海外MANGA事情

京都精華大学マンガ学部[日本よりアジアのマンガ教育の方が充実している]!?

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外務省が今年7月に発表した国際漫画賞の大賞受賞者は日本で既に活動している台湾のマンガ家でした。アジア発の才能が漫画賞やマンガ誌などから徐々に生まれつつあります。
お隣の中国・韓国の状況を眺めると、政府がマンガをアニメに続く国策として捉え、映画やアニメの物語の源泉でもあるマンガ教育のための莫大な学校予算を投じています。
その結果、猛烈なスピードでマンガ学校が設立され、怒涛の勢いでマンガ家やマンガ作品が生まれているようです。国際漫画賞への応募者もアジア圏からの作品応募がもっとも多かったとのこと。
そんな状況のなかで、数々の日本文化を生み出した古都京都にて昨年オープンした京都国際マンガミュージアムの牧野圭一研究センター長(京都精華大学マンガ学部学部長)にアジアのマンガ教育の現状についてお話を伺いました。

アジアマンガ教育事情「日本にはマンガの空気があるんです」


プロフィール 牧野圭一
京都精華大学マンガ学部学部長。マンガ学科教授
1976年より15年間読売新聞に政治漫画連載。第13回文藝春秋漫画賞(67年)。日本漫画家協会優秀賞(73年)。トルコ・シマビ国際漫画展「雑誌セブル」賞(79年)など。86ブルガリア・ガブロボ風刺とユーモア国際ビエンナーレ展招待作家。現在、(社)日本漫画家協会理事、京都国際マンガミュージアム研究センター長。

日本よりアジアのマンガ教育の方が充実している

――京都精華大学マンガ学部の生徒の13%前後はアジアを中心とした海外からの留学生だそうですね。特に韓国や中国などから優秀なマンガエリートがはるばる京都まで学びに来るとのこと。日本のマンガ教育はアジアでも突出したレベルにあるということでしょうか?

実はいま、韓国の国内だけでも400校の大学、専門学校にマンガコースがあります。韓国や中国の学校には日本よりよっぽど立派な設備があるというのが現実です。
数年前ですが、韓国のアニメ専門高校学校校長から「うちの高校生に日本のマンガ、京都精華大学にについて詳しく話してくれ」という依頼を受けたことがあります。
私が全校生を前に『もうすでに韓国の学校では、国家の支援を受けることで日本よりはるかに良い環境・設備があって、充実しています。先生も立派な方々が揃っており、企業の参画もある。わざわざ日本に来る必要がないのではありませんか?』と話しました。
すると彼らは、「日本にはマンガの空気がある。その空気の中で学びたい」と答えます。
精華大学にマンガ学部があるからという理由だけで日本に来るんじゃない。マンガの空気を感じるのにもっとも相応しいのが、たまたま京都精華大学なんだということなんですね。

いま日本のいろんな大学に、学校側の生き残り戦略として、アジアの留学生の受け皿として、マンガコースを整備しよう、ビッグネームの先生を用意して集客しようという動きが増えつつあります。しかし、教師にとってビッグネームであっても、今の学生からみるとそれは過去の作家なんですね。学生が求める先生は学校側がまず知らないような最近のマンガ家です。

――それでは、マンガ学校としてはどのような先生が理想なんでしょうか?

マンガ学部の先生としての条件は、日本という国にマンガの空気がある。それが学生にとって何よりの魅力であるのだということをまず認め、それを前提に学生を指導するタイプの先生です。マスコミや学生の父兄を含め、ビッグネームの先生を求める傾向はたしかにあります。そしてそれはそれで間違いではありません。才能あってこその作家でありますから。ただ、第一の条件はマンガの空気を伝えてくれる先生ですね。。

――しかし、子供の将来=就職への教育投資として大学を考える、一般の親御さんからするとマンガ界に確実にこどもを送り込みたいというニーズも切実な気がします。
こどもにいい就職をさせたいという韓国や中国の教育熱の高さは日本の比ではないと聞きます。マンガ教育についてもそうだとすると、日本の学校もうかうかしてられないんじゃないでしょうか?

語学、たとえば英語に例えると、英語を教える先生がいくら沢山いても、文法を理解し、英語を話せる学生がいなければ英語文化は育ちません。日本でのマンガ文化は国や学校が主導したものではなく、広範な読者が自分たちで勝手に学び、その力で「作家」を育てたことで豊かになったものです。いわば、マンガは現代の日本人の共通言語なんです。

日本のマンガ読者による共通言語がマンガなんですね。

――言語で例えると、日本語のようなものですね。約5,000万人ともいわれる日本のマンガ読者による共通言語がマンガなんですね。

日本の誇る高いレベルの「読者」に支えられて、たくさんのマンガ家が生まれてきました。少女マンガのケースでいうと、昔、少女マンガ家になるには19才前にデビューしなければダメだと言われていました。社会人として完成されたマンガ家が必要なわけではなくて、若いマンガ読者の代弁者として読者の等身大の空気を伝えることの出来る年代が19才までとみなされていたんですね。文学性や絵の完成度という点だけで判断すると、低いレベルであったものかもしれません。ただし、読者の空気・気運を伝えるというにふさわしい作家像。
彼女たちこそが、これまでに無かった表現による、新しい物語を伝えうる「視覚伝達の文化」を作ったのです。
そういう視点に立つと、中国や韓国でいくら国策としてマンガが強化されようと、文化として自国の読者に根付くかという、大きな課題があるのです。一夕一朝にはできません。
長い長い時を経て、中国のマンガや韓国のマンガが生まれるかどうか。
日本語ですでに成立しているものを自国語に翻訳し、翻訳された言語で読むという作業が必要になります。そういう意味で、私の眼からみると険しい道のりです。

――しかし、日本のマンガ界を支えてきたマンガ誌をはじめ、マンガ市場は毎年右肩下がりの状況です。

数値的に日本のマンガが衰退しているというのは、あくまで出版社側の見方です。
客観的に、出版社の存在を、マンガという商品を生み出すための工場に例えると、その工場の力は確かに弱くなってきているかもしれません。しかし、マンガを生み出し、読みつづけてきた民衆のエネルギーはまったく弱まっていません。別の工場の製品を買うだけの話です。

――マンガ家と読者の問題ではなく、既存のマンガ出版のビジネスモデルの問題ということですね。

工場というか、市場の王様が変わっても文化を支えている民衆は変わりません。
その王様がネットやケータイにとって変わるのか、ゲームになるのかはわかりません。
しかし、マンガという、民衆の「言語」が取り上げられない限り、その言語がより伝わりやすい「王国」に移り住んで、うまく生き残ってゆくのが日本のマンガ市民なのです。

日本のマンガの空気を世界に伝えるミュージアム

――マンガ工場ではないですが、京都国際マンガミュージアムを昨年11月に京都市と共同でオープンしましたね。京都精華大がマンガミュージアムを設立し共同運営する狙いは、これからは世界を見据えたマンガ教育をということなんでしょうか?

当初、私の個人的な希望としては、マンガに関するいろいろなものやひとが集まる「平成版トキワ荘」をイメージした場所を作りたいなと思ったんですね。
そこで、当時の文化庁の河合隼雄長官(故人)と寺脇文化部長に相談しました。
最初思いついてからオープンするまでわずか3年でしたね。
しかしマンガというのは当初の思惑をこえて勝手に大きく広がっていくものなんです。
力強く俊敏な、大きな生き物にも例えることができます。コントロールが難しいのです。
研究者はたくさんのマンガ本を所蔵しマンガ学の研究ができる研究施設を。大学側は他校との差別化(笑)。私自身は卒業生が就職するまでの活動拠点として。市の教育委員会は廃校になった学校の活用モデル、教育モデルとして。また、人間学やコミュニケーション学を研究している学生たちは日本文化の良さをもっとアピールする場所にしたいとどんどん参入してきました。

――産学官民共同のミュージアムですね。運営側は調整がかなり大変かと思いますが。

現在は、私が研究センター長、養老さんが館長をやっていますが、このミュージアムをコントロールすることなんて誰にもできません。短期間にいろんな思惑がばらばらに動いていった結果として、誰の思惑でもなく勝手に成長していくミュージアムになっています。無論、必要な管理はしていますが、完全には制御しきれないのがマンガという自由な文化なのではないでしょうか。それを暗黙のうちに了解し、容認することが日本のマンガ・アニメを大きく育てるコツであるかもしれません。

――来館者の1割以上がアジア圏を中心とした海外のマンガファンと伺いました。
マンガは国内だけではなく世界にも勝手に広がってしまうということでしょうか?

そういうことだと思いますね。そういえば最近、当ミュージアムの展示物の一部をもとに、フランスのジャパンエキスポにもブースを出店したんですね。そうしたら、向こうのマンガファンがすごく集まったんです。日本のマンガキャラクターのコスプレをしたファンが列をなしました。
それを見た展示会の関係者は、このブースをヨーロッパ各国にも出して巡業しようなんて言っています。
柔道がそうであったように、日本がいつまでも白の胴着や、古来の形式に拘っていると、向こうのマンガファンやマンガ家が「カラー胴着」、「階級制」のような全く新しい発想の「MANGA」を生んでしまうんじゃないでしょうか。

漫画力検定のようなものを作りたいとは思っているんですが

――最後に、マンガソーシャルメディアのようなWEB上のトキワ荘のようなメディアについてはどう思われますか?

私としても、漫画力検定のようなものを作りたいとは思っているんですが、高齢によるスタミナ不足と、雑務の忙しさで、なかなか手が回らないんですよね(笑)。
電子メディアでこれから、どんどん新しい作品やサービスが生まれてくると思いますが、遠慮なくおやりになった方がいいんじゃないかと思います。マンガというのはとても大きく深い世界なので、どこかとどこかが競合することなんて実際はないのです。パイの小ささを云々する人がいたら、それは単純にアイデア不足なのです。
このメディアではマンガをWEB上に自由に投稿したり、マンガに関する様々なことを発表したり交流することができるんですか?うちの研究生や学部の生徒とうまくコラボレーションできたら面白そうですね。ぜひやりましょう。

編集後記

牧野さんのお話で、韓国だけでも400ものマンガ学校があるという事実をはじめて知りました。韓国や中国の、設備に優れた「マンガ工場」が怒涛の勢いでマンガ家やマンガ作品を生み出しそうな勢いです。
韓国や中国の映画が日本映画より高い世界的評価を得ている昨今。日本のマンガもうかうかしてられないなと思いきや、牧野さんは日本には「マンガの空気」があるから大丈夫と楽観視されているようでした。
確かに、京都国際マンガミュージアムにはその「マンガの空気」が充満していました。



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