間に当サービスが入ることで双方の事情によるミスマッチを防いだり、環境の改善に少しでもお役にたてればと考えています。
アシスタントさんの給料面などについても、努力無しに時給が簡単に上がるようなことは難しいと思いますが、空いている時間を効率よく臨時の仕事で埋められれば全体の収入は増えますよね。
――今後のスポマさんの将来構想を聞かせてください。
スポーツマンガに限ったことではないんですが、マンガが国内の出版不況の影響でだんだん世に出づらくなってきたという背景がありますよね。
ただし、日本のマーケットが縮小しても、例えば海外の読者に読んでもらうことができれば採算ラインに乗る、そういったマンガもあると思うんです。先ほど申し上げたとおり、スポーツは国際的にルールが共通のものがほとんどです。スポーツマンガは輸出に向いていると思うんですよ。
――日本では野球やサッカーをはじめ、いろんな意味で話題の相撲などマスコミの取り上げ方がメジャースポーツ寄りに偏向してますよね。そういう意味でも、日本ではマイナーな存在とされがちなスポーツでも、世界的には多くの競技人口や愛好家がいたりするので潜在ニーズは十分ありそうですよね。
単純に、潜在読者の母数となる国家の人口だけで考えると日本人は約1.2億人。世界全体で60億人の人口がいますので、現在の50倍の潜在マーケットがあります。読者のエリアやマーケットを世界に広げていけば、今まで埋もれてしまっていたスポーツマンガが陽の目を見るんじゃないかと思っています。
――日本の場合、総人口の約4割の5,000万人がマンガ読者だと言われています。日本は人口におけるマンガ読者率は異常に高いですが、世界人口の1割ぐらいが日本のマンガを読むようになる時代が来たら、今の12倍の6億人がスポーツマンガの潜在読者になりますね。
今後は、マンガに関する新刊情報や求人情報といった情報サービスに加え、既存のモデルだけでは出版できないようなオリジナルマンガを制作・配信するモデルを構築することで、スポーツコンテンツのロングテール化を担っていくようなサービスをしていきたいですね。
ただ、先ほどから申し上げている通り、マンガの現場のことは全然分からないんです。マンガ家さん一人一人、アシスタントさん一人一人によっても、進みたい方向性も様々だと思いますし。そうした中で、あくまでもマンガの書き手やマンガ業界の方々などいろんな方のご意見を聞いたりユーザーと対話したりしながらより良い情報インフラやマンガマーケットを手探りでみなさんといっしょに創っていきたいなと考えています。
編集後記
スポーツ漫画やスポーツ雑誌や自転車(!)が置かれているなどスポーツ感覚あふれるオフィスでのご挨拶。SPOMAというよりSMAPという言葉が似合いそうな臼井さんはその爽やかなルックスどおり、休日はサイクリングやバスケを楽しむスポーツマンでした。
そして、愛する息子さんの名前を『スラムダンク』の登場人物、流川にちなんで、楓(カエデ)と命名したほどのコアなマンガ好きでもあるとのこと。
マンガ業界には爽やかなスポーツマンが少ない印象がありますが、臼井さんがその爽やかなルックスとともにマンガ界に爽やかな新しい風を吹かせてくれそうです。
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