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マンガ全巻専門書店の元祖「漫画全巻ドットコム」というお仕事-その3-「推定完読時間」のために1巻は読むように

掲載日:2009.11.12

それをやらないとつまんないかと思って

マンガ全巻専門書店「漫画全巻ドットコム」安藤社長インタビュー。
最終回となる第3回は、サイトを見て気になっていた"あの数字"から聞いてみました。

【インタビューイ】
株式会社TORICO代表
安藤 拓郎さん

【インタビュアー】
株式会社ファンタジスタ代表
栗原 弘樹

―― サイトを見て気になったんですが、「推定完読時間」というのが表示されているじゃないですか。あれはどうやって決めてるんですか?

あれは、1冊を読む時間をストップウォッチで図って、冊数をかけてます。

―― その作品ごとに読むんですか?

読んでるんですよ。それをやらないとつまんないかと思って。

―― このページ数だとこれくらいの時間って決まっているのかと思っていたんですが、本当に読んでるんですか!

一応、1巻は読むようにしているんですね。

―― そういうところが、アマゾンじゃないところで買う面白さなのかなと思ったんですが、じゃあ1巻だけ読んだという作品が大量にあるんですね。

1巻はかなり読んでます(笑)。

―― ご自身でも結構マンガは買われますか?

買いますね。1巻は特によく買いますね(笑)。
時間を計るためというのもあるんですけど、一通り読んでおきたいというのがあって。

―― 全然知らない本を読むんですか?

昨日も全く読んだことのない本の1巻だけを6冊買って、3冊読みました。
でも、なかなか2巻に進むものがないんですよ。なかなかハードルが高くて(笑)。

―― あとはスタッフと分担してという感じですか?

そうですね。萌え系から、往年の名作とされているものまでかなり買ってます。昨日も『あばしり一家』を読んでみて、なんか、こう...今読むと全然エッチじゃないんですよね(笑)。あれがなぜあんなにエッチと思われていたんだろうって。

―― そうなんですよね。『まいっちんぐマチコ先生』なんて、当時は親がいるところでは読めないなってくらいに感じてたんですけどね。

そう。パンチラが2~3シーンあるくらいなんですよね。
以外に大胆なところは大胆なんですけどね。手がバッ!とちぎられたりとか、バイオレンスシーンはやたらとバイオレンスだったりして。

―― そういうところは今よりも規制が弱いかもしれないですね。

ゆるいですね。言語的にも、その言葉使っていいの?というところもあったりします。

―― ちなみに、今のイチオシ作品ってなんですか?よく聞かれると思うんですけど(笑)。

そうなんですよ。ただ何って応えれば面白いのかなって思うんですけど...。何って応えてます?

―― ボクは、「マンガ読もっ!」をやり始めた頃は、取材なんかで聞かれると『皇国の守護者』を上げてたんですよ。でも、連載途中でぶった切れちゃったので(笑)。

ボクも何を応えたら一番面白いのかというのが...。すごく面白いことを言ってくれるんじゃないかみたいな期待をもたれるんですよね(笑)。
かといって、マニアックすぎても「へぇ」って言われて終わりで。何がいいかっていうのは常々考えているんですよね。
ちょうどいいあたりだなと思ってるのは、『ジョジョの奇妙な冒険』だとみんなも知ってるし、ちょっとマニアックな感じもするし、マンガ好きな感じもするし。

―― そこから広がりがありますよね。何部が好き?みたいな。(ここから約10分『ジョジョ』の話で盛り上がる。)

あとは『黄昏流星群』が好きですね。

―― 渋いですね。

他に類を見ないというか、シルバー世代の恋愛という、そのカテゴリーがすごいなって。
本当にニッチなところを突いていて、さらに面白いという。

―― 悪いおじさんになりますよ、そうすると(笑)。

ちょっと楽しみなんですけどね。20年後もこういう世界があるんだったら、励みになるというか(笑)。

―― 老後まではいかない、いわゆる黄昏世代にちょっと希望を与えるという意味ではすごいマンガですよね。

ああいう作品がもっとあっていいと思うんですけどね。

―― 今、マンガを読む世代の年齢層を考えると、ああいう作品を読んでおかしくない人たちがいっぱいいると思いますよね。

そういう世代の人たちって、昔の作品を読むという片付け方をされていると思うんですよね。白戸三平を読むとか。
そういう人たちが現役の読み方をする作品というのも、無くはないとは思うんですけど、電車なんかで50代のおじさんがサンデーとかマガジンを読んでいると、それって面白いのかなって思うんですよね。完全に世代が隔たっているじゃないですか。
中学生とか高校生が共感しながら野球マンガとか恋愛マンガを読むのはわかるんですけど、おじさん達が読めるマンガが本当にあるんじゃないかって。そんなに面白くないと思うんですよ。中高生の...『Boys Be』みたいな世界が(笑)。
だから、ボクがもう10歳、20歳年をとったときには、『黄昏流星群』的なマンガがきっちりあってほしいなって。

―― 間違いなくありますよ。ボクも絶対60歳になってもマンガ読んでるだろうし。

そうですよね。今後はもっと読むと思いますよ。われわれの世代というのは。

―― ボクはリタイアしたら絶対マンガ読んで暮らしてますね。南の島でマンガを読んでくらしたい(笑)。その頃には「漫画全巻ドットコム」が海外まで届けてくれているかもしれない(笑)。

じゃあ支店を世界各地に(笑)。

チャンスは凄くあると思うんですよね

―― 海外進出って考えてないんですか?

考えてます。毎日注文があるので。海外から。

―― 日本在住じゃなくて、海外在住の方からですか?

半々くらいなんですけど、2日に1度くらいは全部英語のメールが届いて。そうすると送料実費で、カードを切るか、振り込んでもらって。

―― 日本語のコミックを送るわけですよね?

そうです。送料を含めると倍くらいの値段になるんですけど、それでも買われますね。
だからチャンスは凄くあると思うんですよね。

―― ネックは流通ですか?

流通ですね。あとは、思い切りだけかなと思ってるんですけど...。

―― やるならどの国ですか?

フランスじゃないですかね。いろいろと話を聞いていると。
最初は、近場の台湾とか、香港を考えたんですけど、ヨーロッパの方がはるかに注文が多いですし。

―― 高くても買うのはヨーロッパ、特にフランスなんでしょうね。バンドデシネ(主にフランスを中心に発展したマンガ)なんて高いですし。

フランスは凄いらしいですね。本屋にもマンガがすごくいっぱいあるらしいですし。
ボクの知り合いが、電車で隣に座った人がマンガを読んでいたので、ちらっとみたら、『おじゃまんが山田君』だったらしくて。「すげぇ広まってるな」って思ったって(笑)。

―― また、一番日本の茶の間的な作品を(笑)。

それわかるのかなぁって思って(笑)。
宮崎アニメになったじゃないですか。その絡みなのかと思うんですけど。それ読んでもわかるのかなぁって。それが理解されるとなってくると、かなりいけるんじゃないかなと思って。
当然『ONE PICE』とか『20世紀少年』とか『NARUTO』なんかはすでに広がってると思うんですけど、『おじゃまんが山田くん』までいけるとなると、かなり深いなって。
アメリカよりヨーロッパの人の方がこういう感覚がわかるのかなって気がするんですよね。
『NARUTO』みたいなアクションものは、アメリカでもいけると思うんですけど。

―― フランスに、日本のトーハンや日販のような取次ぎはないんですか?

ありましたね。当然、出版社からも卸してもらえるんですけど、そこをとりまとめている取次ぎのような仕組みも合って。多分組むとしたらそういうところかなぁと思うんですけど。

―― まだ具体的なところまでは進んでいないんですか?

台湾と香港は、すでに色んな出版社さんとも会っていて、どこかの段階でいけると思っています。まずはネットで売っていくという形だと思うんですけど。フランスは、逆にいきなり書店を開いてみたらどうかなと思って。

―― リアル書店で?

リアル書店ですね。
広がってるとはいえ、まだまだ思うように買えない人が多いらしくて。あと日本語のコミックを置けるというのもボクらの強みでしょうし、日本語のコミックも、フランス語のコミックも、英語のコミックも、マンガだったらなんでも買えますよという書店を、リアル書店第一号として、フランスで出したらちょっとうけるかなと思って。

―― 面白そうですね。先日、フランスでマンガの描き方を教えている人の記事を読んだんですけど、学生作品を集めて同人誌を作っているらしいんですよね。コミックマーケットのようなイベントもあるみたいなんでよね。アメリカだとコスプレや企業出展が中心みたいですけど、フランスは同人誌を描いて売る人が増えてきているらしく、だんだん日本のように活況を呈してくるのかなって思ったんですが。

フランスのジャパンエキスポなんかはすごいですよ。フランスってあまり娯楽がないらしくて。テレビ局なんかもすごく少ないらしいんですよ。だからああいうイベントがあると、市民の何割かがきちゃうみたいなノリになっているらしくて。

―― 娯楽が少ないというのは意外な感じですね。

意外なんですけど、あまり新しいことを生み出そうとする国民性ではないらしいんですよね。けど、そこに日本のポップカルチャーが入り込んでいて、すごく理解されているらしいんですね。

―― ロンドンに行ったときに、店がすごく早い時間に閉店するのに驚いたんですよね。このあとどうすればいいんだよ?飲み屋しか開いてないじゃん!っていう状態で。そう考えると、日本で言う巣ごもり需要ってかなりあるのかもしれないですね。

そうですね。また、社会保障がしっかりしていて、失業者でも働いている人と同じくらいの収入があるらしいんですよね。だからマンガを買えないっていう人はほとんどいないらしくて。だから買える余裕はあるけれど、娯楽が非常に少ないということで、マンガは凄くチャンスがあるんじゃないかなと思って。
なので、第一号としてフランス進出を進めます、はい。

ミルフィーユみたいに重ねていって

―― あと、倉庫を見せていただきたいんですが、その前に気になっていたことがあるんですが...。コミックってばらばらで入荷するわけですよね。それを全巻セットに揃えているんですか?

そうです。

―― 多い作品でどれくらいのボリュームですか?

来る日は『ONE PIECE』だけで100セット分くらい来ます。

―― 1巻100冊、2巻100冊...という形でくるんですよね?

そうです。バラバラの状態で入荷するんですけど、それを大きい机に(取材当時の最新の)54巻からバーッと一面に並べて、それが済んだら、今度は53巻をミルフィーユみたいに重ねていって...みたいなことをやります。

―― 100セットということは、5400冊...。

それを重ねていって、ワンセット!みたいな感じで。
ボクも手伝うんですけど、一日朝から晩まで『ONE PIECE』をセットにしただけで終わる(笑)。

―― 本屋としての規模は、リアル店舗と比較してもかなり大きいわけですよね。

そうですね。一店舗という単位でいうとかなり大きいですよね。

―― ジュンク堂くらいの大規模な書店でも、一店舗で『ONE PIECE』100セットは置いてないでしょうね。

紀伊國屋書店の新宿店よりも、ボクらのほうがコミックは売ってるかも。

―― その100セットがどれくらいで無くなるんですか?例えば『ONE PIECE』なら。

今だと、一日に10セットくらい注文が来るので、10日くらいで無くなりますね。

―― 10日!そうすると10日後にはまたミルフィーユ作りが(笑)。

そうです。毎月3回くらいはやらないと。

―― その作業は何人くらいでやってるんですか?

当然、他の作品もあるので、だいたい3人くらいで一日で出荷する分の作品をやるという感じです。

―― 倉庫にはセット単位で置かれているんですか?

セット単位で置いてますね。

―― じゃあ入荷したら、まず全巻単位に並べて、それを倉庫に入れておくと。例えば『ONE PIECE』の新巻が発売されたら、そこに1冊ずつ足していくという作業が発生するわけですね。

そうですね。

―― サイトだけを見ていると、そんな感じは全然受けないんですが、実は白鳥のように水面下はすごい作業量なんですね。

そうなんですよ。規模が小さい間は、参入障壁は低いんですけど、この規模でやるとかなり大変ですね。そもそも、それだけのコミックを入荷させてもらえる書店が少ないので。

―― もしかしたら、そこが一番大きい参入障壁かもしれないですね。力技の部分もありますけど、在庫を揃える部分というのは。

そうですね。小さな本屋が、売れるからといって『ONE PIECE』を100セットくださいと言っても難しいですよね。


編集後記

ありそうでなかった全巻販売や、販売キャンペーンなどのアイディアを武器に成長を続ける「漫画全巻ドットコム」をみると、出版不況だと言われていても、マンガ業界にはやれること、やるべきことがまだまだあるはずだと感じさせられました。
近い将来、本格的な海外進出が始まるようですが、国がアニメ、マンガを日本の主幹産業になどと言いながら手をこまねいている間に、「漫画全巻ドットコム」が先頭に立って、日本のマンガを売りまくる日が来るのかもしれません。
その時は是非「マンガナビ」でも追いかけたいと思います。

建物探訪(1)

最後に、楽しみにしていた倉庫の内部にお邪魔しました!
1巻から順に揃えられたマンガが、まさに山となって詰まれていました。
インタビュー中にもありましたが、大変なんでしょうね、並べるの...。
全巻が揃ったマンガの山を見ていると、これを買って帰って、1巻から一気に読みたいなという強い衝動が出てきて、つい「これ下さい!」という言葉が口から出そうになります。
なるほど、この全巻セットの魅力(魔力?)が「漫画全巻ドットコム」急成長の秘密かと気づいた次第です。


全巻マンガの海です。ここは。


どこまで行ってもマンガ!マンガ!マンガ!


「おまけ」同梱忘れたら大変だ!


これが取次から届く1回分、これが毎日...。


これがミルフィーユを作る台か?そうなのか?


これがミルフィーユになる前の『ONE PEACE』の塊だそうです...。

建物探訪(2)


いろいろなマンガのミルフィーユが。


『ONE PEACE』もミルフィーユに...。


『ゴルゴ13』もミルフィーユに...。


『手塚治虫全集』もミルフィーユに...。


『ジョジョ』もミルフィーユに...。


映画化された『カムイ伝』もミルフィーユに...。


ドラマ化された『猿ロック』もミルフィーユに、というか壁に。


夏休みになると結構売れるそうです。


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