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初めてお仕事はなぜか建築パースをなどの仕事を。平沢下戸(平の字)さん後編

掲載日:2009.12.19

平沢下戸(平の字)さん インタビュー(後編)

クリエーターインタビューでは、商業誌で活躍中のクリエーターや同人誌で活躍中のクリエーターなど、みんなが気になるクリエーターを毎回お一人ずつご紹介。
作品の裏話や、普段どんな風に作品を制作しているかなど、気になる疑問をインタビューでお聞きします!
今回は、pixiv年鑑2009・pixivガールズコレクション2009などへのイラスト提供やキャラクターデッサン本など、幅広く活躍されている平沢下戸(平の字)さんをご紹介します。

インタビュー前編はこちら

平沢下戸(平の字) 平沢下戸(平の字)
東京在住の大学院生。
国立大学の工学部に首尾よく入ったものの、 うっかり絵に手を出し戻れなくなる。
今後はマンガ描きに手を広げたい、 とずっと思ってる最中です。
イラストのお仕事など募集してます。
Skywheel
pixiv id:57675

平沢下戸(平の字)さんの描き方を教えてっ!

――1作品あたり、どのくらいで仕上げていますか?

背景つきでアベレージ3日です。2日でラフ・線画をやって半日~一日で塗る。
といっても実働は20時間程度だという気がしますが...あと、細かい仕上げをちょこちょこやって完成させます。
もっとはやく描きたいです...。

――画材は何を使っていますか?

コピー用紙に鉛筆でラフを描き、それをさらにコピー用紙またはケントにトレースして線画にします。
それをphotoshopに取込んで仕上げます。

――これは便利だ!と思うオススメの道具はありますか?

uniの2mmシャープ(芯ホルダー)ですかね。
筆圧が強いのでシャーペンより鉛筆のほうが描きやすいですが、いちいち木の鉛筆を削っているとまたたくまに鉛筆削りの刃が負けるので、これは重宝します。

――これがないと描けない!というものはありますか?

基本的に、線画をデジタルで描けないのです。塗りはデジタルでしかできませんが。
ラフをトレースで線画にしないと線が汚くて仕方がないので、ライトテーブルかトレーシングペーパーがなくなったら絵が描けません。

――絵を描くときの作業工程など教えてください。

塗りの工程などを簡単にならべてみました。
思えば黄色くする必要なかったです...。

作業工程

1.線画を用意します。コピー用紙に鉛筆画です。
本当はこの前のラフが一番時間がかかるのですが、取込むにもでかすぎるのですみません...
以降の作業はフォトショップになります...がSaiでもなんでもできるのではないかと。

2.バックグラウンドとなる色をいれ、空の部分を抜きます。
バックグラウンドが色の基調となります。あと細かい背景絵では作業の短縮になります。
厚塗り絵師さんだと絵の中の中間色調や空の色などをバックグラウンドにする場合や、 バックグラウンドを塗りこむことで全体の色調変化をつくる場合が多いと思いますがこの絵の場合は「もっとも濃い色」の基準です。
あと、バックグラウンドの色味で全体の色調が変わってくるので、バックグラウンドを入れる人はいろいろ研究してみると面白いかと。

3.バックグラウンドの色レイヤーの後ろに空を描きます。
使う筆は不透明度100%~80%ぐらいサイズ200ぐらいの鉛筆で。
空とか描けないのでコツはとくになし。

4.窓に対する空の映りこみとか描きます。 実際にはありえない色ですが、空から色を取ってきて塗ってます。 ちょっと非現実的な感じにしたかったので。

5.一気に全体の色を入れてしまいます。通常鉛筆ブラシ、またはバケツです。不透明度100%。
私はとくに現実の色合いとかにはこだわりません(笑)ので、絵として、色調のコントラストとして 全体のバランスを見ながら入れていきます。
なので色塗りのコツも何もあったものではないのですが、色彩調和学の観点から言うと、 「(とくに色相が違って)明度がきわめて近い色がとなりあう組み合わせ」は色彩調和しないそうです。うろ覚えですが 単純な話ですが、このことから「となりあう色」や「絵の中の大きな塊の組み合わせ」の色合いは 明度から弁別できる色を使うといいかも。とか思って描いてます。

6.影をイッキ塗り。乗算レイヤー使ってます...。 影は端っこにちまちま入れるより大きく入れたほうが絵が映える気がします。 「陰影」といいますが、ここは「陰」はあえて描き入れない方針で(笑)。 これは地・影ともに単一色調ですが、同じような塗り方でも地の色がグラデとか二段に影をつける方けっこういますよね。 その辺は好みで。

7.今回のズル、色調補正。カラーバランスで変えてます。ただ、色調変えずもとの色合いでも十分だったかなあという気もします。
どういった色を使うか、とか陰影の度合いは、時刻は、とかって、塗る前にイメージがあるというよりは塗る過程で決めていっている部分があるので、場合によって補正したりしなかったり色々です。

8.細部を見ながらハイライト入れたり修正を行っていきます。
人のメイキングを見る限り1~7までの工程は絵師さんがたは普通にやっててこれからが本番、という感じですが私は「これで雰囲気いいかな?」とか思ってしまうと手が止まるのであとの工程はほんのちょっと(笑)

ドーパミンです

――技術向上の為に何かされていますか?

技術のために!って思うと苦しいので普通に絵を描く過程で新しいことにいろいろ挑戦しています。
魚眼パースとか。最低限描くのに必要な知識は描きながら覚えていくことができるので。

――昔と今で、成長したと思う所はありますか?

技術的な面は成長しましたが、失ったものもいっぱいあると思います。
ただしそれは失われているのでわかりません(笑)。

――商業でのお仕事経験はありますか?または、初めてお仕事をもらった時の心境を教えてください。

いちおう人物カットの仕事などをいただいてます。あと、なぜか建築パースを少し...。
自分の絵でお金がもらえるというのがヘンな気がしてます...。

――建築パースですか!それはどういう経緯で仕事が来るのでしょうか?差し支えなければお答えください。

詳しくは秘密です(笑)。
建築デザイン事務所の方にお知り合いがいて、コンペ用やクライアント用のパースなどの仕事を引き受けています。
もちろんそういったものは主流は3Dですが、主に構想段階や、コンセプトを表現したものなどはCGより手書きのほうがいい場合があるそうです。

――自分のアピールポイントはなんだと思いますか?

わりと何でも半端に描けるところ、というのはどちらかというと欠点ではないかと思うので顔と体型とファッションでできた「キャラクター」ではなくて、生きた感情を持つ人間や動物を描こう! ...と努力しているところ(笑)。

――将来こうありたい!という願望はありますか?

絵を描くことに関連した仕事をジョブにできれば何でも...(笑)。
でも、自分のなかにいるキャラクターや世界を動かして、それを見てもらえればそれでいいです。

――休日は何をして過ごしていますか?

絵を描いてます...?ボーっとしてるのが好きなのでよくわからないです。

――絵を描くこと以外で好きなものを教えてください。

絵は現在本業ではないので 絵以外というとザ・無趣味 といっても過言ではないですが読書好きです。読むの早いです。3分冊ぐらいでも1日あれば読み終えます。 ジャンルはドキュメンタリーと海外文学がメインですが、時代小説も好きです。こないだ姉に薦められた「百年の孤独」一日でイッキ読みしました。すごい本だー...。

――影響を受けた作家さんなどいたら教えてください。

絵に関してはいろいろな方がいすぎてよくわかりません。「とくに誰」というのもいいにくい気がします...。
漫画だと、月並みですが手塚治虫先生だと思います。

――どのあたりに影響を受けましたか?

とくに初期~前期作品のなかに、ドライな残酷さが感傷を交えず端的に描かれていて、現実を前にした人間の無力さと力強さの綱引きが緊迫感を持って表現されているところです。
また、当時のほかの作者の作品とちがって、悪や非正義の存在がアウトサイダーとしてではなく社会や人間の根本、規範的な部分に隠れている、という厭世的なテーマを内包しながらも同時に人間のもつ希望の強さも表現し、一種の絵本のような世界の中にそれらが戯画化されて、子供向けのファンタジーとして成立しているところです。 もちろん後期も大好きですが。
て、これただの感想文!

――つまり、平沢さんの作品にも、1枚の絵という世界に様々な思いが込められている...ということでしょうか?

そうあってほしいです(笑) ですが、到底達成できてるとはいえませんね...
どちらかというと人生観、物語観的な影響かと。それが絵に表れてればいいなー、とはおもいますが。
あと、人生観にあたえた影響が強い、という点では、Van der Elskenとかみたいな写真家とか海外の作家の作品の影響が大きいですね。
ただ、背反するテーマの内包、という点では、絵の中に逆説的なものを入れるのが好きなんですよ。
たとえば「女の子」「動物」「老人」「花」とか、そういうテーマって、得てして万人に受け入れやすい無害なテーマととられがちですよね。
それはもちろんそれでいいんですが、その中にちょっとだけ毒、 「孤独」や「老い」や「倦怠」「貧困」「肥満」みたいな簡単に受け入れがたい要素を含ませることで、少しだけテーマに厚み、というか「お?ちょっと違うぞ?」ぐらいに思ってもらえればいいです。
耽美的でない人生の悲哀というか、こう、美しい世界のなかに収まることのできない無様なはみだしもの的な部分にあえて愛情を注ぎたいなあ、と。もちろんそれだけではないけれど...普通に楽しい絵美しい絵は好きです!
かといってあんまり毒を入れすぎるとそれは「毒々しい絵」という以外の何者でもなくなるので匙加減が難しいですね。

――では、ズバリ!手塚作品で好きな作品を3つ教えてください!

でもそんなに詳しくはないんです(笑)。
鉄腕アトム、火の鳥...は必修として(ありきたりですみません)、 「アドルフ」とか「陽だまり」とか挙げたくなる気持ちを抑えて、 個人的に「すごい」と思った初期作品は「ふしぎ旅行記」です。
なにがすごいか、とはなかなか言いづらいですが、メトロポリスの漫画文庫の中に入ってるので興味持った方は読んでみてくださいー。それで何か感じるものがあれば...、と。

――最後になりますが、平沢さんにとって描くとは何ですか?

ドーパミンです。

――ありがとうございました!

作品紹介

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バトルロイヤル満漢全席
バトルロイヤル満漢全席

月刊インディーズコミック増刊号 Indies Comic Plus 2009 #1』でも作品をご覧になれます!


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