原稿料の交渉って？「現金（ゲンナマ）を体に張れ」

「現金（ゲンナマ）を体に張れ」の巻

眠い！眠すぎる！眠すぎ過ぎる！

もうここんところ毎日毎日ぼくらは眠くて眠くてイヤんなっちゃうよ！
なんでこんなに眠いの？
春のせい？
俺のせい？
気のせい？
病気のせい？
I SEY YES？
YOU SEY NO？
なにこの売れたバンドの歌詞をパクった売れないバンドの歌詞みたいな文？

こんなんじゃダメだ！もっと抜本的解決策を模索せねば！
やっぱり昼飯食った後薄暗い喫茶店でクラシックを聴きながら壁に寄りかかっていたら眠くなる原因なんか見つけられっこない！！

よーしこうなったら心の友達をつくってその子とざっくばらんな会話をしながら眠気を吹き飛ばすぞ！

...しまった！人見知りだから話しかけられない！そんな心が生んだ心の友達もやっぱり人見知りだからなんにも話しかけてくれない！

こういう時は気分を変えて外へ飛び出して思いっきり空気を吸い込んで大きな大きな明日をつかもうよ！ワンツーどーん！！

うーんなんてポカポカ陽気！神は俺に立ったまま眠ることをお許しにならしむらせたもうことなかれなのか！
このままじゃ埒があかないから歩きながら対策を寝ろう、いや錬ろう！

あ！公園発見！ここなら気分を変えてケンカをやめて眠気を吹き飛ばすことができるかも知れん！！

きらきら輝く木漏れ日の下...鈴のような笑い声を上げながら遊ぶ子供たち...心地よい風が頬を撫でる...ベンチに座ると足の先や尻からじんわりと伝わってくる暖かさ...瞼を撫でる真綿のような感触...魂が体にしがみつくことを放棄して...真後ろに倒れ込んで...

逆効果ァァァッ！！！！

ものの見事にギリシャ神話の眠りの神ヒュプノスの策略に落ちるところだった！大チンピ！

とその時漂ってくるこの臭い...寝るモードにゆるみきった脳に膝カックンをくらわせるこの実存的な香りは...

隣のベンチの青空生活者のおばさん（推定年齢６０歳）！！

家財道具を納めたレジ袋に頭を預けながらこの青空の下でも用意を欠かさず携えたビニール傘と添い寝するそのナチュラルバックパッカーのおばさんの胸は異常に大きく、よく見ると家財道具の残りがしっかりと両乳の部分に納められてるフロントパッカーのその人から漂ってくる年代ものの臭いで俺の眠気は完全に吹き飛んだ！サンキューフォーユアスメル！神は死んだ！

...でも今度は臭いに負けて文章が書けません...

【まどろみ雪駄】

羽生生純先生はじめまして。
ぶしつけですが、原稿料の交渉はどのようになさっておられますか？
言われるまま。たまにおねだり。
あるいは「○○社ではページ当り□□ほどいただいてるだがね」などと高所からのハッタリのひとつもかましたりなさっておいでなのでしょうか。
先生の経験なども踏まえて、漫画家としてかくあるべき立ち振る舞い方のようなものをお教えいただければ幸いです。

まさにまどろみの中お送りしてるわけですがアー原稿料...実は私今までに原稿料の交渉をしたことがございません！
それはなぜなのか、自分でもあまり考えてなかったのですが今思うときっと「カッコつけ」なのだと思います。

漫画家というのは個人商店みたいなもので自分で作った商品（正確には商品を使う権利）を買ってもらってお金をもらうリアルな商売なのですが、反面、自己の内面をさらけ出し脳内を裏返して人様にみせびらかすというモヤモヤした個人的な行為でもあるので、そこには自尊心や傲慢、虚栄、羞恥心や後悔などものすごく「丸出し」感がでてきます。
そんな中でリアルにもほどがある「お金」の話をすると編集者に「こいつこの程度の作品しか描けねえのにどの面さげて金の話してんの？」とか「作品内ではあんなこと言ってるのにお金には汚いのな...」などと思われはしまいか？と勝手に卑屈になり、一方で「金に無頓着な感じを出すと太っ腹感がでて仕事が来やすくなるかもしれない」なんつう姑息な思惑も働き、結果的に自分から原稿料の話を持ち出すことは無く、相手から提示される金額に「ああいいですよ全く問題ありません」と気取って答えたりしてしまうのです。

もちろんそんな気取りは誰にも何の効果も与えることなく打ち合わせの空気中に紛れて消えてしまい、残されるのは自らを安い原稿料で働く羽目に落とし入れた漫画家の間抜けさ加減のみです。

出版社側も毎号の予算の中から払える原稿料を割り出しなんとか破綻を来さぬようにやりくりしているのでしょうが、実際の懐事情などいち取引先の漫画家が知る由もなく、「仕事させてもらえるだけでありがたく存ずります！」ともみ手で言い値を飲む、というのが私の習性になってしまってます。

でもこれは作家の個性に大きく左右されるもので、私が知ってる作家さんの中には私と正反対にガンガン攻める方もいらっしゃいます。
その方は連載開始時にまず一回目に提示された金額は必ず蹴って上乗せ要求し、連載中も他の作家さんの原稿料と自分のを比べ、自分のキャリアや売れ行きをかんがみてさらに上乗せを要求するのです。

これは一見えらく押し出してる感じがしますが、冷静にみれば全く当たり前の要求をしてるだけで、モジモジ気取ってる私の方があきらかにおかしいのです。

でもそれはひとえにその作家さんの作風や個性、普段の様子からみて「納得できる」というか「違和感が無い」から合ってると思うわけで、私のようなモジモジ気取りがそれをやるとイヤラシモジモジ気取りになるだけです。

なのでみなさんも原稿料の話をするときは身の丈にあった交渉方法を選びましょう。

恋愛漫画を描いてる人は恋の駆け引きをしながら。
格闘技漫画を描いてる人はマウントポジションから一気に連打。
ホラー漫画を描いてる人は自縛霊を同席させて。
萌え漫画を描いてる人は自キャラのかぶりものを自作して。

等々、「この人ならこう言うだろう」という空気を作り上げた上で原稿料の話をすればスムーズに交渉できることでしょう。

...と書いてはみたけれど...

ああ！このままじゃダメだ！というかこんな事書いたら「羽生生は言い値で文句言わない」という情報が広まって原稿料がゴンゴン下がっていってしまう！！

よしっ！おばさんの実存臭をかいでいたら自分のモジモジ気取りが馬鹿らしくなってきた！巨乳に見せたくて胸元に詰め物してるんじゃなくて荷物を無くさないようにするためだけに天然の迷彩汚れが施された黄色いＴシャツの胸をパンパンに膨らませて偽巨乳状態になってても平気なおばさんのようなタフネスを身につけねば！
これからは俺もガンガン上乗せしてく！いやむしろスタートラインを大幅引き上げる！
これから羽生生は原稿料１ページ１００万！！
打ち合わせの時も「初めましてページ１００万の羽生生です」とか「ページ１００万の羽生生が思いますに...」とか「ページ１００万の羽生生ちょっとトイレに行ってきます」といった感じで四季折々にお金の話を織り込んで行く！
やったー月収数千万！！イエーイ！！！！

...そんな目で見つめないで、心の友達...なんか言ってよ...俺も何にも言うこと無いけど...

...ハァ（ため息）...

ようやくプレゼントできましたよ絵馬！

プレゼント当選者に連絡したのに返信がなく、仕方がないので再抽選となった曰く付き絵馬...
既に今年も半年近く経ったのにプレゼントする賞品が絵馬...

でも良いんですよ！
受け取ってくれる人がいれば！
お礼のコメントももらえてるんですよ！

【まどろみ雪駄】

絵馬当選サンキューです。
そういえば「宝くじは買わない」を歌ってた忌野清志郎さんのファンでした。
羽生生純先生の作品の映画化である恋の門に出演されてるの見てうれしかったなぁ。
サマージャンボ買いましょう買いましょう。

当選者は今回の質問者でもある まどろみ雪駄 さん。
サマージャンボを買って、当たって、ウハウハになって、原稿料の心配をしなくてもよくなってください。

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お寄せいただいた質問はマンガナビ編集部が選別したうえで、羽生生先生にお渡しします。

羽生生 純（ハニュニュウ ジュン）
漫画家　１９７０年生まれ　１９９２年デビュー

代表作
『アワヤケ』　『青 －オールー－』　『恋の門』
『１ページでわかるゲーム業界』　『ワガランナァー』
『サブリーズ』　『強者大劇場』

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