『グランドワーフ～町工職人、匠の技で異世界無双～』感想スタンプ・評価点数でどこが面白い？良い点は？関連作もまとめて紹介！

ストーリー性
キャラクター性
画力
読後感

主人公は７０歳の町工場の社長にして職人＝藤村匠。
日本の技術力を支えて来た町工場職人として誇りを持って仕事をしているが、大手メーカーの営業らしき男とチョイと押し問答のあげくぶっ倒れて異世界に。

しかも気がついたら子供の身体。

召喚者がいない(多分)ので、これは転生の一種だと思われるが、大人の知識に子供の外見はどこかの人気探偵みたいになっていて、しかも特殊な「眼」を色々と持ってる。

この眼、岩の中の魔石を見つけられる上に動体視力も格段に上がっていて、本人が直接バトルしてもチートできちゃいそうなんだけど、この藤村、頑として「モノ造り」にこだわるのだ。

ありきたりのチート系異世界とは一線を画す設定なのだ。

じゃあ直接バトルを担う相棒をどうする？って言ったら、異世界でイキナリ出会った片腕のヒーラー＝フラウ嬢。

このフラウちゃん、顔に火傷痕はあるし腕は片腕だし、しかも職種はヒーラー。
その上以前属していたパーティーでメンバー外にも回復を使い続けた挙げ句に「裏切った」と噂流されて切り捨てられた、社会的には最低ランクのソロ冒険者。

その身体的・社会的ハンディもあるが、フラウの問題はバトルシーンでビビっちゃう事なのだ。

そんなフラウを外見子供・中身は昭和な主人公が叱咤激励しながら魔王討伐を目指していく話になるのだ。

主人公の設定にチートがモリモリ入ってはいるが、それらがほぼ「モノ造り」に特化している上に、現段階で本当にバトルシーンに対抗できると思えない。

しかも悪役として登場するフラウの元チーム＝シデンのリーダーが本っっっ当に狡賢く他人を利用して蹴落とす最悪なタイプ。

昨今の残酷で暴力的なニュースやこの悪役を見ると「そうして生き残らないとダメなのか？」とまで思わせておいて･･･の１巻のラストに大感動するのだ。

いや、これは良い話だ。そして面白い。
何よりもキャラの構成がメチャクチャ良い。

町工場の社長(70)の主人公は５２年間モノ造りに邁進してきた男だ。
やっぱり「何かにひたすら邁進してきた」経験を持つ人間は強い。

異世界に行っても判断がブレない。
「一番大切なものは何だ？」の問いに対する答えがブレない。

１巻終盤の「こっからは昭和だ」が頼もしかった。
「昭和」の文字がこれほどポジティブに語られる事も滅多に無いだろうが、シデンのクソっぷりを制するのにこのブレなさが本当に頼もしかった。

作者の斉藤尚武先生は前作の情報が無い。
だが町工職人の技術の話の具体性や７０歳主人公の価値観など、作者の背景の深さを感じさせる。

続刊が待ち遠しい。