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誰かをモチーフにしたりすることはありますか?「キャラの壁、というかキャラが壁」

掲載日:2008.07.26

「キャラの壁、というかキャラが壁」の巻

空前のマイコンブームの昨今皆様いかがお過ごす?

私はこの空前のインターネットブームに便乗して自分の売名を画策しています。

それがこのページです!

最近の夏っぽい出来事といえば、先日授業参観の全校合唱コーナーで最前列中央に立ったマイサンが自分のマイサンをいじりながら歌っているのを録画したことでしょうか。
後で理由を聞いたところ「張り付いていたから」との返答に「マイサンのマイサン見てマイマイサン直せ」という格言が身に沁みた次第です。

そんなセンターインな感じで選んだ質問はこちら。

【ルカさん】
はじめまして。
こちらで先生への質問を受け付けているということで、ちょっとお邪魔させていただきます。
私は主人公やヒロインを描くときに、誰かをモチーフにして描くことがけっこうあります。
それは芸能人であったり、身近な人物であったり...。
顔を似せるということもありますが、性格的な部分であったりもします。
先生は登場人物を描くとき、誰かをモチーフにしたりすることはありますか?
もしくは、どんな風に登場人物の性格付けなどをしていますか?
教えていただけると幸いです。よろしくお願いします。

一見明快な答えができそうな質問ですが、実はなかなか難しいですよこれは。
完全に個人的な印象で、ちゃんと調べたわけではないのですが、今漫画文化の中心的な消費者層を形成しているのが「『キャラ』好き」な人々なのではないか、と思ってまして、それはおそらく「二次創作ありきで作品の好悪を判断する人々」とかなりかぶっていると思います。
要するにまず好きなキャラクターが存在し、そのキャラクターを「いじる」ことで初めて「面白さ」が発動する仕組み、というか、逆に言うと「いじれるキャラクターが好き」という思考方法から作品を選ぶ、方程式に好きな変数を挿入(?)して答えを楽しむ、というか。

そういう人たちはいかに「好ける」キャラか、が好悪判断の基準であり、下手すれば作品自体は単なるテンプレートに過ぎず、本編が無くても商売になる、といった事態も考えられます。

ですが私はどうもそういう素質が無いらしく、今まで「キャラ」といわれるものに好悪判断の基準を置いたことが無いのです。
というか考え方として「キャラクターは物語の奴隷」くらいに思ってまして、物語の流れの中でちゃんと役に立ってはじめて「キャラ」として存在する、という考え方なのです。

これを無理矢理音楽に例えると「キャラ好き=ライブ派」「物語好き=音源派」といった感じでしょうか。
会場に行って参加して初めて高揚感を得られるライブと、何回も聞いて味わうCD、という違いで、同人誌を買う人というのはライブ音源が好きってことか?とか、まあ当然どっちも無いとイヤという人も多いと思いますが、えー......

あきらかにうまいこと言おうとして例えを失敗したので無視して進めますが、私がキャラクターを考える時は「こういう人を描きたい」という入り口から作るのではなく「こういうお話を語るときに必要な人は?」という入り口から考えることがほとんどです。

拙作『恋の門』は「価値観の違う男女の恋愛」という骨組みがまずあり、「サブカル」と「オタク」という建材を決め、その後で初めてどんな奴にするかを考えたのですが、それはいわば壁の色や屋根の形、くらいの意味合いでしかないのです。
でも、初めてその家を見る人にとっては好悪の判断はその印象で決まってしまうような重大な要素でもあります。
それは楳図かずお先生の新居を見て「縞縞キィィィ!」となるか「素敵オモシレー!」となるかによって生じる差にも似ています。

壁の色にものすごく神経を配り完璧に自分の思い通りにしないと気が済まない、という人はキャラ好き、多少壁の色が好みではなくても家全体の雰囲気や作りを見て楽しむ、というのは物語好き、という感じでしょうか。
なんか今度はうまいこと例えられたような気がするのですがどうでしょうか。

もちろん物語重視でも壁をぞんざいにしたら誰も遊びに来てくれなくなるので、『恋の門』だったら恋愛のイヤな面を描くためには主役が不細工だとイヤ過ぎて話が他の方向に拡散しちゃうから(もちろんそれをあえて狙うという作り方もあるでしょうが)非現実度が高くなってもそれなりに美男美女に設定する、といった作為が必要で、最初現実感を出したいために普通の男女(でも私の絵柄で描けばそれはかなり不細工となるでしょうが)で描こうとしたのを、編集者が「それでは誰も読んでくれない」という意見で現在の感じにしたために、結果的にある一定の方々に読んでいただくことができた、と思っておりますのです。

だから壁を今風にみんなが好きそうなものにするか、それともこだわって目新しいものにするか、必要最低限の機能を満たせば良いとしてこだわらないか、いっそどっかからパクッてきたポスターを貼ってお茶を濁すか、という選択の問題でしか無い、でもその選択によって家に遊びに来てくれるかくれないか、それとも立ち退きを要求されるか、くらいの大きな要因になる、という話で、なんか色々書きなぐって結局「お気に召すまま」みたいな、スタートラインに立ったまま、みたいな話になってしまいました。

というわけでマイマイサンのポジショニングを直しつつ終了!


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羽生生 純(ハニュニュウ ジュン)
漫画家 1970年生まれ 1992年デビュー

代表作
『アワヤケ』 『青 -オールー-』 『恋の門』
『1ページでわかるゲーム業界』 『ワガランナァー』
『サブリーズ』 『強者大劇場』


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