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モーニング編集部に聞く-世界標準マンガ誌『MANDARA』が見すえる全世界同時発売構想

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モーニング編集部に聞く、世界標準マンガ誌『MANDARA』が見すえる全世界同時発売構想

7月2日に外務省が「国際漫画賞」を発表しましたが、同賞に先駆ける十数年前から、日本のマンガ文化を世界へ伝える準備をしていた雑誌がありました。
世界と日本のMANGAのいまをレポートする連載企画『~なるほどTHE MANGA WORLD ~』。その第2回は、今年3月にモーニング25周年記念出版として創刊されたマンガ誌『MANDARA』の古川編集長と世界のマンガ家とのコラボレーションを手がけた新編集次長お二方へのインタビューです。
12月発売予定の第2号準備を控え、世界中のマンガ家と読者に向けた同誌の将来構想について大いに語っていただきました。

『MANDARA』古川編集長 プロフィール
古川公平 57年、兵庫県生まれ。
80年、講談社入社。『少年マガジン』で『あした天気になあれ』(ちばてつや)、『ヤングマガジン』で『頭文字D』(しげの秀一)などを担当した後、『アフタヌーン』編集長を経て、04年12月から『モーニング』編集長。07年、新編集次長とともに『MANDARA』を創刊する。

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マンガを世界へ、という時が熟した

――まずは、日本初の世界標準マンガ誌といえる『MANDARA』を創ろうと思った経緯をお伺いします。

古川編集長:昨年、『モーニング』の創刊25周年という流れのなかで、海外のマンガ家を紹介するということをいち早く取り入れてきた実績や海外からの留学生、編集者志望の学生たちを受け入れてきた歴史的な経緯があります。もう10年以上前から、海外のマンガ家・編集者たちとの交流があったんですね。
ただ、交流を始めた当時は日本のマンガ自体の世界での認知度や、日本のマンガに比較した海外のマンガの水準がまだまだ低かったんですね。アメコミやバンドデシネといった広い意味でのマンガ的なものは世界では読まれていましたが、日本のマンガという意味ではまだ成熟していませんでした。
そのなかで、海外のマンガ家のレベルがあがってきたり、逆に日本のマンガ家や作品の海外読者における知名度があがってきてマンガが受け入れられるような状況に変わってきました。ページを右から開いて読むということを含めた「マンガ」という日本固有の文化の認知とか理解、読者が増えてきたんですね。
マンガ家さんもそんな日本のマンガをレスペクトしてくれるようになり、特にここ数年、日本で作品を出したいという流れになってきましたよね。
ただ、これまでは日本のマンガを海外で翻訳するという形だったのですが、それだけだとただの「輸出」じゃないですか。日本ですでに売れているマンガだけではなく、海外のマンガを逆に日本でマンガ雑誌にして、海外に向けて販売、配信したいなと。フランスやアメリカでは、マンガは子供向けのものとみなされていて「SF&ファンタジー」というカテゴリーに入れられてしまうんです。
日本の場合、マンガというものが文学的・思想的なものであったりアーティスティックなものもあったりして大人も読むような懐の深いものですよね。その中で日本や海外の優秀なマンガ家たちの作品を世界同時発売するようなマンガ誌ができるんじゃないかと。5年、10年かかるかもしれませんが今から準備していって日本で1万部、アメリカで1万部、欧州で1万部、アジアで1万部というように積み上げていければ世界で十万部というような夢が広がりますよね。
この『MANDARA』はその最初の器なんですね。これは大きな意味で世界に対するプレゼンなんです。
いくら口で言っても伝わらないので、まずはプレゼンの意味でも1冊作ろうと。
いま、うちの国際ライツのスタッフが世界中のブックフェアでこの『MANDARA』を見本にして話をしています。
実はアメリカなどからもこの雑誌に作品を出したいという要望もきています。
ただ、国によって価格やページ数など適正数がいろいろありますから、まずは日本で『MANDARA』というブランドを創ってそれを『MANDARA AMERICA』とか『MANDARA ASIA』というように各国読者にあった形にして世界中に販売したいですよね。

将来構想はマンガの世界同時発売

――実際にこうした雑誌を発売するにあたって、海外のマンガ家さんの反応はどうでしたか?

新編集次長 :僕がむかしからおつきあいのあるイタリアなど海外のマンガ家さんからはうれしいという声がありましたね。また、海外ではマンガのしごとというかマンガ雑誌そのものがあまりなくてイラストレイターやアニメなどマンガを描けるクリエイターが他のしごとに流れてしまうことが多いので、そういう意味でも喜ばれていると思います。

――実際に創刊号を今年の3月に発売してみて、第2号(今年12月発売予定)ではこうしてみたいという点はありますか?例えば、日本の従来のマンガ誌のように月刊誌化や週刊誌化したいとか。

古川編集長:発刊頻度でいえば、海外のマンガ家や読者は一般的に数ヶ月に一度、マンガを描いたり読むというスタイルなんですね。そうした海外のマンガ家にとっては週刊や月刊というのはとても想像すらできない非現実なスケジュールです。いまの段階では年2回ぐらいの刊行スタイルがよいのかなと思っています。もちろん、今後は日本の月刊スタイルがよいのかそれともまったく新しいスケジュールを考えていく必要があるのかもあわせて考えていく必要があると思います。
また、かつて日本の雑誌で描いていた国内のマンガ家のひとたちももう週刊・月刊では書けないけれどこのスケジュールであれば新しい表現媒体として世界に向けて書いてみたいという声が増えていますね。
また、日本では知られていないけれども海外で評価が高い、固定読者がついているというマンガ家さんも実はたくさんいますし。

――世界中のマンガ家さん、編集者さんといっしょに雑誌を創るうえでの苦労はありましたか?

新編集次長 :そうですね。いまはインターネットがあるのでずいぶん楽になっていると思います。編集作業は、メールとサーバーを使うことでほとんどネット上のやりとりで済んでいますね。
古川編集長:今後の技術的な進展はかなり早いと思うので、編集作業もそうですし、版もデジタルデータ化しているので各国で販売・配信したいというニーズがあればすぐに海外で読める、世界同時発売という話が5年後ぐらいに現実のものになっている可能性はありますよね。。

――編集のワークフローと印刷・販売のワークフローについては今後、大きく改善されそうですよね。

ただし、日本の印刷・製本技術は世界的にも高いので、版は同じでも他国で同じクオリティのものをすぐに出せるかという課題もあります。

――創刊号の2,000円という価格については?

新ともいろいろ話しあったのですが、値段が高い「画集」としてではなくて「マンガ雑誌」としてどうしても発売したかったのでこの価格にはこだわりました。この装丁や大きさ、ページ数を考えると本来的には3,000円ぐらいで売らないと赤字です(笑)。ただ、将来的なことを考えるとマンガ雑誌として勝負できるぎりぎりの価格帯の2,000円でまずこの器を世に出そうと。
但し、今後いくらくらいが妥当かというのは国によって異なりますよね。
ただやはり日本の話題作が向こうでも話題になる傾向はあると思います。
欧米ではこの品質でこの価格というのは信じられないぐらい安いですけど、逆にアジアでは、単純にマンガ雑誌として考えると誰が買うんだろうという価格です。ただ、シンガポールの紀伊国屋さんで売っていたのを買ったというようなひともいるのを聞いて逆に驚くこともありますね。
日本ではこの価格で、現在6割ぐらいの実売率なのでかなり健闘していると思いますよ。

日本のマンガの強み

あくまでも将来的な話ですが、広告代金についても、このような新しい試みの雑誌や日本のマンガ文化というものに理解のある国内外の企業さんからの協賛のような形で集まれば、新しいモデルが成立します。

――近年、国の支援による世界展開という方法論が出てきた一方で、日本発世界という新しいムーブメントに対する企業協賛というか民間によるサポートが大切ということですよね。

そうですね。民間というか、僕たちのようなところから出て行かないといけないんじゃないかと。
マンガというもの自体は、国に保護されていくものではなくて、マンガ家と編集者、読者が切磋琢磨して育てていくものだと思うんですよ。
つい最近、政府が「国際漫画賞」を発表しましたよね。同じ「国際漫画賞」という名前ではありますが、実は僕たちモーニングも世界のマンガ家たちに対して「日本でいっしょに新しいマンガを作りましょうよ」という趣旨ですでに作品を募集しました。6ヶ国語に募集要項を翻訳してネット経由で全世界から200名以上の募集がありましたね。その受賞作品は『モーニング2』に発表されます。

――国による国際漫画賞との最大の違いは?

もちろん、世界の優秀なマンガ家を発掘したいという点では同じですが、編集者とマンガ家が一体となって切磋琢磨してきたという日本特有の歴史にもとづいて、マンガ家と編集者がいっしょになってマンガを創っていこうという点が一番違いますよね。

――日本マンガの最大の強みである編集者の力ですよね。マンガ家と編集者のコラボレーションワークの伝統は日本のマンガ誌において今後も続いていくのでしょうか?

マンガ家も編集者も、作品の評価はすべて読者に下されるというシビアな伝統があります。それに他のジャンルの本や雑誌と違ってマンガの場合は編集者個人個人の感性で創るものです。ですから、作品が読者に受け入れられているのかどうなのかという結果がすぐ、ダイレクトに個人に跳ね返ってしまうという厳しい市場評価にさらされています。また、編集者というのは、いっしょに組んでいるマンガ家からも厳しいジャッジを受ける仕事なんですよ。
そういう意味では、マンガ家も編集者も常に読者からの厳しい評価に個人としてさらされながらしごとをしていくという伝統こそが日本のマンガの強みなのかもしれません。

プロジェクトM~『漫画よ飛べ、漫画よ世界へ広がれ。』~

――新さんに質問なんですが、この『MANDARA』でこういう試みをしていきたいという意気込みをお聞かせください。

新編集次長 :とにかく、新しいマンガ家を世に出していきたいということですね。これまでにない作品、これまでにないコンセプトをもったマンガ家さん。実はこの表紙の絵も、まだプロとしてのキャリアはほとんどないイタリアの学生さんが描いた作品です。
これまでの国内のマンガ流通ではもう世に出づらいひと、作品表現をしづらいひとがこの新しい形態の雑誌によってまた、世界に広がっていけばよいなと思います。

――創刊号のラインナップでは、イタリアのマンガ家さんのネットワークが広い印象を受けます。

古川編集長:むかし、モーニングで働いていた海外の留学生が、その後に海外でエージェントや出版社の仕事についたというケースが多いんですね。そのときに日本のマンガを理解したうえで海外の仕事に就いたというネットワークが、イタリアを中心にすでにある程度築かれています。
ただ、正直なところはじめたばかりなので、今後このマンガ雑誌が一体どの地域を中心に広がっていくのか僕たちでもわからないところがありますね。欧州で行くのか、アメリカ中心で行くのか、それともマンガ熱がここ最近高まっているロシアなのか。
ひとつ言えることは、雑誌連載から単行本へという既存の収益モデルとは違うものになるような気がします。各国版でのデジタルデータが整備されれば、全世界同時にインターネットで収益をあげるというモデルになるかもしれません。ネットの影響力というのはすごいですよね。今までの同じビジネスモデルだと成立しないし、逆にそうなっていってほしいと。

――従来とはまったく異なるモデルの中で、異なる作風をもつ新しいマンガ家が出てくるということですね。

ええ。最近のハリウッドをはじめ、各国の映画界でも、日本のマンガをむかしカトゥーンなどで観て育った新感覚の映像作家たちが育ってきていると聞きます。今のアニメ界もそうですが、日本のマンガをレスペクトして育った海外のクリエイターが日本のマンガ界とは異なるところから新しい才能として出てくるということもありますよね。そうした才能を生むためにもこうした試みをとにかく、少なくとも5年間はやらなければならないと思います。海外のブックフェアなんかに行っても、全世界に対して売っていけるマンガ雑誌というのはこれまでなかったんですよね。この『MANDARA』は、世界に売ることができるはじめてのマンガ雑誌なんですね。
個人的にはモーニングが25年かけて創ってきたもの、アフタヌーンも含めたうちの編集部がいまやらなければ、ネットワーク的にも編集ノウハウ的な意味でも他ではできないんじゃないかと思っています。
もちろん、そんな使命感だけではなく、面白いなにかが始まるんじゃないかという期待感というか夢でしょうか。そこになにか大きなチャンスとかやり方があるんじゃないかと。
10年後、20年後に全世界配信とかが当たり前のことになっていて、僕らも引退しているかもわからないけど、そのときのひとたちが「へぇ~、さいしょそんなことから始まったの?」と言うような......。
でも新しいことのはじまりってみんなそういうものですよね。

編集後記

「日本のマンガを世界に」という片方向の流れではなく、海外交流の歴史が深いモーニング編集部だからこそ「世界のマンガを日本から世界に」という双方向の流れを作り出さなければいけないという決意を語ってらっしゃった古川さん。
既存の雑誌の流れには乗りにくい新しいマンガ家、マンガ作品を新しいモデルで世に出そうとおっしゃっていた新さん。
一見、いかつい外見(失礼!)のお二方でしたが、熱い語り口のなかに日本のマンガに対する誇りが垣間見えた取材でした。



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