『ダイヤモンドの功罪』感想スタンプ・評価点数でどこが面白い？良い点は？関連作もまとめて紹介！

ストーリー性
キャラクター性
画力
読後感

「野球漫画にまだこんな切り口が残されていたのか……！」と唸らされる衝撃作。
恵まれた体格と抜群の運動神経、さらに頭脳明晰と天賦の才能を持つ小学5年生の綾瀬川次郎（あやせがわ・じろう）。

どんなスポーツをやらせても小学生レベルをはるかに凌駕しているため、彼にかなう者はいない。

しかしこれまでテニス、体操、水泳と様々な種目を習ってきたが、次郎は常に疎外感を抱えていた。
あまりにも彼がスペシャルな存在なため、同世代の子供たちのやる気を削いでしまうのだ。

そんな次郎がたまたまた目にしたチラシが少年向けの硬式野球クラブ「足立バンビーズ」のメンバー募集。
バンビーズの監督に、「野球はここにいるみんなが味方なんだよ！」と言われ、個人競技しかやってこなかった次郎は感動する。

次郎の中身はスーパーアスリートではなく、遊びたい盛りのわんぱくな男子小学生なのだ。

しかし、いくら次郎が楽しくピッチャーをやりたくても、豪速球を受けられるキャッチャーはチームメイトにいない。

結局は次郎が嫌悪する“ガチ”のベクトルへと大人たちが誘導、彼の才能を巡って様々な思惑が交錯することになるのだが……。

例えば19歳の大谷翔平選手が独立リーグで楽しくプレイしていたとして、「なんでNPBに行かないの？　いや、君ならいきなりメジャーでも活躍できるよ！」と思わない野球ファンはいないし、なんならイラ立ちすら起こすことだろう。
「周囲は何をやってるんだ!? もったいない！」と。

それと同じことが本作では起こっている。
持てる者の苦悩を描いた傑作の誕生だ。

ストーリー性
キャラクター性
画力
読後感

主人公がこれほど優秀なのに、これほど厳しさが漂う漫画があっただろうか？

これが普通の野球漫画であれば、天才的な身体能力を持っている主人公は何らかの不利な状況（背が低いとか）を抱えながら第１巻で活躍し、認められ、第２巻以降で強敵がゾロゾロと登場する。
主人公だけが特別じゃなくて、強い奴はゴロゴロいて、自分は井の中の蛙と知る。

そこからが燃える展開だ。
ライバルと仲間と強敵。
「こんな敵に本当に勝てるのか！？」を覆していく。
少年漫画の王道だ。

だが思い起こせば、本書はヤングジャンプ連載漫画。
そう簡単に努力・友情・勝利じゃ無いのだ。

主人公の綾瀬川 次郎は小学校５年生にして第一話の時点で166cm 。
何と第二話では169cm 。長身だ。

元々体格に恵まれている上、映像を見ただけで直ぐにその通りの動きが出来る天才的なフィジカルの持ち主。

つまり初心者なのにプロの動きが出来てしまう。
その上努力家で、勉強家なのだ。

本人は凄くいい奴だ。
素直で賢くて明るくて優しい。
天真爛漫で友達思いでさえある。

なのに、主人公が無邪気に結果を出せば出すほど周囲の大人たちと子供たちが変化して行ってしまう。
大人たちは期待し、子供たちは劣等感を抱いて攻撃的になる。
主人公は天真爛漫ではいられなくなっていくのだ。

大人たちも何とか上手く行くように工夫しようとしているのだ。
それは読めば解る。

繰り返すが主人公は本当にイイヤツなのだ。
だから主人公が周囲とうまく行きそうになると、大人の読者としては嬉しくなる。

そして怖くなる。

一見野球漫画に見えるが、何と言うかこれは日本の教育現場の問題提起漫画とも思える。
一体この物語はどうなっていくのか。本当に目が話せない。