ハート、詩心、サービス精神、絵の勢い、絵の実在感--『眠り姫ビューティ!!』作画担当の一矢春吉さん

第７回　一矢春吉さん　前編

インディーズコミックで活躍されているクリエイターに作品の裏話や普段どんな風に作品を制作しているかなど、気になる疑問を伺いました！
この同人まんが道を読んでからインディーズコミックを読めば、より一層楽しめること間違いナシ！
今回は、『眠り姫ビューティ!!』作画担当の一矢春吉さんにインタビューしました。

プロフィール
一矢春吉
北趣味は散歩。酒は一人静かに飲むのが好き。現在、大阪府在住。暑いのは苦手。寒いのは割と平気。好きな薬は強力わかもと。健康状態良好。マンガ作品の制作一つに人生の目標を絞っている。



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一矢春吉さんにインタビュー

気をつけている事は、５つあります。ハート、誌心、サービス精神、絵の勢い、絵の実在感。

――PNを教えていただきたいのですが...。

一矢春吉。かずやはるきち、と読みます。

――PNの由来は何かあるのでしょうか？

別々の場所で使っていた二つのハンドルネームを合体させました。どちらも思い付きです。

――絵を描き始めたのはいつ頃なのでしょうか？

小学生の頃は、近所の友だちとコママンガを描いて見せ合ったりして遊んだりしていました。
好きなマンガを真似するというよりも、最初から創作志向でした。
学校では、図工の授業で描いた絵がクラスで一位に選ばれたり、そうかと思えばまったくやる気がなくて途中で投げ出したり、差が激しかったです。学校ではマンガは描かなかった、というより描けない雰囲気でしたね。中学に上がってから友だちと美術部に入りました。特に目立った活動はしていませんが顧問の先生はなぜか好きでした。それから３年生になるときに転校しまして、漫画研究部に誘われて入ったのですけど、そのときに初めてケント紙にペンとインクでマンガを描きました。
オリジナルの読み切りＳＦだったんですけど、文化祭で原稿用紙一枚一枚をボードに貼って展示してもらった思い出があります。

――また、絵を描き始めたキッカケなどありましたら教えてください。

はっきり覚えていませんが、おそらく他の多くの人と同様、母親に画用紙とクレヨンを与えられたことがきっかけだったのではないかと。あどけない赤ん坊だった当時の僕は、きっと抽象画を得意としていたことでしょう。

――画材は何を使ってらっしゃいますか？

２ページマンガ・シリーズを描いていたときは、ペン先は、タチカワのＧペンを使っていました。でも今はゼブラの丸ペンを愛用しています。どちらかといえば丸ペンのほうがＧペンよりも使いにくいのですが、それだけに精魂込めてペン入れができるような感じがしてとても気に入っています。でも仕上がりはそんなに違わないと思います。他には、PIGMAのミリペンや筆ペンなども使っています。インクは、MAXONのCOMIC INK、原稿用紙は、ミューズのB4サイズを愛用しています。デジタルでの彩色とハーフトーンは、フォトショップ5.0を使っています。

―― 一矢春吉さんがマンガを描いてる時に、一番気をつけている事がありましたら教えてください。

気をつけている事は、５つあります。ハート、詩心、サービス精神、絵の勢い、絵の実在感。どれも自分にとって忘れがちな事ですので、念を入れるために、自分なりのマンガ制作の心得５箇条としています。それぞれについて説明しますと、「ハート」とは、すなわち真心です。欲心からではなく、真心からアイデアを発想させることが大切だということですね。「詩心」とは、一篇の詩のような作品が描きたいということです。マンガとは、娯楽提供である前に「作品」であるというのが個人的な持論でして、作品であると位置付けるならば、それは詩であって然るべきだということですね。「サービス精神」とは、作者の都合中心にならず、読者優先主義であるべきということです。たとえばこのコマの次はこの絵が見たいと読者の立場からそう思ったなら、作画の立場から面倒だと思ってもそれを描くべきだということですね。「絵の勢い」とは、感覚的な意味で、スピードやリズムを感じさせる絵ということです。つまり、デッサンの狂いを気にするあまりカチコチな印象の絵にならないようにしたい、ということですね。「絵の実在感」とは、三次元の物体を二次元で表現する技術のことで、細かくいえば、線だけで捕らえずに立体物として捕らえるということです。詩心とも共通する要素なのですが、五感、特に材質感、冷たさ・暖かさといった手ざわりを表現するという意味も含まれます。

――イキナリの質問ですいません。
変身キャラのお約束ですが、変身後の衣装のイメージってありましたか？

...一番苦労した点ですね。エロさを全面に出したいというねらいは最初からあったんですが、具体的なイメージが湧かなくて、特撮もの、ゲームイラスト、コスプレ画像、アメコミ、セクシーランジェリー、遊園地のアトラクションの広告などなど、いろいろ参考にしました。どんなジャンルのマンガを描くにしても、僕の場合、いちばん苦労するのはファッションのようです。現代ものの場合にも女性の服装には流行がありますからね。全員が制服を着てくれたら楽なのに（笑）

――完結を迎えた眠り姫ビューティ!!ですが、制作時間などはどれぐらいかかったのでしょうか？

原作者さんと話し合いを始めてから、ネームを書き上げるまでに１～２ヶ月。前半パートの完成に５～６ヶ月。後半パートの完成に２年かかりました。後半パートに時間がかかったのは、時期的にマンガ制作の時間がなかなか取れなかったことと、単なるモチベーションの問題ですね。慣れないアメコミ調でいこうという無謀なねらいがあったことも時間がかかった要因の一つです。萌えブームの過剰さを感じていましたので、あえてそれとは違うやり方でいきたいと。原作者の阿僧祇さんに聞いた話では、自主制作映画の雰囲気でシナリオを書いたそうですけど、それよりもリアル調の絵にするのがいちばんイメージに合ってるんじゃないかと思いました。

フォトショップでハーフトーンをつける前です。

ハーフトーンがつくとこんな感じになります！ちなみに７年間愛用しているPCはiMacだそうですよ。

一矢春吉さん 作品紹介

眠り姫ビューティ!!
石川サトコは40年の冷凍睡眠から蘇った高校生。レトロブームとなった世の中でカルチャーギャップに悩みつつも、本村と同居して高校生活を再開させていた。
かつてのクラスメートで、お互いに好意を持っていた二人は、40才もの年齢差になってしまいながらも微妙な雰囲気になっていく。
しかしＣＳＢの存在を知った超時研はＣＢでサトコを襲撃。サトコはビューティに変身して撃退した。

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眠り姫ビューティ!! 名場面

キャラクター紹介

記憶を取り戻したいって言ったのは私よ！
木村くんのせいじゃない

石川サトコ
18才、高校生。40年間の冷凍睡眠の後遺症でＣＳＢ現象を起こす少女。1990年代風の言葉づかいをする。サトコのＣＳＢ現象により「コールド・スリーピング・ビューティ」と名付けられたスーパーヒロインが実体化する。

悪い夢ね・・・
夢の外へ行きなさい

ビューティ
サトコがレム睡眠に入ると、ＣＳＢ現象によって夢が実体化してスーパー・ヒロイン、コールド・スリーピング・ビューティが現れる。ビューティの敵は幽体離脱した化け物「ＣＢ（コールド・ビースト）」で、これは熟睡させることで本体に戻すことができる。ビューティの戦いは殺すのではなく眠らせることが目的となる。

ぼく医者になるよ！！！そして石川さんの
病気を治す方法を必ず見つけてみせる！！！

木村浩一
58才。サトコの昔のクラスメートで、医者。サトコの病気を治すために人生のほとんどを研究に没頭。ＣＳＢ現象やＣＢ現象について詳しく、サトコを守るために必死になっている。学生時代からサトコに恋心を抱いていたが、年齢に40才の差ができてしまったためそのことをひた隠し、普段は父親のようにふるまっている。

・・・・・（無言！）

教授
悪の組織・超時研（超時空研究所）の首領。ＣＢ現象を利用して世界征服を企む。物語中ではシルエットで登場し、めったに喋らず手振りだけで意思を表現することで、その不気味な存在感が強調される。

・・・お・・・お待ちください！！
やつらの弱点を確認しました！

バルゾイド
超時研の幹部。特撮物の悪役風のコスチュームの男。この種の人物の常として、権威に弱く、弱いものイジメをするいやらしい男のイメージ。

同人まんが道（前編）いかがでしたか？
次回は、一矢春吉さんへのインタビュー（後編）になります。

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