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マンガ全巻専門書店の元祖「漫画全巻ドットコム」というお仕事-その1-本業にすればこの何倍も売れるんじゃないかと

掲載日:2009.11.10

本業にすればこの何倍も売れるんじゃないか

50巻を超える『ONE PIECE』も、150巻を超える『ゴルゴ13』も、全巻まとめて宅配してくれる、マンガ全巻専門書店の元祖「漫画全巻ドットコム」。
今回は、その「漫画全巻ドットコム」を運営する株式会社TORICOの安藤社長にインタビュー。
急成長の秘密にせまってきました。

【インタビューイ】
株式会社TORICO代表
安藤 拓郎さん

【インタビュアー】
マンガナビ運営
株式会社ファンタジスタ代表
栗原 弘樹

―― まず、TORICOさんのホームページをみて驚いたのが、マンガだけでなくスニーカーも売っているということだったんですが、そのあたりの経緯から教えていただけますか?

TORICOは、最初、スニーカーの企画、製造から始まっているんです。もともと、ボクは大手商事会社で中国の担当をしていたんですが、その中で、中国のスニーカー工場の方と知り合って、意外と安い料金で、小ロットからスニーカーを作れることがわかったんですね。それで、高校時代からの友人とふたりで、TORICOというブランドを立ち上げて。趣味の延長というか、完全に趣味だったんですが。

―― 自分達でデザインしたスニーカーを作るんですか?

そうです。デザインといっても、当時ちゃんとしたグラフィックソフトも持っていなかったので、パワーポイントでデザインを作って工場に渡すという形で(笑)。
そうしたら、これが予想以上に売れて。一時期、楽天市場のスニーカーの部門で売上が2位になったりしたんです。

―― それは、アディダスやナイキなどの人気ブランドのスニーカーと同じカテゴリーでということですよね。

はい。それで、完全に副業でやってこれだけ売れるんだったら、本業にすればこの何倍も売れるんじゃないかと思って。それで会社をやめて、二人で株式会社TORICOを設立しました。
ところが、副業だった時代には好調だったスニーカーが、本業にした途端にさっぱり売れなくなって。

―― それはどうしてなんですか?

当時は、全く理由がわからなかったんですよ。今になって考えると、スニーカーにもマニアというか、新しいモノが発売されると、試しに買ってみようという人たちが一定数いて、その人たちの需要が一段楽したからなんじゃないかと思うんですが。本業としてやれば何倍にも売上が伸びると思っていたのが、逆に数分の1になったのであせりましたね。
それで今度は時間が余るようになっちゃって、よく二人で、近くの公園でブレインストーミングというか、「何か手をうたないとまずいよね」という話をしていて。

―― その時点で創業から何年目ですか?

創業から1年ですね。
ちょうど創業した翌年の8月から「漫画全巻ドットコム」がスタートしているので。約1年は靴だけでやってたんですよね。

―― じゃあその公園でアイディアが...

もともとは「引きこもりセット」みたいなものを売りたいという話をしていまして...。二人とも当時からそういう生活をしていたので。
休日の午前中に外出して、DVDを借りて、雑誌を買って、マンガを買って、ポテトチップスと、弁当二つとコーラ2リットル買って、あとは家に帰って1日引きこもるという、そういうセットを買うのがすごく楽しくて。

―― 二食分の弁当と、その間をつなぐものを買うんですね(笑)。

こういうセットが、土曜や日曜の午前中に届くとすごくうれしいんじゃないかということを思いついて、それをちょっとやってみようかということになって。
ただ、食品を扱うにはどうすればいいんだろうとか、どうやってDVDを貸せばいいんだろうとか、色々ややこしくて。一番早かったのが、近くに古本屋があったので、そこの商品を倉庫代わりとして使おうと(笑)。
注文が入ったら古本屋に買いに行って出荷するのであれば、リスクも無く、すぐスタートできるんじゃないかなと思って。すぐに在庫ゼロで、50タイトルくらいを並べて「漫画全巻ドットコム」を立ち上げたんですよね。

もう完全にパシリですよね

―― 売れたら古本屋から買ってくるということですが、古本屋だと少年コミックを一冊250円くらいで売ってますよね。あれを300円くらいで売るという感じですか?

そうですね。古本屋に2割くらいのせて売るっていう...。ほぼ定価に近づくんですけど(笑)。
そのくらいの金額でばーっと50タイトル並べて。ただ全然売れると思っていなくて。一週間、二週間やって1~2件注文が来たら万々歳というイメージだったんですよね。その頃、靴なんてもう月に1~2足しか売れてなかったし。それくらいのペースで注文が来たらいいんじゃないかと考えていたら、すぐにバーッと注文が入って。

―― その頃ってどういう品揃えだったんですか?

その頃は、ほぼ100パーセント自分たちが知っている青年、少年コミックの有名どころを並べて。
あまりマニアックなものを置くと、古本屋で買えないなって思ったので(笑)。
当時、『デスノート』がすごく流行りだした頃で、『デスノート』の注文が一気に入りだしたんですよね。
ただ、流行っていた分、古本屋でも買えずに、足りない巻は新品を買って入れたりとかしてましたね。

―― 中古だとなかなか商品が揃わないですよね。

揃わないですね。注文は週に1~2件入るくらいだろうという目論見だったので、ボクらが都内の古本屋を何店舗も回れば全巻で出荷できるだろうと思っていたんですけど、始めたら全然商品が集まらなくて。
お互いに出席簿みたいなメモ用紙を持って、何巻があるかというのを電話で確認しながら、「オレ6巻みつけたぞ」って(笑)。そうやって穴埋めしていくという...。

―― 例えば30巻のうち1巻でも抜けたら全巻って言えないわけですものね。

そうなんですよ。また絶対に買えない巻みたいなのがあって、すごく大変なんですよ。
昼間はとにかくずーっと都内の古本屋さんを巡って、夜集合して、そこから梱包して、出荷するっていう。だから昼間は注文状況を全くみてないんですよね。前日までの注文を見て、お互いに古本屋を探して、戻ってきて出荷して。それで、また今日何の注文が入ったかをメモに写して、また翌朝二人で都内を回るっていう。

―― ものすごい力技のスタートだったんですね。

もう完全にパシリですよね(笑)。

―― 社長と副社長が(笑)。都内の古本屋制覇みたいな感じですよね。

本当にすごかったですね。ものすごい冊数を買いこんで、レジで後ろにすごい列ができていたり。

しょこたんの時が第一次ピークなんですけど

―― それで新刊を取り扱う形に移ったんですか?

しばらくやってから、いろんな古本屋さんに直接声を掛け出したんですね。「スラムダンクの全巻セットなら何十冊でも送ってくれ」みたいな感じで。それからはやっと自分たちで古本屋を回らなくてもよくなって。
ただ、本当に人気のあるタイトルというのは、やはり中古だと見つけづらい。値段も定価に近づいてきますし、そもそも中古市場に無いというのがかなり顕著になってきて。
やっぱり売れ筋って山のヘッドの部分がものすごく大きくて、そこを扱えないとなるとサイトとしても非常にさびしいんですよね。
徐々に、本当に人気のある『ONE PIECE』や『NARUTO』はなかなか集まらないみたいな状態になり出したので、だったら新刊を扱った方がいいんじゃないかっていうことになったんですよ。

―― オープンしてから新刊を扱うようになるまでってどれくらいの期間があったんですか?

1年くらいは中古でやっていて、途中から新刊だけに切り替えまして。

―― 最初、しょこたんが利用していることで話題になって、サイトがブレイクしたという印象があるんですよ。ボクもその時にはじめて「漫画全巻ドットコム」というサイトの存在を知ったように思うんですが、あの時は中古の時期だったんですか?

中古ですね。しょこたんはマニアックな本を買われるので、絶版になっていたり、中古でしか手にはいらないようなものが多いんですよね。だから今のラインナップだとちょっとイマイチだというようなことを言われまして。

―― 今もやり取りがあるんですか?

ライブに行かせてもらった時があって。ライブ後にそういうことを言われまして。
あまり内情を語るわけにもいかず、「すいません。がんばります」みたいな感じになるんですが(笑)。

―― 後はひたすら新刊を売りまくるという感じですね。

そうですね。しょこたんの時が第一次ピークなんですけど、その後すぐに中古を扱わなくなったので売上がガクッと下がって。その後は伸びないかとも思ったんですが、おかげさまで第一次ピークの何倍にも伸びているので、結果としてすごくよかったですね。

―― 新刊専門に移行した時は、スムーズに右肩上がりに伸びていったんですか?

なりましたね。ボクらも、お客さんは全巻を安く買えるからこそ、自分達のところから買ってくださるんだろうと思っていたんですよね。実際、そういうお客さんもいらしたと思うんですが、それよりも全巻を簡単に揃えられるというところの方が大きかったんだなぁって。
そこはすごく心配していたんですよね。「1円も安くないのに買ってもらえるか?」っていうのが正直あってですね。

―― 結局、面倒だからなんでしょうか?アマゾンで一巻ずつポチッポチッって買っていたりすることが。

そうだと思うんですよね。面倒くさいというのと、あとはせっかく1万円以上かけて全巻を揃えるんだったら、新しい方がいいかなとか。あと、実際見比べると、新刊でも古本でも、あんまり値段が変わらなかったりするんですよね。

まずは巻数が多い順から取り扱ってきたという感じ

―― 現在の(新刊のみの)形になってから何年ですか?

マンガを扱い始めてからちょうど3年ですね。

―― 客層をみると、男女比ってどれくらいですか?

6対4くらいで男性が多いですね。

―― 結構女性も多いんですね。取り扱っている作品は男性向けが多いような印象があるんですが。

そうですね。実際、8割くらいが男性向け作品なんですけど、それでも女性のお客さんも多いですね。
ボクらもスタートするときは9対1で男性が多いだろうと思っていたんですよね。でもいざ始めてみると、女性の方がニーズが高いのかなと。本屋に行ってコミックコーナーを物色するのが恥ずかしいと感じる女性もいるんでしょうし、またドッサリと買って持って帰るというのもつらいでしょうし。だからボクらのところで買うのが買いやすいのかなと思うんですが。
あとはイケメンドラマブームがやっぱり大きいですね。『ルーキーズ』『クローズ』、あとは『花ざかりの君たちへ』とか。そのあたりは、毎週ドラマが放送されるたびに売上がどんどん上がりますね。

―― ドラマで作品の存在を知ったという人たちですね。

そうですね。全巻を買うっていうのは思い切りが必要だと思うんですが、そういう意味では、ドラマや映画で一度観ていると、そんなにつまらないことはないだろうという安心感があって、買いやすいんだと思います。

―― 取り扱っている書籍が8対2くらいで男性向けが多いというのは理由があるんですか?

理由は、ボクらが女性向けをあんまり知らないと(笑)。

―― やっぱり!ボクらもそうなんですよ(笑)

あと、女性向けのコミックって長く続いてないんですよね。10巻を超える作品って極端に少なくて、名作とされている作品でも8巻くらいで終わっていたりとか。

―― 言われてみれば確かにそうですね。女性向けは週刊誌もないですしね。

すごく短いですよね。30巻を超える作品は数えるほどだと思います。

―― そうすると、毎月、何百冊とコミックが発売されるじゃないですか。その中で、これは取り扱おうとか、これは取り扱わないっていう風に選別していくわけですか?

そうです。決め方は本当にバラバラで、まずは巻数が多い順から取り扱ってきたという感じがあるんですけど。
『ゴルゴ13』とか『こち亀』から始まって、10巻くらいまである作品は全部取り扱おうということでスタートして。それから10巻以上の作品はほとんど扱っているという状態になったので、今度は巻数は少なくても話題になりそうだとか、売れそうだとか、今はだんだんそっちのステージ入ってきてますね。

―― そうすると、ある程度マーケティングが必要になりますね。

それはやっとやり始めましたね。今までは巻数しか見てなかったんですけど、「これ売れるんじゃないの?」というところを徐々に見だすようになってますね。

―― 例えば5巻までの作品を購入するとして「漫画全巻ドットコム」だと送料がかかるわけですが、それでも売れますか?(注.「漫画全巻ドットコム」の場合、通常は1万円(税込)以上買うと送料無料。現在は購入金額に関わらず送料無料となるキャンペーンを行っています。)

売れますね。売れますけど、やっぱり20巻~30巻くらいの作品が中心ですね。多分3~4冊くらいだと本屋で一冊一冊買ったほうが早いし、アマゾンでも何度かクリックしてカートに入れればいいやというレベルなので、10巻とか、本屋やアマゾンだと不便を感じるくらいの巻数からが売れ筋ですよね。


今では多くの出版社が一目おく存在となっている「漫画全巻ドットコム」。
まさか最初は古本屋が"倉庫"にしてのスタートだったとは!
次回は、全巻販売専門書店ならではの売れ筋作品、「漫画全巻ドットコム」のウリともいえる、販売キャンペーンについて伺ってきました。

建物探訪

TORICOさんの本社がある千葉県の市川塩浜には、アマゾンをはじめ、様々な企業の倉庫や流通センターがひしめいています。
TORICOさんの入っている建物も、全部で10社が倉庫として利用しているとのこと。
そのため、入退社時のセキュリティが大変厳しく、空港のような金属探知機が用意されていました。
そして、事前に「海のすぐそば」だと聞いてはいたものの、ここまで近いとは!
窓を開けると、目の前は一面の海!潮の香りがしてきました。釣りもできるんじゃぁ...。


最上階の会議室の窓を開けると、そこは大海原。


厳重なセキュリティで入館も無駄に緊張したり...。


倉庫なのでカッターの持ち込みはOK、ただし業務用だけ?


商売繁盛を祈願して...。


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